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 9月いっぱいでテレビ朝日報道ステーション』から卒業し、10月2日からAbemaTVの報道番組『AbemaPrime』の司会を務めるテレビ朝日の小川彩佳アナウンサー。8月に起用が発表された際には「大変な番組なんだろうなぁ」「未知の世界へダイブするような心持ち」と不安も口にしていた小川アナだが、一週目を終えた今、何を思うのか。話を聞いた。

■小学校の卒業アルバムに「アナウンサーになりたい」

ーーかなり早い段階から「アナウンサーになりたい」という思いを抱いていたそうですね。誰か憧れた方がいたのしょうか。

小川:そういうわけではなく、父の仕事の都合で小学1年生から3年生までの2年間、アメリカのミシガン州にいた経験が大きいと思います。

通っていたのが日本人学校ではなかったので、自分とは異なる価値観を持った人たちの中に入ることになりました。子どもながらにカルチャーショックを受ける毎日でしたが、様々なことを知る楽しみ、こちらのことを知ってもらえることの喜びもあり、世界が広がっていく感じがしました。そこから発信したり受信したりできる仕事、架け橋になれる仕事に就いてみたいな、という気持ちが漠然とありました。

小学生なので常に見ていたわけではありませんが、ニュース番組もちょっとずつ好きになっていって、小学校の卒業アルバムには「ニュースを読むアナウンサーになりたい」と書いていました。アナウンサーの中でもニュースに携わりたいという気持ちが明確にあったみたいです。

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ーー念願が叶ってアナウンサーになり、しかもバラエティ番組よりも報道番組のご担当が多いということで、希望に近いお仕事をされてきました。

小川:入社してすぐ、田原総一朗さんの『サンデープロジェクト』に。いきなり報道の方々に囲まれて、アナウンサー人生が始まりましたね。それが本当に向いているのか自分ではわからないんですが、こういう性格なので、向いていると判断されているのかもしれません(笑)。

ーー2011年の東日本大震災の発災直後の4月からは『報道ステーション』の担当になり、被災地の取材にも行かれています。『報ステ』公式サイト内のブログを拝読しましたが、一記事一記事、本当に時間をかけて書いてらっしゃるんだなあというところが伝わってきました。すごく真面目な方だなあと(笑)。

小川:そういうところ、あるんですよね…(笑)。

■仕事で感じる「やりがい」と「怖さ」

ーー喜怒哀楽の中でも、どちらかと言えば怒り、悲しみの方が多いと書かれていらっしゃいましたが、その中でも逆に嬉しかったり、やりがいを感じたりすることがあるから続けていけると。

小川:例えば瀬戸内海のある島を取材したときに、終末期医療を行うクリニックが公的な支援もあまりなく、資金繰りに苦労されていることを知り、何かできたらなあ、という思いから、放送時にスタジオでちょっとだけ触れてみました。すると、ある経営者の方が共感してくださり、なんとか次のステップに進めた、というお話を伺いました。そんな展開になるとは思っていなかったので驚きましたが、自分の気持ちを乗せて放送することが、誰かの"次"に繋がっていくことがあるんだなあと実感しました。

それと同時に、怖さも感じています。ふいに発した一言が誰かを傷つけたり、ネガティブな影響を与えてしまったりする可能性もあるので、常に自覚を持って発信しなければいけないと思っています。

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ーー選挙特番のためにノートを作られたり、マララ・ユスフザイさんの著書を原書で読んだり、オンエアに向けた準備も大変ですよね。

小川:そんなこともありましたね(笑)。事前に放送内容がわかっていればもっと準備ができるのですが、大抵はその日に起きたことを放送するので、時間があまりない中で新聞やネットの記事を読むなどしています。それと、できるだけオピニオンを吸収したいと思っています。まだ表面化してはいないけれど、問題に関わっている人たちの"本当はこうだよね"というような書き込みも含めて見るようにしています。"一面的ではない"、ということを知っているだけで、ニュースを伝える際のニュアンスが変わってくると思っています。だからTwitterやYahoo!ニュースのコメント欄も見ていますよ。

