その試合では2度、背番号19が放つシュートの行方に大きな注目が集まった――。

 Fリーグ第13節、大阪で行われた湘南ベルマーレとの一戦はお互いにノーゴールで拮抗した試合展開が続いていた。そんな中で獲得した前半10分のPKと20分の第2PK。キッカーは2本とも大薗諒。しかしそのどちらも決まらず、後半に喫した1失点によりチームは0-1で敗戦。大薗は試合後に涙を流した。

持ち味のシュートは封じられ、今季はわずか5得点……

「自分が倒されたわけではないのに、みんなが入って2年目の俺に蹴らせてくれたということはそれだけ信頼してくれていることですごく幸せです。だからこそ、外してしまってチームのみんなにも申し訳ないし、自分にも情けないなと思いました……」

 昨シーズン、名古屋オーシャンズサテライトから入団した大薗諒は強烈なシュートを武器に、開幕戦でハットトリック。無名の新人ストライカーはフウガドールすみだでのデビュー戦を自らで華々しく飾った。

 しかし大薗は今シーズン、14節を終えてわずか5得点。ゴールを決めることが大きな役目のピヴォにとっては物足りない数字となっている。加えてチームも目標のプレーオフ圏内から大きく離れた7位に位置し、後れを取っている。リーグ3連勝中だったすみだは、湘南戦を勝って更に勢いに乗りたかった大事な試合だった。そのため、掛かるプレッシャーも大きく決定的なチャンスを2度外してしまい自身の不甲斐なさを痛感し、涙を流した。

「湘南戦は大事な試合で正直、全然リラックスができていませんでした……。PKを取った時も無理してでも『楽しい』と思おうと自分に言い聞かせたけれど、雑念だったり『俺がやらないと』『俺が決めないと』って気持ちがすごく強くて、それで良くなかったんじゃないかなと思っています」

 大薗の立場は無名だった昨シーズンとは明らかに違う。どのチームもその強烈なシュートを警戒し、いかに封じ込めるかの対策をしてくる。それは大薗自身が一番よくわかっている。

「もう『シュートでしょ?』という感じなので、タイミングをずらしてシュートだったり、一工夫を入れて決まればどこかでパッて自信が出てくる気がするし、そうなればもっと点が取れるんじゃないかなと」

 今シーズン途中には、すみだの若きエース・清水和也がスペインへと移籍した。エース不在となっている今、大薗には大きな期待が掛かる。今の苦しい状況を打開するため、エースとして得点を量産し、チームを引っ張るために何が必要になるのだろうか。

 大薗は「自信と楽しむこと」と言う。

「大事な場面で外した信頼を取り戻すためにも常日頃からもっともっと練習しないといけないというのは改めて思いました。チームの良さも、『このチームで戦ってるんだ』ということも改めて気づいたし、もっと頑張らないとなっていうのも気づけたからPKを外してちょっと良かったんじゃないかなとは今では思ったりもします」

 PKを2回外したことで、チームは勝ち点を失ったのは事実。だが、それによって大薗は大切な“原点”を思い出すことができた。「PKを外してちょっと良かったんじゃないかな」という言葉には、そんな意味も込められている。

 昨シーズンと違い、ただシュートを打つだけでは結果は出なくなった。大薗の言葉どおり、ゴール前でワンフェイク入れるなど一工夫したシュートが決まれば自信にも繋がる。初心に帰り、雑念を捨てて試合を楽しむという純粋な心で臨めばPKやここぞという大一番でも決められるようになる。「そうすれば自然と結果はついてくる」と大薗は感じている。

 2本のPKを外した光景はこの先もずっと忘れることはないだろう。その悔しさがあるからこそ、大薗は更なる成長のためのヒントを見つけることができた。その悔しさを原動力に、更なる成長、進化を求め続ける。

 分かっていても止められない。そんな選手に成長すれば、1試合の中の少ないチャンスでも必ずチームを勝利に導くゴールを決めることができるはず。そうなった時にこそ、大薗がすみだのエースへと進化を遂げたという証明になる――。

文・舞野隼大(SAL編集部)

(C)AbemaTV

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