陸上・十種競技の元日本王者にして“百獣の王”のタレント・武井壮は少年時代、真剣に相撲の道を目指そうと考えたことがある。相撲好きを指す“好角家”というよりも、今なお力士となることに憧れを持っているレベルだ。陸上選手として日本の頂点に立ったこともある武井は、AbemaTV大相撲中継時にインタビューに答えると「朝から1日、現場で取組を見てほしい」と、生で見ることの重要性を説いた。
幕内力士の平均体重は163キロを超えると言われている。幕内通算40回の優勝を誇る横綱・白鵬であっても155キロと、平均以下だ。そんな大きな力士同士が、全力でぶつかり、寄り、押し、投げる。その迫力を実際に肌で感じることで、ようやくテレビで見ている「相撲」というものの凄みが理解できると武井は言う。「力士の実際の大きさや、その大きさで彼らが繰り出す動きとかは、やっぱり目の前で見ないと伝わりきらないと思いますよ。僕もテレビの企画で白鵬関と立ち合ってみて初めて、その山の高さが思っていた10倍ぐらい高いと気付きましたから」。日常では見られないサイズ感、聞きなれない肉体同士の衝撃音。それを一度味わうことで、テレビ観戦していてもその時の興奮が呼び覚まされるということだ。
一般的に注目を集めるのは、横綱や大関といった番付上位の幕内力士が登場する中入り後だが、武井のおすすめは「番付の低いところから見ること」だ。番付が最も低い序ノ口の取組は、結びの一番が終わる午後6時ごろから9時間30分前、午前8時30分から始まる。この時間からでも高校相撲部出身など、堂々たる体格の力士もいるが、まだまだ体ができていない力士も多い。また頭はちょんまげ、締め込みも稽古まわし。最上位ランクの幕内とは、全てが違う。「朝から見て、徐々にレベルが上がっていって、最後の方になると本当に美しい、そして磨き上げられた技術と体力の頂点のものがある。本当にドラマみたいですよ」と、熱っぽく語った。
朝から土俵に上がる者、昼過ぎに上がる者、夕方から上がる者。そこに相撲界のヒエラルキーが見える。「最後に横綱同士の戦いがある。そういったものは一連のドラマのように楽しめると思うんです」。各力士が所属する部屋でも、朝稽古の順番は番付の低いものから行う。ドラマや映画で重要人物が後半の見せ場で登場するように、相撲の世界も遅い時間に出ることが一流を示すことになる。「本物をまず見ていただいて、それで分かったら、次は推し力士を作ってもらえれば。かっこいいでも、かわいいでも、技が豪快でも何でもいい。テレビで見てでも1年間全場所を追いかけて、自分の応援で1勝でもその力士に多く勝たせられるようなサポートを一生懸命にやってみたら、すごく楽しんでいただけると思いますよ」と、ファンとしての楽しみ方も付け加えた。丸一日休みが取れたなら、朝から相撲に浸ってみる。そんな休日も楽しそうだ。
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