翁長知事の死去に伴い、今月30日に投開票されることになった沖縄県知事選挙。5人の立候補者のうち有力とされるのが、自由党の玉城デニー幹事長と、前宜野湾市長の佐喜眞淳氏だ。
沖縄で育った日本人の母と米兵との間に生まれた玉城氏は先週の出馬会見で「しっかりと翁長知事の遺志を引き継ぎ、辺野古新基地建設阻止を貫徹する立場だ」と表明。傍らには基地移設に反対の意を唱え続けた翁長知事の帽子を置き、思いを引き継ぐ姿勢を強調した。一方、基地移設を推進する安倍政権が支援する見通しの佐喜眞氏は先月14日、「普天間飛行場の継続使用・固定化はあってはならないということを県民の共通認識として考え方を整理しながら、移設先については後日しっかりとお答えをしたいと思う」と述べるにとどめた。
3日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した元防衛大臣で拓殖大学総長の森本敏氏は「さきほど官邸で安倍総理と立ち話をした。何をおっしゃったかは申し上げられないが、沖縄県知事選に非常に大きな関心を持っておられることは間違いないと思う。言うまでもなく選挙の争点は、広い意味での基地移設問題と、経済振興をどうやって進めていくかということ。ただ、これは"AかBか"という単純な話ではなく、お互いに共有できるものもある」とした上で、玉城氏擁立の背景に国政も絡んだ複雑な事情があったことを示唆した。
「2012年9月にオスプレイ配備を決めた時の防衛大臣が私。国会ではデニーさんから多くの質問を受けたし、沖縄にもずいぶん通って、当時の仲井真知事、そして宜野湾市長だった佐喜眞さんにも色々なお叱り、注文を受けた。だから二人の候補とはいずれも非常に親しいが、どのようなプロセスで候補者がデニーさんに決定したのか。自由党は国会に6議席あるが、このうち衆議院は小沢代表とデニーさんだけ。今後、小沢さんが一人で国会対応もしていくことになり、とても厳しい状況になると思う。そういう中での立候補なので、色々な背後関係があると思う。また、本土の政治とオール沖縄は本当に一枚岩なのか。翁長さんの意志を継ぐということだが、背後の支持基盤は以前と同じ状況なのだろうか」。
森本氏が指摘するように、翁長知事は死去の直前に遺した録音テープに、自身の後継として玉城氏と呉屋守将氏の名前を挙げていたことが報じられている。それでも玉城氏の出馬までには時間を要したことから、翁長知事の支持基盤だった"オール沖縄"内に"不協和音"があるとの見方もある。
■今の"オール沖縄"はかつてとは別物
日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚氏は、2015年に結成された『辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議』(オール沖縄会議)と、今の"オール沖縄"は別のものになっていると指摘する。
「オスプレイ反対運動が盛り上がる中、沖縄の41市町村の首長・議長が集まって"総理直訴行動"を実施し、建白書を安倍総理に提出した。この活動のためにオール沖縄会議が作られ、後に翁長知事を擁立する母体ともなった。中には"仕方なく判を押した"という人もいたそうだが、ともかくも41市町村長が全て賛成したからこそ"オール沖縄"だった。しかし自民党の方針が辺野古移設に変わり、自民党系の11市長のうち9人が反翁長となったことで、名前と実態がかけ離れるようになってしまった。それでもイデオロギーではなく、アイデンティティで団結している、ということで、なんとかツギハギをして維持している状態だ」。
作家の竹田恒泰氏は「あくまでもグループの名称であって、"オール"かどうかは別問題だ。翁長さんが選挙で勝った時も、25万票対35万票くらいだったし、その前の衆院選では4つの選挙区で勝ったものの、自民党は惜敗率で復活している。かつては連戦連勝だったのが、去年から今年にかけて沖縄で行われた選挙では10回のうち9回負けている。それでも新聞も含めて、都合のいいときだけ"民主主義の勝利"だという。実態は、ほとんど瓦解していると思う」との見方を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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