厚生労働省は9月11日、「国民健康・栄養調査」を発表した。これによると、40代男女の約半数が平均睡眠時間「6時間未満」であり、直近1カ月で「睡眠で休養が十分に取れていない」と感じる人も20.2%で有意に増加しているという。しかし、ほとんどの人にとって6~8時間の睡眠は必要とされ、生まれつき6時間未満で問題ない人は100人に1人もいないと言われている。
では、必要な睡眠時間を取れていないと一体どうなってしまうのか?眠りの謎を探るべく、AbemaTV『けやきヒルズ』の徳永有美キャスターが世界トップレベルの睡眠研究を行う筑波大学の国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)を訪れた。
1週間身につけた活動量計によると、徳永キャスターの平均睡眠時間は7時間、睡眠効率(寝床に入ってから実際に眠っている割合)は86.93%。徳永キャスターは「睡眠実感としては、眠りが浅いイメージ」と話すが、産業医の大井雄一先生は「睡眠効率はかなり高い値で、この結果からすると徳永さんの睡眠が悪いという感じはしない」と指摘する。
参考として、同様の調査を行った20代の女性のデータも見たところ、10分以上の覚醒が多く記録されていた。その原因になっていたのが毎晩の寝酒。笹原信一朗先生によると「お酒を飲むと眠くなるし寝つきがよくなると思われているが、実は睡眠の効率が落ちてしまう」といい、睡眠時間とメンタルヘルスの関係についても「睡眠を削って無理して仕事を頑張る。最初のうちは何とか乗り切れるかもしれないが、長く続けばうつ病を発症し、眠りたくても眠れなくなってしまうことも。睡眠とメンタルヘルスは相互に繋がっている」と危険性をあげた。
また、堀大介先生は「睡眠不足によって高血圧、糖尿病、重篤な心筋梗塞といった病気のリスクが上がることが知られているので、睡眠時間を絶対量として確保するのは大切」と説明。大井先生も「限られた時間でたくさんの仕事をこなさなければならない時、大抵真っ先に削られるのが睡眠時間。睡眠はないがしろにされがちな要素だが、まずは睡眠時間を確保するという工夫をしたうえで、健康状態を保ちながらパフォーマンスを出し続けるほうが長期的にはいいと思う」と睡眠時間の確保を促した。
現代神経科学で最大の“ブラックボックス”と言われている「睡眠」。その謎の解明に挑むIIISの柳沢正史機構長は、働く世代の睡眠は絶対的に足りていないとして、睡眠の必要性を次のように訴える。
「その人の脳が必要とする十分な睡眠を取っていると、昼間のパフォーマンスが上がる。だから、仕事が大事であればあるほど夜の睡眠も大事。睡眠量が足りない状態で働いていると、何をやるにも昼間の作業効率が落ちる。そうするとどんどん(仕事を終える時間が)押していって、結局睡眠時間が取れなくなる悪循環に陥る」
とはいえ、働き世代で「自分は寝ないでもやれる」と思って頑張ってしまう人も多い。そうした人に向けては、「自分はショートスリーパーだ、と言っている方も、自覚症状がないだけで、実際には睡眠負債を抱えている場合が多い。単に睡眠不足をごまかしているだけ、という状態の人がほとんどだと思う。自覚はなくとも脳のパフォーマンスは絶対に落ちているので、だまされたと思って1週間、それまでより毎日1時間多く睡眠時間を取ってみてほしい。多くの人はよく寝た自分とそれまでの自分を比べて、パフォーマンスの差を実感できると思う。とにかく体験してみることが重要」と勧めた。
平日に睡眠時間を減らした分、休日に長く睡眠時間を取る“寝だめ”。これも平日に蓄積された睡眠負債を返しているだけで、翌週の必要睡眠量の事前確保、つまり睡眠の「貯金」ができているわけではないという。逆に、起床・就寝時間が狂うことで、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」の状態になることも指摘されている。平日も休日も規則正しい時間に起床・就寝し、一定の睡眠時間を保つことが重要だ。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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