6月16日に、1人の男性アナウンサーの退社が報じられた。「ABC平岩アナが退社 今後はeスポーツ実況に転身」。人気の女性アナが結婚して退社する、というニュースがネット上で広まることはこれまでも多かったが、働き盛りの男性アナが、大手の朝日放送(ABC)を辞めてまで、eスポーツの世界に飛び込んだことが大きな反響を呼んだ。「おかげさまで、それ以来メールが絶えず届く状況です」と笑顔で話す平岩康佑アナウンサー(30)が一大決心をした理由は「自分抜きで日本のeスポーツが盛り上がるのが許せなかった」からだった。

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 テレビ業界の中でも待遇がいいことで知られるABCを退社して単身、eスポーツ界で勝負をすることを決めた。もともと「海外のゲーム、『洋ゲー』が好きでした」と語るが、eスポーツと本格的に出会ったのは、つい昨年の話だ。

平岩 「2017年の頭ぐらいですかね。なぜ会社を辞めたのかという問いに対しての正確な答えとしては、アナウンサーをやっているのに、自分抜きで日本のeスポーツが盛り上がるのが許せなかったというか、そこにどうしても当事者として関わっていないと必ず後悔すると思ったからです」

 数年前から盛り上がりの兆しを見せつつ、なかなか一気に突き抜けなかったeスポーツが、ついに日本でもブレイクを感じさせるまでになった。その様子に、目の前で起きた事象を最大限に伝えるアナウンサーとしての責務を、果たさずにはいられなかった。

 「eスポーツを実況する」という未開拓のエリアだからこそ、さらに気持ちが高ぶる。「去年、実況をさせていただく機会があって。それがもう頭の中から離れなくなってしまったんですよね。すごく楽しかったし、今までにない感覚と経験でした」と、楽しそうに思い出した。日本におけるeスポーツのイベントは年々規模が拡大しているが、その様子を伝える実況者は、プロゲーマーやYouTubeやニコニコ生放送で伝える配信者が兼ねてきた。「みなさん確かにゲームについてはとても詳しいのですが、やはりしゃべるプロではないので。これからeスポーツが盛り上げていく上で大事になるライトユーザーの方にも見てもらえるような、一番いい状態で番組を見てほしいんです」と、プロの実況者として伝えたいことは、はっきりとしている。

 実況のノウハウは、7年間勤めたABCのスポーツ実況でしっかりと培った。

平岩 「実況とは何か、というスキームはこの3年間くらいかけて、言語化できました。海外ではメジャーリーグやアメフトの試合を実況する人が、eスポーツでも実況していたりするので、そういうものは参考にしていますが、日本のeスポーツではほとんど前例がない。基本的には、これまでやってきたスポーツ実況に、ゲームを当てはめるという感じになります。スポーツアナウンサーは、まず野球の実況から入るんですが、そこから他のスポーツを担当するようになります。コンテンツが変わっても、ベースになるのは一緒だということはわかっています」。

 どう話せば、より視聴者に伝わるか。それはプロ野球であっても、ゲームであっても変わらないという。

 すぐにでもやりたいのは、ABCの先輩たちから教えられた、選手1人1人のドラマを伝えることだ。

平岩 「朝日放送が特に大事にしていた点です。たとえば高校野球なら、0対9で負けていて絶対勝てないような場面に、今まで1回も出場していなかったこの夏最後の3年生が出てきたとします。デッドボールを受けても、満塁ホームランを打ったみたいに喜んでガッツポーズしながら一塁に行く様子を、ただ『デッドボールで出塁です』というのは、絶対に許されませんでした」。

 試合に出場している選手には、誰しも背景がある。大会の頂を目指す者もいれば、出場するだけでも血の滲む努力をした者もいる。技術や才能はあっても、環境に恵まれずに苦労した者もいるだろう。そういうものをどれだけ伝えられるかで、会場の観客や視聴者たちは選手に感情移入し、より大きな声で応援するようになるという。

 海外では多額の賞金が得られる大会がいくつもあるが、日本でも「Shadowverse World Grand Prix 2018」の優勝賞金が、1億円に到達した。また複数のプロリーグも誕生し、ここ数年と比較しても一気に力強さを増した。また8月にインドネシア・ジャカルタで開催されるアジア競技大会でeスポーツが公開競技になったことも拍車をかけた。

平岩 「将来の夢ですか。分かりやすくいえば、eスポーツが今ちょうどやっているサッカーのワールドカップみたいになってほしいですね。そこに日本代表選手が出て行って、日本中が応援するような。ゲームにはそんなポテンシャルがあると思っています。そういう大きなイベントで、メインで実況できるというのが個人的な夢です。観客の方が、帰る時には声をからしているような、そんなイベントにしたいです」

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◆平岩康佑(ひらいわ・こうすけ) 1987年9月2日、東京都品川区出身。法政大学卒業後、2011年に朝日放送にアナウンサーとして入社。翌2012年からスポーツ中継を担当し始め、プロ野球、高校野球、サッカー、アメフトなどの実況を務めた。2017年からeスポーツ実況も担当するようになり、2018年から個人のTwiiterをスタート。4月末を持って番組を降板すると、自身のマネジメントやeスポーツキャスターの育成などを目的とした「株式会社ODESSEY」を設立。6月15日付で朝日放送を退社し、本格的にeスポーツキャスターへと転身した。

(C)AbemaTV

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出演者は、【実況・解説】友田 一貴・kuroebiです。
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