常に倒し、倒されのアグレッシブファイトで人気のK-1ファイター・木村“フィリップ”ミノルと、格闘技ファンの芸人・平子祐希の対談が実現した。6月17日のK-1にも参戦する木村もお笑い好きで、異業種トークも最初から噛み合う展開となった。お互いが見た格闘技、お笑いの魅力とは?
(構成・橋本宗洋)
■芸人も力いっぱいウケにいった結果、ズルっとスベった時の顔は人間味があって胸に刺さる(平子)
――今回は6.17K-1に向けて平子さんと木村選手との対談をお願いしました。平子さん、木村選手の試合を最初に見たのはいつ頃でしたか?
平子 K-1だったんですけど、誰との試合だったかなぁ。山崎(秀晃)戦はKrushですもんね。最初に見てから、過去の試合もずっと遡って見たんで記憶が前後してますね(笑)。
木村 あぁ、嬉しいですね。
平子 やっぱ見ちゃうんですよ。繰り返し見ちゃう面白さがあって。勝った試合だけじゃなくて負けた試合でも爽快感があるんですよね。攻めの姿勢が見られるのがよくて。K-1好きの芸人とよく話すんですけど「あれは倒しにいってるから倒されるんだよね」って。これは芸人の姿勢にも通じるところがあって。前に出ないと、ウケるどころか滑ることすらできないって。それを胸に刻みながら見てる芸人が多いんですよ。
木村 すげえ嬉しいっすねぇ。
平子 そういう部分って、特に自分にはないものなので(笑)。入場から試合後のパフォーマンスも含めて、勉強というより憧れてますよ。
木村 ありがとうございます。確かに俺、入場から「今日はウケるぞ!」って言ってるようなもんですからね(笑)。もちろん見られることは意識してるんですけど、俺の場合は勝ち負けにこだわった結果なんですよ。
――勝ち負けにこだわってるから面白いと。「負けてもいいから打ち合う」じゃないわけですね。
木村 そういう試合のほうが「深い」ですよね。最初から「勝っても負けても派手にやればいい」だと浅いものになっちゃうっていうか。ファイトスタイル的に、結果として負けることも多かったですけど。でも見る人に響くのは勝ちにいった結果なのかなって。
平子 芸人もね、力いっぱいウケにいった結果、ズルっとスベった時の顔っていうのは人間味があって胸に刺さるんですよ。
木村 リング上って性格が出ると思ってて、普段の人付き合いでしたたかな人はそれが出るし、馬鹿正直な奴はそれが出ると思いますし。隠しても隠し切れないんですよね。だから僕は最初から隠す気ないです。
平子 木村選手は言いたいことを言うタイプだから毒舌、ビッグマウス、悪童っていうイメージもあると思うんですけど、実は体育会系のしっかりした人間性もあって、そこに惹かれる部分もあるんですよね。これ言うと営業妨害かもしれないけど。
■準備段階と表に出す部分のギャップが格闘技とお笑いで共通してるのかな(木村)
――芸人さんとかラッパーさんとか、他のジャンルの人にも好かれるのはそういう部分なんですかね。
木村 勝負してる人たちが評価してくれてるっていうことなのかなと思って、本当に嬉しいんですよ。僕には格闘技っていう夢があったんですけど、それを支えてくれてたのがお笑いとヒップホップなので。憧れてる職業ですね。
平子 芸人ならなれますよ(笑)。心は折れるけど体の痛みはないから。
木村 心が折れるのが一番しんどいですけど(笑)。
――もしかしたらラッパーか芸人を目指してたかもしれない?
木村 あったかもしれないです。基本、好きなのは格闘技、お笑い、ヒップホップなので。格闘技は地元にジムがあったから早めに行動に移せたんですけど、地元にお笑いの養成所があったらそっちに行ってたかもしれないですよ。でも、そっちに行ってたらもうつぶれてたかな(笑)。
平子 売れてそうだけどなぁ。しかし本当にお笑い好きなんですね。
木村 アルコ&ピースさんは受精のコント好きです(笑)。あれヤバいっすね。
平子 めちゃくちゃ怒られたヤツだ(笑)。ヒップホップもそうですけど、木村選手のパフォーマンスを支える要素にお笑いが多少、ニュアンスとして入ってるんですね。お客さんをブチ上げてブチ上げて、相手を倒すっていう。ショーマンシップですよね。
木村 準備段階と表に出す部分のギャップっていうのも格闘技とお笑いで共通してるのかなって。芸人さんも華やかですけど、普段は物静かな人が多いですよね。
平子 なんなら暗いですよ(笑)。
木村 ヒップホップの人たちも、楽曲を製作してる段階では凄く繊細だし、格闘家も練習は華やかさなんてないですからね。そのギャップが好きなんですよ。僕はそこに魅力を感じますね。