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 20歳でデビュー、アイドルのような顔立ちでありながらハードなプレイをこなし、たちまち1990年代後半を象徴する"レジェンドAV女優"になった小室友里さん。現在は「ラブヘルスカウンセラー」という肩書で、性に悩む人たち向けのセミナーや講演会で活躍している。

 AV業界に詳しい安田理央氏によると、現在6千~1万人ほどのAV女優が活動しており、年に2~3千人がデビュー、ほぼ同数の2~3千人が引退しているとみられるという。

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 現役のAV女優たちに対して「お金と自由があるうちに"私、これやりたい"というものに手をつけておいた方がいいと思う」と訴えかける小室さんだが、20年前も今も、「元AV女優」たちの前には、大きな壁が立ちはだかっているのだという。

 19歳の時にAVデビューし、20歳で引退した元AV女優のAさん(23)は、商社の営業職として働いている。「。今でも検索したら出てきちゃうし、仕事関係の人にバレたらかなりやりづらくなると思う。ヤバいなって思う」と話す。

 8日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、小室さん、そして現役AV女優の紗倉まなと一緒に、AV女優の"セカンドキャリア"について考えた。

■「元AV女優には協力できないなと言われた」

 今とは違う雰囲気があったという90年代のAV業界。「私の先輩たちには、AV女優という仕事をやりたくてやってる人はそんなにいなかった。できることだったら"擬似プレイ"で終わらせたい、みたいな。モザイクが大きく荒かったため、それでもバレなかった。ADさんが魚肉ソーセージを一生懸命彫って、そういう形にしていたり(笑)」。

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 スカウトされたことがきかけでAV業界へと足を踏み入れた小室さんには、有名になりたいという思いがあった。「作品の中に、自分ではない自分がいるやっぱり楽しかった。ファンの方との交流も楽しかった」。AV女優という職業にプライドを持つようになっていった。出演していることを両親に打ち明け、夜中に4時間も話し合った。「親は納得しないし、理解もできない。でも私が"やりたいことをやっている"と言い続けていると、最終的には"お前がやりたいんなら何も言わないよ"と」。

 現場が楽しく、辞めたくないと思っていた一方、所属していたプロダクションの社長から「お前、辞めた後のこと考えとけよ」と言われていたことから、2年目にして引退後の仕事=セカンドキャリアの考えるようになったという。そしてデビューからわずか3年半、人気絶頂でAV界を引退した。「私としては頂点にいるときに辞めたかった。"小室友里、落ちたな"と言われたくないと思っていたから」。

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 しかし、転職して思い知らされたのは、「元AV女優」に対する世間の風当たりの強さだった。それは20年近く経った今も変わらないという。

 「引退後も"小室友里"の名前で活動しているので、ビジネス交流会では同世代の企業経営者たちも、"君のやっていることはすごいと思う"と言ってくれる。でも、その後に必ず"だけどね"と言われる。"俺はちょっと協力できないな"と。元AV女優と繋がっているとか、一緒に仕事しているということを周りにどう見られるんだろうと、皆さん気にする。性教育や、性に対する認識が20年前から変わっていない。"AV女優というのは、自分の性を切り売りしてお金にしているんだろう。汚いやつだな"という認識を、誰も正そうとしない」。

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 「AV女優になるということがポピュラーになりつつある。でも作品は一生残り続けていく可能性があるということを重々認識して、なぜこの仕事をしたいのかという問いかけをしてからこの業界に入っていただきたい」と話す小室さんが心がけていることは、常に勉強する、ということ。

 「"偏見を持たないでください"と言えば言うほど偏見を持たれるので、そうならないようなものをこちらから提示しないといけないと思っている。"元AV女優だけど、ちゃんと喋れるんだね"と思ってもらえるようでないと土俵に上がれない」。

■「現役のAV女優は、この時間帯の番組には出られません」

 「SODアワード2018」で最優秀女優賞を含む前人未到の6冠を達成、名実ともに現役AV女優のトップに君臨する紗倉まなも、同じような問題に直面しているという。

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 「AVがやりたい」と、自ら志願してAV女優になった紗倉。「私は1枚目の作品ですぐ身バレしてしまった。今は情報の拡散力もあり、無かったことにするのは難しい時代なので、覚悟した上で、生涯ずっと向き合っていこうという気持ちは固めている」とした上で、AV女優をめぐる昨今の状況を危惧する。

 「"現役のAV女優だから、この時間帯の番組には絶対出られません"、"今も日々セックスをしている人だからダメです"と言われる。目標があってAV女優の事務所に応募してくる人もすごく増えているし、休み中に数本だけ出演して、それ以降は一切AV業界には足を踏み入れない女子大生もいる。理由は様々だし、色んな生き方の中にたまたまAV女優という仕事あっただけなのに、その通過点がダメだと言われるのはなぜなんだろうと不思議に思う。AVを見ていない人が言うなら分かるでも、批判している人だって大抵AVを見ている。それなのに、AV女優だからダメというのは無くない?と思う」。

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 小室さんの問題意識について紗倉は「異職種の方々とお仕事する中で、私も"性に奔放な子なんだね"というようなステレオタイプを持たれていると感じる。料理人の方だって仕事ではいつもご飯を作っているけど、家でもご飯作りたいってわけではなかったりすると思う。性教育が行き届いていないのもその通りだと思う。AVでやっている内容が全て正しいと思って、それを見よう見まねでして実際に女の子が嫌な思いをしている」。

■背景にある「男性中心社会の論理」

 こうした状況について、大正大学の田中俊之准教授(社会学)は「男性中心社会の論理がある」と指摘する。

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 「男性は性に奔放であってもいいが女性は貞淑でないといけない、言い換えれば処女が尊ばれるというダブルスタンダードがある。社会学的には"性の二重基準"というが、極端な表現をすれば、いわば女性が"主婦と娼婦"の二種類に分けられているということ。彼女や奥さんがいる男性にとって浮気相手は"娼婦"的な価値はあるが、"主婦"の位置にする意味はない。自分の彼女や妻に対しては浮気なんてもってのほかだと思う一方、自分は遊びたい。だから、この"主婦"の位置から離れて"娼婦"に近づけば近づくほど金銭的なものが付いてくる構造になっている。AV女優も、身元がバレるというリスクが非常に大きいことも含め、大きな利益が生まれる構造になっている」。

 その上で、「ただ、この構造がすぐさま解消するというのはかなり難しい芸能人の不倫報道を見ればわかるとおり、女性の場合と男性の場合とでは、社会的な制裁や罰に明らかに違いがある。それでも女性が男性と同程度の力を持つ時代に、身勝手な男性の論理で社会が回っていくことは許されないし、偏見があったとしてもそれを口に出すことは絶対に許されない。」とも話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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