ーーそこまでチェックしているんですね!だからオフで旅行をするときも、半分お仕事に関係あるのかなというような…(笑)。

小川:とくに昔はそうでしたね~。まだ若かったので、あわよくば番組で使えないかな…と(笑)。2011年には、みんなが幸せだって言える社会を目指していると聞いて、ブータンに遊びに行きました。一人でカメラを回して、皆さんに"幸せですか?"って聞いて回りました。本当に興味があったんですけど、ガイドさんには"あんまり嗅ぎ回らないで!"って言われちゃいました。

■健康の秘訣は「よく食べて、よく寝る、お酒も程よくたしなんで」

ーー10月から出演番組が変わっても夜型の生活が続きます。しかも月~金曜、休んで穴を開けるわけにはいかないという。

小川:けっこう健康優良児なので、あまり風邪は引かないです。よく食べて、よく寝る、お酒も程よくたしなんで、それだけだと思います。ストレスは溜めないように、家に帰ったら気持ちを切り替えます。もちろんオンエアで気になるところはチェックして、反省もしますが、"はい、今日はおしまい!"と。それからNetFlix観てます(笑)。逆にその切り替えが出来ないと持たない仕事なのかもしれませんね。最近は年齢とともにキツくなってきました。5年前くらいはこんなんじゃなかったのになあって。

ーーお休みの日のリフレッシュ方法は、やっぱり音楽ライブですか?

小川:かなり行っていますね。あとは最近エレキ・ギターを始めていまして。ちょっとだけ練習した時期がありましたが、結局コードを押さえて鳴らすところまで止まっていたんです。たまにムシャクシャした時に引っ張り出してきて、"やっぱり全然ダメだな"って(笑)。せっかくだからもう一度やろうと、実家に弟のギターがあったので借りてきて練習しています。頑張ります。

ーーカラオケでも熱唱するほどの洋楽好きとか。

小川:父を中心に、家族みんなが好きで。中学生の時、家のラックに並んでいるCDのジャケット見たり聞いたりしている中でボン・ジョヴィを見つけまして。こんなにかっこいい音楽があるのか!と目覚めましたね。洋楽の新譜はチェックしていますし、最近はSpotifyの、自分のためのプレイリスト作ってくれる機能がありがたいですね。

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ーーそこまでどっぷりネットを見ているイメージは無いですが、いかがですか。

小川:確かに、休みの日はあまりスマホに触らないですが、会社では"打ち合わせ中もスマホいじってるキャラ"です。でも人の話を聞いていないわけじゃなくて、ニュースに関する情報を調べて、"こういう意見もありますよ"って提案しています(笑)。

ーーアプリはどんなものを入れていますか?

小川:健康系のをいくつか入れているんですけど、最近は『寝たまんまヨガ』がオススメです。眠れない夜は、これでヨガしながら寝落ちしています。熟睡できるらしいですけど、なんでこんなに毎日眠いんだろう…(笑)。

■「ありのままでぶつかっていくしかない」

ーー最初の一週間を終えてみて、いかがですか?「筋肉痛になった」という発言が報じられてましたが(笑)。

小川:率直に言って疲れましたね(笑)、身体も頭も表情筋も、まさに違う筋肉を使っていますから。出演者が曜日ごとに違うので、毎日違う番組を担当しているような気持ちになるくらい、空気感が違いますね。さらに私は「司会進行」という肩書ではありますが、自分の言葉で自分の意見を言ったり、質問をしていかないと許してもらえない世界ですし…。

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ーー9月まで担当していた『報道ステーション』と同じ報道系の番組ではありますが、ガラッと番組の雰囲気は変わりましたね。

小川:出演者の数も多いですしね。本当に不器用な人間なので、小松アナのように流れるコメントを眺めつつ、皆さんのお話も聴く、ということが本当にできるのか、まだまだ不安です。"自分はこういう風にいこう"とカッコつけても、それこそ一秒で打ち砕かれる世界なんじゃないかなって思っています。でも、やるしかない、ありのままでぶつかっていくしかないと。

ーーそのコメント欄も含めて、その雰囲気に溶け込み始めている感じもしますが…。

小川:いや~どうでしょうか(笑)。隣にいらっしゃるMCやレギュラー出演者、ゲストの方々のおかげだと思います。皆さんそれぞれの分野でのプロフェッショナルですし、よりキャラクターがわかってくると、面白くなってくると思います。楽器に例えると、まだ皆さんの音色を把握できていないので、これから距離を縮めていって、早く音楽が奏でられるようにしたいと思います。

