「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」などで知られる森見登美彦の同名小説を映画化した『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日(金)より全国公開される。本作で主人公・アオヤマ君の声を担当したのが注目の若手女優・北香那。「バイプレイヤーズ―」(2017年ほか、テレビ東京系)シリーズで紅一点の中国人・ジャスミン役を演じ、「本当に中国人では?」と話題になるほどの熱演ぶりを見せ注目を集めた彼女だが、今回は小学4年生の男子役に挑戦!北は初めての声優業にどんな思いで挑んだのか。役づくりから、自身の子ども時代、初恋の話まで聞いてきた。
小4だけど小6をイメージしてアフレコ
ーーアオヤマ君役が決まったときの感想をお願いします。
北:オーディションだったんですけど、声優さんをやってみたいというのが前からあったので最初から意気込みが半端じゃなかったです!緊張していたんですが、スタッフさんの雰囲気すごく優しくて、ドキドキしつつもリラックスしてできました。決まったときは泣いてしまって、夢が叶ったって思いました。
ーー声優のお仕事に憧れたきっかけは?
北:うち、ずっと「アニマックス」(※アニメ専門チャンネル)が流れていて、兄弟もいるのでずっとアニメが流れている環境で育ったんです。そうすると自然に声優さんの声を聞くじゃないですか。それで、ふと「声が心地いいな」って思って。わたしはもともと、人の声とかに敏感で、声フェチなところがあったので、「なんでこんな心地のいい声が出せるんだろう」っていうのから始まって、わたしもこういうのやってみたいなって単純に思うようになりました。
アニメとかにある「ううん!(咳払いのような声や感情的な吐息)」ってあるじゃないですか。あれって現実だと許されないんで、あれもちょっとやりたかったんです(笑)。
ーー今回もありましたか?
北:ありました!(笑)それができて楽しかったです。
ーーちなみに声フェチというと、どんな声が好きなんですか?
北:男性だと……低すぎるのがちょっと怖く聞こえるので、中間の優しい声ってあるんですよ。そういう包容力のある落ち着いた声が大好きです。話し方もベラベラベラってしゃべられるよりゆっくりしゃべられる方が好きです。女性だと大森靖子さんと、井上苑子ちゃんの声が好きです。高いけどクセのある声が好きです。苑子ちゃんはお友達なんですけど、しゃべっていても、もっとしゃべりたい、ずっと聞いていたいってなります(笑)。
ーー監督からなにかアドバイスを受けましたか?
北:監督はアオヤマ君のキャラに対しても「この子はこういう子だからこうしてほしい」っていうのがなくて、「北さんの中でアオヤマ君のキャラを完璧に作ってから来てください」って委ねてくださいました。初挑戦だったので迷惑をかけることもいっぱいあったんですけど、「こうして」って言うよりは「こうしたいんだけどどう思う?」とか、一緒に考えてできた感じがありました。「それもいいんだけど、これもやってみてくれる?」って、それで良かった方を使うとか。
ーー北さんの中でアオヤマ君はどんな男の子だと思いますか?
北:アオヤマ君は小4なんですけど、結構大人っぽい子で、しゃべり方とかも(大人っぽい)。監督からも「小6をイメージしてしゃべってください」と言われました。なので、大人っぽい感じでしゃべったんですけど、わたしはアオヤマ君の可愛さっていうのは、垣間見える子どもっぽさだと思います。アオヤマ君はお姉さんのことが彼自身が表現している以上に大好きで、もっと甘えたかったんだろうなぁと思います。アオヤマ君は可愛い男の子です。
好きなことにはとことんハマっちゃう!「ゴールデンボンバーさんに青春を捧げた」
ーーアオヤマ君に共感できる点、自分と似ているなぁと思うところはありますか?
北:好きなことに対して勉強したり追求したり、すごくハマってしまうところは似ています。わたしも好きだと、すごいハマっちゃうので。わたしは中学のときからずっとゴールデンボンバーさんが大好きで、ゴールデンボンバーさんに青春を捧げたと言ってもいいくらい好きだったんです。歌がものすごく大好きで!ゴールデンボンバーさんの歌にすごい励まされて受験も頑張れたし、友達関係も助けられたことがありました。
ーーゴールデンボンバーさんとは意外です!他に「こんな風になりたい!」とか憧れている方はいらっしゃいますか?
北:素敵だな、とか綺麗~とかはあるんですけど、その人になりたいと思うことはあまりないんです。この人の感性すごいなとかはもちろんありますけど。ゴールデンボンバーさんの感性は普通の人ではありえない。歌詞の破壊力がすごいです。大森靖子さんも大好きなんですけど、感性がものすごいなっていう人に惹かれます。
ーーアオヤマ君はかなり行動的なタイプでしたが、北さんも即座行動するタイプですか?
北:わたし結構そうです。これ欲しい!と思ったら、その日に手に入らないと気が済まないタイプだったりするんで(笑)、そこもちょっと似てるなって思いました。
ーー劇中でアオヤマ君が友達に「好きならちゃんと言うべきだ」っていうのも共感しちゃったり?
北:できます!好きなのに、伝えないというのはありえないというか。気持ちを伝えることとか、素直になることは一番大事だと思うので、そこはすごく共感できますね!
ーーもし好きな人がいたら伝えられるタイプですか?
北:絶対伝えるタイプです!
ーーストレートでかっこいいです!北さんはアオヤマ君と同じ小学生の頃はどんなお子さんでしたか?
