持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の予選Aブロック、藤井聡太七段(15)と近藤誠也五段(21)の三番勝負が6月17日に放送され、藤井七段が1局目を95手、2局目を122手と2勝0敗のストレートで制し、1位決定戦に進出した。幼少期から将棋を指し続けてきたプロ棋士でも未体験となる超早指しの中、藤井七段は攻守の緩急をつける上手さと、接戦をものにする指運も見せ、若手実力者の1人を一気に倒した。
長時間の対局にも匹敵する将棋を、ものの数十分の中で凝縮して見せた。1局目、2人が選んだ戦型は角換わり。藤井七段がデビュー当時から得意にしていると言われているものだ。先手番の藤井七段が攻め、近藤五段が受ける展開。解説の斎藤慎太郎七段が「藤井七段が圧巻の指し回しでした。序盤・中盤・終盤と安定していました」と、超速で進む将棋の中でも、その完成度の高さに注目した。
完勝の1局目から、2局目は近藤五段優勢のまま最終盤へ。通常の対局なら1手指すだけで数十分はかかりそうな大事な局面を、わずか数秒で決断していく。この様子に斎藤七段も「こんな熱い戦いは普段なかなか見られない。私が指していたらパニックになって、時間が切れて(負けて)しまうかもしれない、そういう緊張感でした」と、そのスピードと熱量に興奮気味に話した。
一瞬、近藤五段の勝ちもあったような激しい展開で、勝利の光は藤井七段の指を照らした。まさに紙一重。これには対局後、藤井七段本人も「近藤五段の鋭い踏み込みで、こちらがかなり苦しくなってしまったんですけど、際どい終盤の中でなんとか勝ちを掴むことができてよかったと思います」とホッとした表情を浮かべた。
これで藤井七段は1位決定戦に進出。勝てば1位で決勝トーナメントへの進出が決まる。「苦しい将棋でしたけど、なんとか勝つことができて、ホッとしています。次も落ち着いて指すことができれば、という風に思っています」。最近では“AI超え”の手を指して話題にもなった天才棋士が、究極の早指し戦で時間に追い詰められた時こそ生まれるような、神の一手をまた生み出すか。
敗れた近藤五段のコメント 勝つチャンス十分だったと思うので、逃しちゃいましたね。悔しいです。時間を残そうという意識がありすぎたというか、ただ、少しずつコツは掴んできたような気がします。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
(C)AbemaTV