科学技術やテクノロジーによって、人類を進化させようという「トランスヒューマニズム」。実はその思想を具現化しようとする人物が、トランプ氏がヒラリー氏に勝利した2016年のアメリカ大統領選挙の立候補者の中にいた。それが、自分の体と機械を取り替える時代が来ると主張する「トランスヒューマニスト党」のゾルタン・イシュトヴァン氏だ。
イシュトヴァン氏に関する記事を雑誌『月刊ムー』に執筆した宇佐和通氏は、その主張について「科学技術の力によって人間の精神的・肉体的能力を増強する。人間にとって不必要で望ましくない状態を克服しようとしていた」と説明する。つまり、映画『ロボコップ』の主人公のように身体と機械を融合させたサイボーグも、人類の進化のための方法の一つなのだ。
宇佐氏によると、『サピエンス全史』という本の著者、ユヴァル・ノア・ハラリは、ドイツ紙のインタビューでホモ・サピエンスが進化し、ホモ・デウスとなると主張しているという。また、トランスヒューマニズムに賛同する人物の中にはFacebookの創設者のマーク・ザッカーバーグ氏やテスラモーターズのイーロン・マスク氏などの大物も含まれており、それが"人間+機械"という奇抜な考えに信憑性を与えているという。「実業界の名だたる人たちがこの方向に進んでいる。もはや既定路線だと思う。これに日本がどういう風に追随していくのかを考える時なのかもしれない」(宇佐氏)。
■ゾルタン氏のインタビューに成功、次期大統領選挙にも意欲
今回AbemaTV『AbemaPrime』では、ゾルタン氏のインタビューに成功した。同氏は大統領選挙出馬の目的について「科学と革新的なテクノロジーをアメリカの政治に組み込むことが目的だった。未だ多くの人がその重要性に気付いていない」と話す。
「サッカーをする時に、人間の足よりも義足の方が上手にプレーできるようになるかもしれない。あるいは工事現場で、あなたよりも10倍重い荷物を持てる義手の人がいれば雇いたくなるだろう。おそらく5年後には義手や義足を付けるため、問題のない自分の手足を切断し、自分の体をアップグレードする人が出てくるだろう」。
ゾルタン氏の言葉を裏付けるように、ロボティクス技術は近年急速に発展している。例えば色覚異常を抱えるニール・ハービソン氏は、外科手術によって頭部に埋め込んだアンテナによって人の顔や色、紫外線から出る音を聞き、色を感じるができるようになった。
また、アメリカで映画制作をしているロブ・スペンス氏は幼少期に事故で失った右目の代わりに小型カメラを取り付けている。撮影した映像は、モニターやテレビに転送が可能だ。
さらにゾルタン氏は、マイクロチップの人体移植についても言及。自身も手に埋め込んだチップを使って自宅のドアの開閉を行っているという。「マイクロチップだけで支払いができる場所もあるし、テキストメッセージを送ったり、車のエンジンをかけることもできる。脳にチップを入れることで、考えることとインターネットが同時にできる。もしかしたら、5年、10年後には、このようなインタビューも頭の中で行うようになっているかもしれない」。
実際に、海外では人体に埋め込んだマイクロチップを使って電子機器を起動させたり、名刺代わりに自分の情報を読み取ってもらうといったことが実用化されているという。
「トランスヒューマニスト党の一番の目的は、"死にたくない人が死なないようにすること"。私たちがロボットになるのか、機械の中で暮らすのか。あるいはバーチャルリアリティの中かもしれない。新たな科学とテクノロジーで死を克服し、それを世界で共有したいと考えている」と話すゾルタン氏。「トランプ大統領は科学とテクノロジーに対して十分なことをしていない。そのことを伝えるために出馬する必要があると感じている」と、次期大統領選挙にも意欲を見せた。
■シンギュラリティの前に、ロボティクスによる人間の進化が
ゾルタン氏同様、トランスヒューマニズムを推進している「Humanity+」代表のナターシャ・ヴィータ・モア氏は「テクノロジーは人間を変えていく。寿命も延びるし、機械とのシームレスな接続も実現する。人体に機械が入ることによって、様々な補完的な役割を果たす」と述べた。 モア氏によると、そうした"進化"の中で変化するであろう社会や道徳をめぐる問題を考えるために「Humanity+」を設立したのだという。
「インターフェイスは基本的にはロボット、AIだろう。医療でも多くのテクノロジーを使っていくと思う。小さなコンピューターが人体に入っていって、不具合を補完していく。認知機能にもAIを使っていく。遺伝子操作もできる。そこにAI、ロボットが入ってくる。ほとんどの人は、機械で進化していった時にどうなるのかという不安を抱えている。つまり、機械が人間よりも賢くなる技術特異点(シンギュラリティ)の問題だが、それはもう少しの話で、その前にロボティクスによって、人間がサイボーグのように変化していくだろう。トランスヒューマニズムでは、病気をなくし、寿命を延ばしていくことも私たちの活動の思想になっている。遺伝子を調整することによって、小児または高齢者の悩みを取り除くことも可能だ」。
ゾルタン氏は、さらに先のことについて「トランスヒューマニズムは大きな傘のイメージで、人類を変える革新的なテクノロジーが全て含まれる。いま死んでしまった場合、クライオニクス、つまり人体冷凍保存をして、生き返る未来を待つだろう」とも語っていた。7日(金)放送の『AbemaPrime』では、さらに人体の冷凍保存の最新情報について取り上げる。
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