持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の決勝トーナメント1回戦(三番勝負)、橋本崇載八段(35)と佐々木勇気六段(24)の対戦が8月5日に放送され、佐々木六段がフルセットの末に勝利し、準決勝進出を決めた。次戦では、今回のルールを着想した羽生善治竜王(47)と佐々木大地四段(23)の勝者と対戦する。
フルセットの大熱戦に、佐々木六段は終局直後に思わずのけぞった。「途中、負けたかなと思った局面もあって、ちょっと苦しかったんですけど、最後逆転につながる一手を見つけられたので、なんとか勝てたという感じです」と、猛烈な重圧と疲労感の先でつかんだ勝利の余韻に浸った。
攻守に力強さを持つ超個性派の先輩棋士・橋本八段の将棋を、思う存分に味わった。2勝1敗で終えた三番勝負のうち定跡形、力戦形の両方でぶつかりあった。「橋本八段は居飛車、振り飛車、両方指せる先生なので、どちらで来るかなと思っていました」と話したが、この日は3局とも居飛車。それでも内容はまるで違った。1局目、佐々木六段の構想が見事にハマり快勝したかと思えば、2局目は終盤まで形勢が混沌とする中、最後は橋本八段に華麗に寄せられた。そして最終3局目。角換わりから定跡に近い形で進むと、攻めの佐々木、受けの橋本という棋風通りの総力戦で、なんとか勝利をもぎ取った。
これで藤井聡太七段、高見泰地叡王に続きベスト4進出。準決勝の相手は第一人者・羽生竜王か、同世代の佐々木大地四段だ。「羽生竜王がどういう将棋を指すのかなというのが、まず注目したいです。佐々木大地四段も、若手で羽生竜王のことを追い詰めるんじゃないかなと思います」と、2人の将棋を見た上で、次戦への対策を練る構えだ。「いい流れで来ているので、この調子をまたさらによくできるように、もっといい内容をさせると自分自身もうれしいです」。羽生竜王が着想した超速将棋。対局直後は疲れてきっていた佐々木六段の目も、頂点を見据え再び鋭く光っていた。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。