のっけから棋界有数のエンターテイナーの登場である。「ハッシー」こと橋本崇載八段(35)。6月17日から始まる「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」において、ファンにとって、今回参戦する棋士14人の中で最も意外で、最もワクワクするセレクトだったのではないだろうか。予選Aブロックで藤井聡太七段(15)、三枚堂達也六段(24)、近藤誠也五段(21)の若手3人衆と激突する。
将棋ファンになりたてで「橋本さんについて知りたい!」という人がいるならば、知っておかなくてはならない予備知識はたくさんある。ありすぎるほどある。以下、基本中の基本だけ、おさらいしてみよう。
<1>ファッション
大半の棋士はシンプルな装いを好むが、2004年度のNHK杯戦で金髪に紫シャツ姿で登場して視聴者のド肝を抜いた。ルイ・ヴィトンのアイテムなども好む。2012年度A級順位戦最終局の朝、真冬にもかかわらずサングラス姿で将棋会館に現れた様子が放送され、話題になったことも。ヘアスタイルも目まぐるしく変わり、近年は和服で指すケースも多い。
<2>ファンサービス
伝説となっているのは、2012年度NHK杯・羽生善治NHK杯(当時)戦で披露した対局前インタビューでのパフォーマンスだ。「羽生さん? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど、オイラ負けないよ」。同年度の佐藤紳哉六段が豊島将之七段(いずれも当時)戦で披露した受け答えを再現したものだった。センスもさることながら、ファンが動画で検証すると、言い回しやスピードなどがコンマ何秒レベルでピッタリ一致しており、棋士の探求心の深さを証明している?と話題になった。
<3>実力
2001年度に弱冠18歳で四段昇段。以降、タイトル挑戦や棋戦優勝には至っていないものの、安定した活躍を続けている。2012年度には順位戦A級に昇級。1期で陥落してしまったが「鬼の棲家」と称されるB級1組で現在も奮闘している。昨期は最終局で勝てばA級復帰というところまで星を伸ばした。14日に開幕する今期順位戦でも昇級争いに絡むことが期待される。
<4>棋風
居飛車党ながら、振り飛車も指しこなす重厚な受けの棋風。攻め将棋とは異なり、読み抜けがあると一気に負け筋に入ってしまう受けのスタイルは早指し棋戦との相性が良くないと「千駄ヶ谷の受け師」こと木村一基九段も過去に言及したことがあるが、橋本八段は早指し棋戦でも活躍している。2013年度の銀河戦で準優勝、2014、206年度のNHK杯でベスト4入りしている。
現代将棋は攻め将棋全盛の世。少数派となった受け将棋の棋士が今回の超早指し戦でどのような指し回しを披露してくれるか。棋士の工夫、策略、妙技を堪能しよう。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するA組からC組まで各4人が参加し、各組2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
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