持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の予選Bブロックの1位決定戦(三番勝負)が7月1日に放送され、増田康宏六段(20)が大橋貴洸四段(25)を2勝0敗で下し、1位通過を決めた。1回戦で佐々木大地四段(23)と対戦し、徐々に超速将棋の感覚を掴んだ「東の天才」が、デビュー以来高い勝率をキープする大橋四段相手に、一気に勝ちきった。
1局20分ほどの濃縮された将棋が楽しくなって仕方がない。2連勝し1位通過を決めた増田六段は「楽しいですね、やっぱり。慣れてくるとすごく楽しかったです」と終始にこやかだった。1回戦の佐々木四段戦の1局目を落としたものの、そこから一気の4連勝でBブロック1位通過。確実にコツを掴んだ快進撃だ。
1局目はお互い、持ち時間が10秒を切るまさに超速将棋の最終盤となった。チェスクロックの音が秒を刻む中、両者とも最善手を続ける大激戦。解説の深浦康市九段も「これはすごい将棋。最後までどっちが勝つかまったく分からなかった」と目を丸くした。将来を期待される2人の棋士が、若き才能をフル活用した秒読み将棋。最後は増田六段が128手で勝利した。
続く2局目は、増田六段の落ち着きぶりが光った。大橋四段が振り飛車を採用し自ら「ちょっと行きすぎ」というほどかなり積極的に攻め立てたが、増田六段はまるで慌てる素振りなし。完全に独特なルールを自分の物にし、的確な時間配分の中で持ち時間5分とは思えない落ち着きを見せた。
これでAブロックの藤井七段、橋本崇載八段に続き、決勝トーナメント進出が決定。将棋界の第一人者、羽生善治竜王と対戦する可能性もある。「羽生先生とか、藤井君とか、強敵なんで本当は当たりたくないんですが、かなり勉強になるので戦ってみたいです」。当たりたくないという言葉とは裏腹に、その目は対戦を望みわくわくしていた。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
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