明石家さんま出演のテレビCMが話題を集めた翻訳機「ポケトーク」など、自動翻訳にまつわるサービスが急増している。中でも"超便利"だと注目されるのが、スマートフォン向け高性能翻訳アプリ「VoiceTra」(ボイストラ)だ。音声入力だけでも18言語、出力は14言語。テキスト翻訳も含めると31言語に対応。幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2018」でも話題となった。
開発したのは国立研究開発法人「情報通信研究機構(NICT)」で、「Google翻訳」が世界的に使われる中、国が主導して大量の言語データを収集、日本語翻訳に特化させた。背景には近年、外国人観光客の増加や、来年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに対応しようという目的がある。
NICTフェローの隅田英一郎氏は「NICTが得意なのは、日英、日中、日韓、日ミャンマーなど、アメリカ企業が得意じゃない点。英語中心か日本語中心かで大きく違うし、主語とか目的語が省略されているっていうところもちゃんとやらなきゃいけないので、今後さらに精度を上げていけるかなと思っている。 同時通訳についてもこれからの研究テーマで、2025年ぐらいには何とかしたいと思っている。プロトタイプはできているが、まだまだ課題はあるので、後5年くらい時間をもらえたら。タイムラグは確実に無くなっていく。音声翻訳を最初に始めたのは日本で、途中からGoogleが入ってきた。負ける訳にはいかない」と意気込む。
AI搭載で現在も進化中のため、精度もなかなかのもの。「これなら外国人に道案内ができる」と高齢者にも好評だ。隅田氏によると「例えば"もうすぐ着きます"など、日本語は主語を省略するので、機械は電車が着くのか私たちが着くのかが分からない」と日本語ならではの難しさを説明。さらに雑踏や店内など、騒がしい環境下での固有名詞の聞き取りも課題のようだ。
■データを民間に解放、専門化・パーソナライズの時代へ
街の人に外国人に道を聞かれた経験について尋ねると「テンパって日本語で答えちゃった」「手で指したりジェスチャーで伝えたりする」「自分の英語を聞かれるのが恥ずかしい」など、聞こえてくるのは日本人の外国語への苦手意識だ。隅田氏は「日本人は外国語コンプレックスがすごく強いので、そういう意味では、日本人が買ってくれるデバイスになると思う」と話す。
NICTの取り組みの成果はそれだけではない。NICTの木俵豊・先進的音声翻訳研究開発推進センター長が「我々のエンジンを活用した製品を企業の方に作って頂いている」と話すように、研究結果は企業や自治体に無償で公開され、活用も始まっている。
京急電鉄では独自の翻訳アプリ「駅コンシェル」を開発し7月に導入を開始。現在、泉岳寺駅を除く72駅に設置されている。同社のIT戦略担当である倉重亮太さんは「人を増やしてサービスを向上させるというのが難しい中、ツールの一環としてこういうものが使えたら良いんじゃないかということで開発した」と話す。
隅田氏は「万能なものを作るか、専門的なものを作るのかは非常に重要で、専門のものを作ったほうが精度は良くなるし、使ってもらえるということになる。例えば、万能包丁とパン切りナイフ、それから刺身包丁と細かくやるやり方があって、細かくやったほうが切れ味の良いものができる。翻訳も同じで、精度を良くしていこうとすると細かくけていくことが重要で、ユーザーにとっては使いやすいものができるから良いと思う。例えば医療用はすごく重要で、訪日外国人の2%ぐらいが病気になってしまって通院しているが、病院では対応に困っている部分があるので、そのための翻訳機はあちこちで使われ始めている」と話す。
「究極的にはそれぞれにパーソナライズされて、個人用のシステムになっていくと思っている。職業とか年齢とか性別とか考えて、その人用にピッタリの翻訳システムになっていく」と現状を話す。
海外でも取材を行うジャーナリストの堀潤氏は「中東など、どうコミュニケーションを取れば良いのかわからない場所でも、通訳アプリを使って会話をして、帰ってきてからもやり取りするぐらい仲良くなれたのですごく助かった」、通訳の仕事もこなすタレントのSHEILAは「訛りがあって、この単語なのかな?と不安に思う時もある。これは通訳の人にもすごく役立つと思う」と感想を漏らしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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