39歳の現役最年長関取が数々の試練を乗り越え、また一つ大きな“勲章”を手にした。十二日目の十両の土俵で安美錦が希善龍を肩透かしで下し、通算勝ち星で昭和の大横綱大鵬を抜く、史上単独8位の873勝とした。
今場所は序盤から快調に白星を重ねていき、8日目に6勝目を挙げて大鵬の記録と並ぶと「長く続けて並べるのは光栄なこと。不思議な気持ち」とうれしさと恐縮する気持ちが交錯する心境を口にした。しかし、その後は3連敗と足踏み。4日ぶりの白星を挙げて“大鵬超え”を果たしたこの日は「そんなことを考える余裕はないよ。連敗を止めたかった」と表情は引き締まったままだった。
2016年夏場所二日目の栃ノ心戦で左アキレス腱を断裂する重傷を負い、翌日から休場。翌名古屋場所も全休し、同年秋場所は12年ぶりに十両に陥落。明らかに患部を庇うような精彩を欠いた相撲が続き、十両に低迷していたが、持ち前の相撲のうまさとセンスに加え、懸命なリハビリにも励み、現役生活最大の危機を脱すると2場所連続2ケタ白星で2017年九州場所、昭和以降で史上最年長となる39歳0カ月で幕内に昇進した。
今場所は十両四枚目で現在、7勝5敗と勝ち越しまであと一番。再入幕も十分狙える状況に「欲はある。そこを目指してやっているわけだから」と意欲は満々。1997年初場所で初土俵を踏み、力士生活は22年目。10月にはいよいよ40歳の誕生日を迎える。レジェンドの域に達した大ベテランは、旭天鵬以来となる40代幕内力士も見据えている。
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