■「主体的に関われるテーマがあるかもしれない」

ーー『AbemaPrime』(月~金、夜9時~)は『報ステ』(月~金、夜9時54分~)のほぼ"裏番組"に当たります。AbemaTVでは『報ステ』の放送終了後の0時から再放送しているので、実は両方見ることができますが(笑)

小川:各局のオンエアを流しているモニターの中にAbemaNewsチャンネルのものもあるので、スタンバイ中にちらっと見ることはありますが、放送後に見逃し視聴でチェックしていますね。"アベプラはどんな切り口でこのテーマを取り上げたんだろう?"と。小松アナとはメイクルームにいる時間がかぶっているので、毎日のように話をしていましたよ。

障害者雇用の水増し問題や、外国人の働き手の問題など、複雑な背景があって今の事態になっているとくことを余すこと無く、多角的にお伝えすることを目指してはいますが、他にも様々なニュースがある中ではやはり物理的に難しく、どうしても地上波の番組ではダイジェストっぽくなってしまう部分が出てきてしまいます。その点、一つの問題をじっくり掘り下げることができるのが強みだなと。

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ーー視聴者からは、小松さんから変わることで、女性の働き方の問題、セクハラの問題などに新たな視点が加わるという期待もあると思います。

小川:「MeToo」に関しても、地上波ではあまり大々的には報じられていませんし、自分自身にも関わってくる問題について、もっとやればいいのに、もっといろんな意見を知りたい、と思っていました。

それから、やはりLGBTQの問題です。これまでもよく取り上げてきましたよね。実は大学の卒業論文のテーマがトランスジェンダーとメディアとの関わりについてだったんです。

最初のお話に戻りますが、アメリカから帰国後の一時期、いじめに遭いました。日本語をきちんと習得する前に英語が入ってきたので、両方とも中途半端、ひらがなを書いているつもりが途中でローマ字になってしまうような状態でした。みんな最初は"変わった子だなあ"と面白がってくれていたのが、次第に仲間に入れてもらえなくなりました。それが勉強を頑張るようになって、0点に近かった漢字テストで周りに付いて行けるようになると、いじめがなくなったんです。日本は無意識の同調圧力が強い国だと思うので、異質なものから、仲間として受け止められるようになった、というところもあったんじゃないかと思うのです。

今でこそ、"そういうことだったのかな"と理解できるですが、当時は苦しかったです。最近も、テニスの大坂なおみ選手の活躍を機に、「ハーフ」にまつわる議論がなされていましたよね。私も"日本語をちゃんと喋れない自分って、一体何者なんだろう"と、まさにアイデンティティの問題に直面する経験を少しだけしていたんです。そういうところから、男性・女性という根本的な点で不一致を感じてしまうLGBTQの方々への関心が強くなりました。

私にも主体的に関われるテーマがいろいろあるかもしれないと思っています。

■「カルチャーと社会問題が関わってくる部分も掘り下げてみたい」

ーーブログで印象に残っているフレーズがあります。「スポットライトを浴びるのはアナウンサーではない」と。一方、小松アナはご自身の故郷ということもあって、悩みながらも北海道地震の現場を取材されていました。

小川:主役はいつでもニュースやそのニュースの当事者です。これまでは田原さんや古舘さんの隣でお話を聞いて、自分も勉強しながらアシストする、という気持ちが強かったですし、あくまでも出てくださった方々と一緒に、どれだけのものを引き出して、空間を作っていけるかというのがお仕事だと思っています。

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ただ、『AbemaPrime』出演が決まってから、制作のみなさんと深掘りしてみたいテーマについてお話もしています。やっていないことを探すのが難しいくらい、どんなテーマもやっている番組ですよね(笑)。女性の問題やLGBTQの問題はもちろん、映画や音楽、アートなどのカルチャーと社会問題が関わってくる部分にすごく興味があるので、そこは自分から堀り下げてみたいですね。あとは14年習っていた日本舞踊も取り上げていだけたら嬉しいですけど(笑)。奥深いですから。

ーーブログも始められましたが、どんなことを書いていきますか?

小川:写真一枚でもいいのかもしれないですけど、そこは真面目に、ちゃんと書こうと思っています(笑)。番組で言い足りなかったことや、CM中に話したこととか、裏話みたいなものも書いていけたらいいですね。

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