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 今月いっぱいでAbemaTV『AbemaPrime』から卒業することが発表されたテレビ朝日の小松靖アナウンサー。10月からは橋本大二郎氏の後任として『ワイド!スクランブル』のMCを務めることも発表されている。

 小松アナは「お声が掛かることはアナウンサーとして有り難いし、嬉しい。でも、AbemaTV開局の半年前から企画会議に参加して都合3年、"AbemaPrimeを成功させてAbemaTVをマスメディアにする"という大目標には道半ばではないかと…」とも話していた

 今回編集部では、番組放送開始以来2年半にわたって水曜レギュラーとして出演、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)やニコニコ生放送などでも司会・ファシリテーターを務める堀潤氏に、元"局アナ"の視点から、小松アナへの思い、そして後任として出演する小川彩佳アナについて語ってもらった。

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堀:2016年4月に『AbemaPrime』が始まった頃の小松さんは、まだまだ"仕切るだけの人"だったんですよ。それが2年半ご一緒している間に、明らかに変わっていったと思います。

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記念すべき第一回放送での小松アナと堀氏(2016年4月11日)

 だから"局アナ"界の後輩として小松さんの大好きなところは、会社組織ではいわゆる"タブー"だとされる、政治・野球・宗教の話にも果敢に切り込んでいくところですね(笑)。アイドルの話だって、ももクロとそれ以外のグループの話題では、見ていて反応が違うのがわかりますしね(笑)。

 キャリアを積んだ、だけどまだまだ活きのいい現役の局アナが批判を恐れず、自分の言葉で自分の心情を語り、ゲストの論客たちと意見を戦わせる。もちろん世の中の多様な意見も踏まえた、公のメディアとしてのバランスを考えながら議論を進行させていく。それができる小松さんの存在は貴重だと思います。おそらく小松さんと僕とは政治的なスタンスは異なりますが、それが伝わるからこそ、僕たち出演者も視聴者も"公平だな"と感じるんだと思います。まさに言論人、ジャーナリストですよね。

 本来、取材する側、報じる側だって自分なりの意見を持っているわけで、それが切り口や質問内容にも表れているはず。それなのに"いや、私達は中立なんです"と装うから、視聴者が"嘘くさいな"と感じてしまう。ファクトを伝えた上で、"私はこういう思いです"ということを言っても良いはずなんです。

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テレビ朝日に関する問題にも言及、話題を呼んだ

 僕もかつては局アナだったわけですけど、中継先からたった一言「~だと思いますね」と言っただけで、帰局するなり部屋中に響き渡る声で「思うとは何事だ!」と徹底的に教育されました。だから意固地になって、あえてTwitterで自分の意見を明らかにして論争になり、最終的には独立することになりました(笑)。

 朝ドラの受けで「感動しましたね」みたいな発言をしたことがネットのニュースになることもあって、"NHKも変わってきた"と言われますが、よく聞いていると、いわば安全で支持を得やすいことばかりです。「それは安倍さんが言っていることがおかしいじゃないですか。そこを聞きたいです」みたいな発言が出て初めて"変わった"と言えるんじゃないでしょうか。

 ある時、高校生と「メディアにおける中立ってなんだろう?」という議論をしたとき、ある生徒が「極論を知って議論を続けることです。点じゃありません、線です」という意味のことを言いました。つまり、極論について議論を続けることが中立ではないか、ということです。感動しましたね。

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第一回から出演するウーマンラッシュアワーの村本大輔とは激しいやりとりも

 それ以来、僕は放送で議論をするのが楽しくなりました。やっぱりそれまでは極論が出ると過激すぎないかと心配していました。そうではなくて、極論が出て初めて議論がスタートし、「反対のこういう意見も一理あるじゃないですか。どこが間違っているんでしょうか?」と、逆の極論をぶつけてみる。そうやっていくうちに、中立というものが出てくると思います。そんな真剣な議論の結果、世の中は思った以上に複雑で、自分とは異なる意見にもいい点があったなっていう発見があれば、成功だと思います。

 だから僕もテレビに出演するときは、楽屋でアナウンサーの方々に「9条どっち派?」などと聞くことがあります。みなさんちゃんと答えてはくれますが、やっぱり「自分の意見を言うのは怖いです。批判されてしまうかもしれない」とおっしゃいますね。だけど、そんな風に恐れて沈黙しているうちに、アナウンサーはAIに置き換わってしまうかもしれない。

 最近、TBSの宇垣美里アナが「人には闇が…」とか発言して人気を博していますよね。あれは彼女が自分の言葉で心情を語っているところに心を揺さぶられ、魅力的だなあと感じているからだと思います。

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昨年夏には、沖縄のメディアをめぐる状況について現地取材

 アメリカの放送局を見ていると、自分はリベラルだとするキャスターが"インターネットメディアで活動する極右を呼んで、しっかり話を聞きます"というような企画をやっている。大統領選の直前なんて、意見の違うキャスター同士での討論会もありました。すごく良いじゃないですか。先日の『AbemaPrime』では『時事放談』(TBS)の終了と、減少する政治討論番組の問題を取り上げていましたが、本当は多様な意見を出すために、討論番組をもっとやらないといけない。

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小松アナと堀氏のポジションを入れ替えてみる、という試みも

 その意味でも、小松さんの活躍を可能にしたのは、AbemaTVのAbemaNewsチャンネルだから、という構造の問題もあるでしょう。通常の地上波の番組の、1つのコーナーが長くても30分、そのうち解説や議論に充てられるのは10分、というような中では、十分な議論の時間が取れないということもあるでしょう。そこがCNNのような24時間放送のニュース専門チャンネルだからこそ、1時間半も議論できたり、放送時間を急遽延長できたりする。視聴者の意見も取り入れながら話をするうちに意図しない発見が出て議論が揺れたり、もう一度元の議論に戻したり。いろんなゲストコメンテーターや当事者を呼べることも、逆に地上波が多様性を排除しているのではないかと気付かされます。

 元"局アナ"としての視点で『報道ステーション』での小川アナの様子を見ていると、"このテーマには言いたいことがたくさんあるんだろうな"と感じることがあります。今は眉をひそめたり、間を置いたりすることで、なんとか自分の気持ちを伝えようしているんじゃないかなあと。だから『AbemaPrime』で"語るニュースキャスター"としての第一歩がいよいよ始まるんじゃないかなと思います。すごく楽しみです。

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■プロフィール

1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜レギュラー)などに出演中。

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