今月7日、高性能爆薬を製造した容疑で逮捕されていた名古屋市の男子大学生(19)の自宅から新たに3Dプリンターで自作したとみられるプラスチック製の拳銃が見つったとして、警察は大学生を銃刀法違反の容疑で再逮捕した。大学生は「悪いことをするつもりで作ったものではないことを信じてください」と話しているという。
3Dプリンターで作られた銃を所持していた疑いでの逮捕者は国内2人目で、2014年には横浜地裁が銃を2丁製造・所持した元大学職員に懲役2年の実刑判決を言い渡したケースがある。問題になっているような、実弾を発射できる強度を持ち合わせている拳銃の設計図も、ネット上で簡単に入手できるという。設計図をネット上で販売、政府から公開差し止め命令が出された米・テキサス州のNPO団体は裁判で争った後に、今年8月から安価での販売を開始。現在30の州で購入が可能になっている。団体の公式サイトには「希望販売価格10ドル」と表示されているが、実際には値段を自由に入力でき、1セントで購入することも可能だ。3Dプリンターで作った銃は金属探知機に反応せず、製造番号や所有許可証による追跡もできないことから"幽霊銃"と呼ばれ、アメリカでも大きな問題になっている。
近年、3Dプリンター本体は数万円程度で購入でき、原料や設計データも容易に手に入ることから、複雑な形状のものでも簡単に制作可能になった。3Dプリンタの出力サービスやセミナーを開催するなどをしている「東京メイカー」の毛利宣裕さんは「アイドルのロゴが入ったものを作って欲しいという依頼もあった。また、スーパーマリオに関するデータがネット上に無料公開されていたことがあって、うちの子がそれを元に3Dプリンタで物を作り、友達にあげてしまった。任天堂さんに連絡すると、弁護士から"個人には譲渡してはいけません"と指摘されたので、慌てて回収した。現状ではデータがあれば悪用できてしまい、防ぎようがない。一刻も早く学校などでモラル教育を始めないと手遅れになりかねないという感じがする」と懸念を示す。
■医療、物流、住宅…有効活用に期待
悪用が問題視される一方、毛利さんは「ホームベーカリーくらい普通のものとして一般の家庭に入ってくれたらいいと思う」と期待を寄せる。
実際、医療を中心に3Dプリンターの有効活用は広がりをみせている。患者をスキャンした3Dデータから臓器のレプリカを作成、難易度の高い手術前のシミュレーションに役立てている医療機関もあるという。また、厚生労働省は今年、患者自身の骨と同化する3Dプリンター製人工骨の製造販売を承認した。骨と非常に似た素材でできており、体内に埋め込むと新陳代謝によって骨と同化することから、交通事故での頭蓋骨欠損や、悪性腫瘍で骨の一部を切除した際の活用が期待されるという。
また、物流にも変革を起こそうとしている。注文に合わせて近場で制作することができるため、従来のように遠くの工場で生産して管理、輸送するという負担が軽減されるのだ。毛利さんによると、AmazonやUPS、ヤマト運輸や日通も3Dプリンターを使ったサービスを開始する予定だという。
さらにアメリカ海兵隊ではコンクリートを用いた建設用3Dプリンターで46平方メートルの兵舎を作ったと発表している。木造の場合10人がかりで5日ほどかかるところを、4人で2日以内に建設できるようになることから、戦地だけでなく、災害時の仮設住宅建設にも活躍しそうだ。「今後は住宅を作るという話もあり、40平方メートル前後の建物の壁を24時間で作ってしまおうというプロジェクトが動いている」と毛利さんは話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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