ベルギーで制作された、あるドキュメンタリー番組。タトゥーや乗っているバイクの色、月に300ドルを服に使うこと、さらには複数の交際相手がいることなど、街を歩く人たちが素性や友達にも話していない隠し事まで占い師が言い当てていく。実は占い師が使っているのは、4人のハッカー集団が取得したデータを元にした個人情報だ。
このドキュメンタリー番組が示唆するのは、個人情報がいとも簡単に漏洩する可能性があるという現実だ。
日本の若者たちも、「Facebookで友達登録した人がアカウントを乗っ取られて、怪しいURLが送られてきた」「偽物のレイバンの情報が送られて来る」「アカウントを乗っ取られ、勝手にリツートされた」と、トラブルと隣り合わせにあることを感じているようだ。
ある元ハッカーは「フォームに特殊な値を入れると、データベースを見ることができたり、脆弱なものであれば住所とか電話番号、フレンドリストから友達の情報といったデータも取れちゃう。僕の場合は愉快犯だったので、その情報を売って稼ごうという気持ちはなかったが、世の中にはそれで稼いでいる人もいるし、実際の口座を使用せず、仮想通貨経由で個人情報を売買する場合もある」と話す。
個人データの闇市場について調査をしているEMCジャパンの水村明博・RSAマーケティング部長は「名前と有効期限とセキュリティコードが一緒になっていれば即、犯罪に使えるので、価値が高い。金融機関に絡むような情報であれば不正に口座から送金が行われるという被害も考えられる。また、最近目立っているのがデートサイトなどの出会い系サイト。こういう所の情報は犯罪者が詐欺を働くのに使いやすいということで高値がついている」と指摘した。
コンピュータやプログラミングの知識を活かして攻撃者の視点で対策に取り組んだり、新たなサービスを作るなど、健全なハッキング文化を支援するために9月に設立された日本ハッカー協会の杉浦隆幸代表理事は「おそらく2人に1人は何らかの攻撃を受けていると思う」と話す。
実際、警察への不正アクセスに関する相談件数は年々増加の一途をたどっており、被害者が気付いていないものも含めると、攻撃の件数はさらに膨大なものになるという。
杉浦氏によると、メールやSNSといったウェブサービスの閲覧にとどまらず、ウイルスに感染した決済端末でクレジットカードを利用することで情報が盗まれるケースもあるほか、フリーWi-Fiの利用でも、閲覧中の画面など様々な情報が取得されてしまうことがあるのだという。
また、ルーター、コピー機といった周辺機器を用いた不正アクセス、情報漏えいも気をつけなければならないよう で、「基本的に最新のものを使っていれば9割以上は防げる。常にアップデートを面倒臭がらずやったほうが安全に使える」と杉浦氏は述べた。ルーターも最新の状態にする。ルーターのプログラムも必ずアップデートされている 古いものだと対応していないので、5年くらい経ったら絶対に買い替えたほうが良い」と説明。さらに「USBメモリをノベルティなどでもらうこともあると思うが、中には"バッドUSB"といって、PCに挿すと勝手にサイトにアクセスしてウイルスをダウンロード・実行させて遠隔操作を可能にするケースもある」と指摘した。
危険性はスマートフォンにもある。来月公開の映画、『スマホを落としただけなのに』は恋人がスマホを落としたことによって個人情報が漏れ、思いもよらない事件に巻き込まれていくという、スマホを持っている人なら誰もが「怖い」と思う作品だが、これは決して物語の世界だけではない。
ITジャーナリストの三上洋氏は「私が肩越しにiPhoneのロック番号を覗き見たとする。そして私にそのiPhoneを1分間触らせもらえれば、ここ50日間、どこに行っていたかを全部トレースすることができる。元カノにばったり会った男性が、勝手にスマホの遠隔操作アプリを入れられてしまったという話も聞いたことがある」と話す。
杉浦氏も、「"アプリ入れてあげるよ"と言われて入れてもらったものが遠隔操作型のもので、被害に遭われる方はいる」と指摘、インストールした覚えのないアプリが入っている、正常に動いていたスマホやアプリが動作不良を起こすようになった、パケット通信料が急に増えた、バッテリーの減りが急速に速くなる…といったことに気付いたら要注意だと訴えた。
自分は関係ないと思いがちなハッキング。しかしスマホやパソコンが欠かせない現代、誰もが被害者になる可能性があるのだ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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