『VOGUE JAPAN』の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」や、『FORBES JAPAN』の「未来を創る日本の女性10人」に選出されるなど、いま世界が注目するアーティスト・スプツニ子!。1985年に東京に生まれ、イギリスで育った。ロンドン大学を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程を修了、2013年にマサチューセッツ工科大学の助教となり、昨年から東京大学特任准教授を務める。
女装だけでは飽き足らない男性が女性特有の"生理の痛み"を再現する器具を装着する映像作品など、彼女の作品は少し過激なことでも知られている。しかし彼女はこうした表現の向こうに、「異質なものをつなぎ、共感を生み出す」ことを目指している。
そんなスプツニ子!が今回チャレンジしているのが、一般人も参加できるアートイベント『RED CARPET LOVE!』だ。代々木公園に敷かれたレッドカーペットに、映画のワンシーンを再現した写真を撮影、その場で貼り付けていく、というものだ。自身はウエスト・サイド・ストーリーを再現、撮影ブースに集まった人々の中には、映画監督の園子温さんなど著名人の姿も見られた。
このイベントを通してスプツニ子!が繋げたいと考えているのが、「アートと支援活動」だ。シリアでの紛争や暴力から逃れた約8万人の難民が暮す、ヨルダンのザータリ難民キャンプには去年、映画館が完成したものの、作品が上映されたことは一度もないという。そこで彼女は寄付を募り、文化面での支援を行いたいと考えた。
「シリアでの戦争が7年以上続いていて、たくさんの難民が出てしまっている。アーティストとして何かできないかと考えたときに、やはり映画や演劇など、カルチャーに勇気づけられたことを思い出した。支援と聞くと、衣食住を支援するイメージがあるが、辛い時こそ映画を見たり、アートを見たりすることがすごく大事だと思う。その応援がしたいと思った。日本では8月15日は戦争が終わって73年の記念日だったけれど、ニュースを見れば色々なところで戦争は起きている。だからこそ、今起きている戦争を考えるきっかけになればと思って終戦記念日に始めた」。
自分が好きな映画のシーンを『RED CARPET LOVE!』で再現しながら、映画を観ることができない人たちに思いを馳せてほしい。それがスプツニ子!の狙いだ。集まった募金はザータリ難民キャンプにできた映画館と、映画をつくる制作チームを運営しているNGOに送金されるという。また、撮影された写真は難民も見ることができるようにする。「応援される側も、応援した人の顔が見えると全然違うと思う」。
彼女が今回のイベントで訴えたいことは、もう一つある。それは日本人の寄付の考え方を変えることだ。「日本は寄付したことを隠す。寄付しましたとあんまり言ってはいけない文化。売名と言われてしまう。海外ではセレブがドーンと寄付しましたと明かすのに、日本ではSNSで『アイツ売名じゃないの』と、ネガティブに言う人がいっぱいいるイメージで、寄付したことを隠しておく文化があると思う」。
そうスプツニ子!が指摘する通り、これまで数々の著名人が、寄付や支援をしたことを表明した結果、「炎上」してきた。例えばタレントの紗栄子は熊本地震の復興支援として約500万円を寄付し、振込受付書の写真をInstagramにアップしたところ、「好感度をあげたいのか」などの心無い声に曝された。また、お笑いコンビ・トレンディエンジェルも同じく熊本地震の復興支援として「どん兵衛10年分」を寄付したところ「いらないものをあげただけ」といった批判を浴びた。
そこで『RED CARPET LOVE!』では、誰がどんな表情で支援しているのか、普通なら見えない表情を可視化することで思いがより伝わると考えたのだという。
スプツニ子!にとって初めての大規模な参加型プロジェクト。不安もあったというが、蓋を開けてみれば多くの人が参加、レッドカーペットの長さは最終的に100mにまで延びた。「私にとって映画は、自分の空想を広げる手段だった。SFを見たり、アクションを見たり、ラブコメを見たり。楽しい時間を過ごせる場所が難民キャンプにできたらいいなというキャンペーンにこんなにたくさんの人が参加してくれた。優しい人もいっぱいいるな、楽しい人もいっぱいいるな、アートを作りながらそう実感できたことがすごく良かった」。
今回、Instagramのアカウントを作り、シェアを促したほか、イベント終了後も引き続きクラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」で写真と寄付を募集している。募集は9月20日まで行われ、スプツニ子!自身がザータリ難民キャンプに出向いて映画上映に立ち会う予定だ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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