北:わたしはやんちゃな子どもでした。ダメって言われたらやりたくなっちゃうような。
ーー思い出に残っているやんちゃなエピソードをお願いします。
北:うち、日当たりがすごくいい家だったんですよ。それでお母さんが「うちはすぐ花が枯れちゃう」って悩んでいて。だから、わたしが花を咲かせたいって思って、学校でみんなで育てるパンジーを持って帰ってきて、それを家に飾ったんです。みんなのものなのに「自分が育ててるしいいじゃん」と思って。で、帰って来たお母さんがそれを見て「なにこれ?」って。怒られて一緒に謝りに行きました。ちゃんとパンジーは戻しましたけど、あのときのことは印象に残っています。
ーーかわいらしい失敗談です。今回、初めて映画館に行くお子さんもいるかと思います。北さんが印象に残っている最初の映画はなんでしょうか?
北:『千と千尋の神隠し』です。大好きで、最初から最後までセリフ全部覚えていました。昔はお母さんが「やめてもう!」って言うくらい。DVD買って覚えるまで見ていたみたいです。ずーっとそれを喋っていたって言っていました。保育園のときだったので、4歳とか5歳とかだと思います。
蒼井優は「本当にサバサバした“お姉さん”のイメージ」
ーー共演者の方とは、現場でお話しする機会はありましたか?
北:実は蒼井さんと一度だけしか(現場で)会っていなくて、他の皆さんとは現場ではお会いしていないんです。しかも蒼井さんと会ったのは、蒼井さんが現場入りするときで、わたしも顔合わせみたいな感じで入ったときで、お互いにその部分は使われていないみたいです。舞台挨拶のときに皆さんと会いました。
ーーそうだったんですね!舞台挨拶で、竹中(直人)さんととても仲が良さそうでした。
北:竹中さんはすごくリラックスさせてくださいました。皆さんすごい方ばかりだったので緊張していたのですけど、それを汲み取ってくださったのか、すごいナチュラルに話しかけてくださって。
ーー蒼井さんや西島(秀俊)さんはどんな方でしたか?
北:蒼井さんは“お姉さん”に似てるんですよ!本当にサバサバしたお姉さんのイメージ。一緒にアフレコしたときも、いろんな声の経験をされているからアドバイスとかもあるのかなーって思ったんですけど、わたしがものすごい緊張していたのをわかってくださって、全然関係ない話でリラックスさせてくださいました。「どこに住むのがいいか、一人暮らしに最適な街はどこか」とか(笑)。あと共通の知り合いがいるので、その人の話とか。
西島さんは、もうかっこいい……。大人の魅力がすごくて、わたしの友達にもめちゃくちゃファンが多いんです。声のトーンとかもそれこそいい感じで落ち着いていて。物静かではあるけどよく笑う素敵な方でした。
『ペンギン・ハイウェイ』は「大人にとっては過去を振り返ることができる作品」
ーー『ペンギン・ハイウェイ』を観させていただいて、初恋の物語だな、という印象を持ちました。北さんの初恋はいつ頃でしたか?
北:初恋は小学校2年生です。小学校6年生までずっと好きな男の子がいて。その子、サッカーがうまかったんです。しかもすっごいカッコよくて学年のみんなが好き、みたいな感じでした。でも、わたしが気持ちを伝える前に伝えた子がいたんですよ。で、その子と両思いになっちゃって。わたしは失恋しました。
ーーそういう経験があったからこそ、「好きなら好き」と伝える派になったのかもですね。
北:それはあるかも!いつの間にか告白してて「!!」みたいな(笑)。あの失恋の感じは苦しかったです。『ペンギン・ハイウェイ』を見て初恋も思い出しました。(アオヤマ君のお姉さんへの思いは)かわいい初恋ですよね。
ーー北さんは完成した作品を観てどう感じましたか?作品の魅力を教えてください!
北:自分の声があたってる!っていうびっくりが大きかったんですけど、最後の宇多田ヒカルさんの歌でしまる感じで、泣いちゃいました。全部詰まってるなって思いました。感動も冒険も恋も全部。(アオヤマ君のように)わたしにもそんな人生を変えるような経験があったらよかったのに、とも思いました。そこまで大好きな人と出会えることも羨ましいなぁって。(映画を通して)自分自身の過去に戻れるとこも素敵だなと思います。わたしにも小学生のころがあったなぁ、自由で何も考えてなくて、自分の好きなことだけやれる時期が、ってあのときが恋しくなりました。大人にとっては過去を振り返ることができる作品。いろんな意味でジーンときます。いろんなことを思い出して、また新しい気持ちになって「よし頑張ろう」と思って帰れる、そんな作品だと思います。
ストーリー
小学四年生の少年アオヤマ君は、一日一日、世界について学び、 学んだことをノートに記録する。毎日努力を怠らず勉強するので、大人になったらどれほど偉くなるか、見当もつかない。そんなアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”と仲がよく、“お姉さん”はオトナびた賢いアオヤマ君を、 ちょっと生意気なところも含めかわいがっていた。ある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが現れ、そして消えた。アオヤマ君は、“お姉さん”が投げたコーラの缶が、ペンギンに変身するのを目撃する。お姉さん”とペンギンの関係とは?少し不思議で、一生忘れない、あの夏の物語が始まる。
テキスト:堤茜子
写真: You Ishii