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 先月18日に発生した、最大震度6弱を記録した大阪北部地震。当日の朝、東京MXのレギュラー番組の司会を担当していたジャーナリストの堀潤氏は放送終了後に大阪へ飛び、午後には枚方、門真、高槻を取材した。

 26日に政府の地震調査委員会が発表した地震予測では、首都圏でも30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率が高いことが報じられている。数々の災害の現場や復興状況を取材してきた堀潤氏に、改めて災害の心構えを聞いた。

■やっぱり平時の備えを

ーーAbemaTV『AbemaPrime』でも繰り返し呼びかけましたが、通信キャリアなどが無料で公衆無線LANを提供する「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)の効果はいかがだったのでしょうか。


堀:当然、発生直後は電話回線が繋がりにくくなりますから、学校関係者、医療関係者の方々が連絡を取り合う時にはLINEなどのSNSを使うのがいいよね、という話をしていました。とはいえ課題はスマホ持っていない、LINEをやっていない人たちへのアプローチですよね。

 そして熊本地震の時と同様、今回も「00000JAPAN」が開放されましたが、実際には知らなかった方も多いようで、さらなる周知徹底が必要だと思いました。すごく便利な一方、みんな一斉に使い出すので繋がりにくい、遅いと感じた人もいたようです。

 以前、自治体や通信キャリアの方々にお話を聞いた所、ジレンマもあるようです。利便性あるけれども、勧めれば勧めるほど重たくなって使いにくくなり、不満に変わってしまうと。今後、どうするかは課題ですね。

 だから何が大事かというと、やっぱり平時なんです。なかなか皆さん見たことがない「ハザードマップ」が大事になってきますよ。

 地震の発生直後は連絡がつかずに不安な気持ちになるとは思いますが、少し待てば必ず復旧します。そこで"家族との連絡はつかない"ということを前提に、避難所になる場所など、どこに行けば落ち合えるかのプランを考える。その時には、道路が陥没した、橋が落ちた、火災が発生した、といったことも想定して、"じゃあ自分は職場の近くのここに行く"、などの別プランも考えておく。そうすれば、"きっとあそこにいるから大丈夫だ"という安心感も出てくる。

 それから、"一週間は自力で生き延びるんだ"という覚悟が必要です。

 よく炊き出しや自衛隊の給水車が来たというニュースを見ると思いますが、あれはそういうことをやってる 場所にメディアが行っているから。みなさんが避難した場所にもすぐに来るとは限らないのでので、まずは自分で食料や水をどうするかを考えておかないといけません。

 「指定避難所」と「自主避難所」の違いを知っていますか?

 「隣の小学校では自衛隊の炊き出しがあったり、支援物資が届いていたりするのに、うちの小学校にはない」。なぜならその小学校は「自主避難所」だからです。東日本大震災のときの教訓を活かすため、避難所は長期滞在を前提に、調理器具を揃えていたり、大きな車両が入れる周辺道路があったりなど、体育館の条件を定めて「指定避難所」にし、災害時はそこに物資を投下することにしています。このことがきちんと周知されていないばかりに、熊本地震のときには自主避難所に駆け込んで、「ここにはオムツはありません」と言われてしまったお母さんがいました。

 また、「水」と聞くと飲水を思い浮かべがちですが、生活用水の需要が高まります。トイレが流せない。顔や手を洗えない。これらは日常のストレスの原因になります。だから習慣的に浴槽に水を貯めておくことも必要でしょう。簡易トイレを持っておくのもいいかもしれません。

 あとは簡易テントもおすすめですよ。

 首都圏のような都市の場合、避難所に入れると思わないほうがいい。熊本地震のことを思い出してください。余震が続くから家にいたくない。でも避難所はいっぱい。小さい子どもがいるから、他の人に気を遣ってしまう。そこで余震が続く中、多くの人がエコノミー症候群の可能性のある車中泊を強いられました。そんな時、テントは有用です。世帯の人数にもよりますが、安いものもあります。

■首都直下地震で、深刻な食糧不足や避難所不足の可能性も

ーー熊本地震の記憶も新しく、東日本大震災では東京の人たちも帰宅難民になりましたが、どうしても忘れてしまいがちですね。首都直下地震が来たらと想像すると…。


:そうなんですよね。大規模災害の場合、幹線道路は通行止めになり、東京に緊急車両などが入ってくるための交通規制が行われるのはご存知ですか。つまり、東京から自家用車で出ることができなくなります。警視庁のホームページなどで、住んでいるエリア近くの道路がどうなるか、確認しておくのも良いでしょう。

 驚かれる人もいると思いますが、関東の場合は富士山噴火の可能性もありあす。風に乗って飛んできた降灰の影響は非常に深刻だと言われています。雪と違って解けませんから、長期に渡って復旧を妨げる要因になります。航空機のエンジンや鉄道、高速道路などの交通インフラがダウンしてしまえば、都内に食料が入ってこない可能性もあります。灰が舞うことでの健康被害も懸念されます。

 東日本大震災の時を思い出してください、私たちはコンビニ・スーパーから品物が消えた、不安な一週間を経験しています。あれよりももっと深刻な事態になる可能性があるのです。

 もちろん国や自治体もいろいろな対策をしていますし、通信環境の整備を進めていることも素晴らしいと思います。その中においては、大阪の吉村洋文市長が間違って学校の休校情報を発信し、混乱させてしまったということもありました。でも、やらないよりはマシだったと思いますし、行政を批判するのは簡単なことです。それよりもまずは一人一人が原点に立ち返って、自分ひとりで、あるいは家族で、発生直後にどうやって生き抜くかの再確認をしてほしい。行政が何をしてくれるかはその後です。

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■プロフィール

1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜レギュラー)などに出演中。


▶堀氏出演の『AbemaPrime』は水曜夜9時から生放送

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