アメリカのサンダース報道官が10日、北朝鮮の金正恩委員長が2度目の米朝首脳会談を求めるトランプ大統領宛の書簡を受け取ったことを明らかにした。ボルトン大統領補佐官は「年内の開催の可能性も十分にあると思う」と述べ、今月行われる国連総会終了後にシンガポールで開催する可能性を示唆した。6月の米朝首脳会議から進展のない中で、金委員長はなぜアメリカにラブコールを送ったのだろうか。
11日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した岡崎研究所研究員の村野将氏は「北朝鮮は実質的に具体的な行動を取っていない。トランプ大統領が前のめりになる中で、情報機関としては核・ミサイル活動が継続していることをリークすることによって、警戒心が薄れないように努力をしていると思う。それが現状」とした上で、「北朝鮮としては、良好な米朝関係を表面上は継続させることによって実質的な核保有国としての立場を確立しながら、米朝、あるいは朝鮮半島全体の融和を進めていきたいという考えだろう。再度の会談は、そのための一手だ」と話す。
一方、東京福祉大学国際交流センター長の遠藤誉氏は「核ミサイル開発がどれほど膨大なおカネを使うか。これ以上は使えないところまで来ていて、国民のお腹をいっぱいにさせてあげたい。そうしなければ体制が崩壊してしまう。金委員長にとっては、非核化しか道はない。トランプ政権の間に必ず非核化する」として、非核化は大きく進んでいるとの見方を示す。
「北朝鮮は"朝鮮戦争は終わっていない、アメリカと戦わなければならない"と人民軍を鼓舞してきた。それが突然"これからは対話路線だ"となれば、クーデターが起きる可能性もある。軍を説得するためにも、まず朝鮮戦争の終戦宣言が必要だ。だから核の申告リストと引き換えに、終戦宣言を求めてきた。ただ、完全なリストを出してしまえば、情勢が変わった際に施設を爆撃されてしまう可能性がある。その中で話し合いを続けてきた」。
今回のパレード終了後には、中国共産党序列3位の栗戦書常務委員長と金委員長が手を繋ぎ、中朝の友好関係をアピールしていた。しかし遠藤氏によると、北朝鮮には中国からの圧力がかかっているのだという。「中国は段階的非核化を主張して経済支援を続け、原油も止めなかった。米朝首脳会談も中国の後ろ盾のおかげで実現した。また、金委員長が3回も訪中したのだから、建国記念日に習主席が訪朝するのが当たり前だろう。それでも習主席が出席しなかったのは、北朝鮮を信用していないからだ。核保有国になるのは許せないし、申告リストも不十分なものだったのだろう」。
村野氏は「リストの内容をめぐる駆け引きは非常に難しいが、少なくとも書面上はすぐにできる。次に開発済み核弾頭の確保・解体、そしてIAEA等の国際機関による査察を行うが、そこまでには5~10年がかかるし、不可逆性を担保するためには査察を一生続けなければならない。これまでリストと終戦宣言を巡って水面下の交渉が行われてきたことは事実だと思うし、どの段階で北朝鮮に見返りを与えるのかも論点になっているはずだ。おそらくアメリカの情報機関や国防当局、事務レベルは相当厳しいラインで見ていると思うが、トランプ大統領が政治的判断で金委員長との関係改善を優先するのであれば、2回目の会談をやる可能性もある。日本や周辺国にとって望ましいのは北朝鮮の核弾頭を全て国外に搬出するなりして、核能力を実質的に低減させていくことだが、非常に難しい」とした。
今後の北朝鮮情勢について村野氏は「国際関係の理論に2つの異なる考え方がある。国家が安全を最大化するためには、安全保障を最大化することが重要なのか、それとも力を最大化することが重要なのかという問題だ。これは大国の話なので必ずしも北朝鮮に当てはまるものではないが、私は、北朝鮮は後者だと思う。つまり、自分の安全が確保されている状況が担保されれば拡大・膨張をしなくても満足するのだと思う」と話す。
遠藤氏は「単純に金委員長という人がどういう人かを考えれば、単に金王朝が保たれればそれでいい。それしかない。先月、国防権限法がアメリカ議会を通過した。これは終戦宣言あるいは終戦協定が締結されても在韓米軍は引きあげなくてもいいという法律だ。やはりこれはトランプ大統領が第2回米朝首脳会議のために終戦宣言の準備をしているということではないか」との見方を示した。
村野氏は「もし減らすのであれば、日本と韓国、アメリカの国防長官が同意しなければならない。今、マティス国防長官の去就が注目されているが、この点は政治的にかなり微妙な部分だと思うし、慎重に見ていかないといけない」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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