「人と話すことって、就活だけでなく、どこでも使うスキル。それが欠けているとなると、社会生活を送る上で苦労する場面が多い」。
言葉に詰まりながらそう話すのは、都内の大学に通う本多駿さん(21)。円滑に言葉を発することができない「吃音症」、いわゆる「どもり」を抱えながら就職活動を行っている。吃音者が抱える悩みを知ってほしいと、AbemaTV『AbemaPrime』の取材に応じてくれた。
これまで30社以上の面接を受けたが、うまく話せないことも多く、内定はまだゼロ。希望している営業職には向かないと判断され、面接を受けさせてもらえないなど、悔しい思いをしてきたこと。
「本当は話すのが好きなんです。不動産業界に興味があって、人のことを思って働ける営業をしてみたかったが、やっぱり吃音に対して悪いイメージを持つ人が多く、面接官に笑われてしまうこともあった。何しに来たの?っていう感じで」。
企業の担当者などからかかってくる電話を受けるのにも緊張がつきまとう。「何か聞かれた時にすぐに答えなければならないというプレッシャーを感じて、どもりやすくなる」。少しでも不安を解消し、症状を和らげることができればと、毎日精神安定剤を飲んでいる。
■成人の約100人に1人の割合、自分で気がついていない人も
吃音が発症する原因は、脳神経の問題など諸説あるとされているが、実態は分かっていないため治療法はまだ確立されていない。
NPO法人どーもわーくの言語聴覚士・飯村大智氏によると、吃音症は主に幼児期に発症し、成人の約100人に1人の割合でみられるという。幼少期には20人に1人の割合で発症するが、約7割が2、3年で自然に症状が消えるという。また、吃音症を抱えていることに自分では気がついていない人もいるという。
自身も幼少期に吃音を抱え、現在は言語聴覚士として当事者を支援する矢田康人氏は、「ストレスのせいだとか、両親の育て方のせいだと言われた時代もあったが、そうではないことがわかっている。やはり脳の問題が関係していると分かってきている。症状をゼロにすることはできないが、訓練によってある程度コントロールできる」と説明する。
■周囲にからかわれ、笑われた小学生時代
本多さんに吃音の症状が出始めたのは、小学校2年生の頃だった。症状は現在よりも重く、ひどい時には言葉が30秒くらい出ない時もあった。「音読する授業のときにどもってしまい、全員の前で泣いてしまった。そこから噂が広まってしまった」。
休み時間には話し方を真似され、心に深い傷を負った。吃音者の中には、こうした経験から人との関わりを避けるようになってしまう人も少なくないという。
うまく話せないかもしれないという思いから人に声をかけられず、電車で席を譲るときはジェスチャーを交えて思いを伝えるようにしているという本多さん。また、どもってしまう時には自然に顔が下を向いてしまうので、車の運転の時はしゃべらないようにしているという。
好きな女性の前ではなおさら緊張するようだ。「自分から話しに行ったり、デートに誘ったりするのがちょっと難しい。多分シャイなところもあるからだと思うけど、その辺も変えていないかないといけないと思っている。でも難しい」。
■「見た目で判断してほしくない」「まずは知ってほしい」
矢田氏によると、吃音者の"ありがち体験"には「環境が変わり、自己紹介の多い4月が嫌い」「美容師との雑談が苦手」「落ち着いてしゃべれば症状が出ないと思われがち」といったものがあるという。その上で、吃音者支援には、「症状に応じたサポート」「吃音に対する認知」「合理的配慮・協力」といったものがあることを紹介、「まずは知っていただけるというのが支援につながると思う」と指摘する。
本多さんも「押し付けるわけではないが、知ってほしいというか、見た目で判断してほしくないというのが一番大きい。国としても、吃音を受け入れる体制を整えるよう考えてもらいたいと思う」と話す。
最後に本多さんは「吐きそうですね(笑)。しんどかったです。でも吃音者として発言したかったというのが大きいので、ありがとうございました」と生出演の感想を語り、コメント欄にに寄せられた「その勇気が社会を変える」「出演しているだけですごい」といった声援に「ありがたいです」と笑顔を見せていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)