2年遅れで10月に開場した豊洲市場。小池都知事が延期を表明してか、追加工事の費用は約38億円、移転延期による市場関係者への補償費用は100億円以上に上っている。さらに東京オリンピックに向けた交通の大動脈・環状2号線の整備も間に合わなくなってしまった。
この2年間について小池都知事は今月11日、「安全性を将来のリスクも見据えた形で確保できたということで有意義ではなかったか」と強調しているが、前任者である舛添要一前都知事は、「時間とカネの無駄遣い。小池氏が政治工作のため移転問題を利用した」と断じている。
27日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』では、舛添氏に加え、小池都知事の判断は正しかったという立場を取る伊藤悠都議(都民ファーストの会・政調会長代理)に話を聞いた。
■伊藤都議「完全に無害化しろ言っていたわけではない」
舛添氏はまず、「"100%安全"というのはどこにもなく、無理だ。日比谷公園の辺りから海側はもともと埋立地だ。最近埋め立てた夢の島の場合も、どこを掘っても何かが出てくる。それに対してどういう対策を取るかということであって、豊洲の地下水を飲むわけでも魚を洗うわけでもないので、90%安全であれば問題ない。大騒ぎになったが、私はあの水を飲める。なぜなら、1日2リットルを20年間飲んだとしても、発がん確率は10万分の1程度上がるだけ。やはりお金と時間を考えれば壮大なる無駄だった」と非難した。
一方、「移転延期がなければ盛り土問題も分からなかった」とする伊藤都議は「政党などの立場によって安全性の基準が変わってしまうと市場関係者が迷惑するということで、石原都知事の時代に専門家会議が作られた。そこで"盛り土をすることによって安全・安心が確保される"という答申が出され、これに基づいて工事を進めてきた。その意味で、90%安全であれば開場していいということではなく、100%の安全・安心の工事ができてはじめて開場できる」と主張。
その上で「小池都知事も私たちも、地下水や土について完全に無害化しろと言っていたわけではない。市場を使う業者の方々が、安全・安心に使って頂ける基準のためのやるべき工事が盛り土だった。開場するにあたっても、4万3000倍のベンゼンが出てきた時点で、なぜ東京都はこの土地を選んだのかということからスタートしている。そういう意味で、少なくとも約束していた工事をやるということが前提だった。さらに、盛り土がなかった場所はちょうど水産仲卸売場棟の下。もし盛り土の工事よりも先に開場していたら、営業している最中に真下で工事することになるし、後で盛り土がなかったなんてことになったら、市場関係者の皆さんも受け入れられないということになっていたと思う」と考えを示した。
「盛り土」問題について舛添氏は「私は都庁の役人に怒っている。あの時、"謎の空間"が出てきたとして大騒ぎになったが、なぜそういう空間になったのか、理由を何も説明しない。むしろ私のところには"全部盛り土をしました"と報告していた。鈴木さん以降、青島さん、石原さん、猪瀬さんの時代に、きちんと知事に言わない、とんでもない体質が出来上がっていた。当たり前だがコンクリートの方が頑丈で、あの空間はメンテナンスのために必要なもので、土がないからといって安全性に問題があるわけではない。"こういう必要のため空けておいた空間だ"ときちんと説明してくれていたら、私も記者会見で事前に説明ができた」と振り返った。
■舛添氏「オリンピック・パラリンピックに黄色信号が灯っている」
開場の日に注目を浴びた環状2号線の暫定迂回路が来月4日に開通するが、工事が遅れたために当初は片側1車線のみとなる。再来年に控えた東京オリンピック・パラリンピック期間中の渋滞を危惧する声もある。
これについても伊藤氏は「盛り土がきちんとなされていれば」と話し、「確かに環状2号線はオリンピックを開催するにあたって、確かに死活問題だ。しかし、小池都知事も遅らせたかったわけではない。追加対策工事が7月にようやく終わったが、やはり必要だったと思う。そもそも小池都知事の誕生以前から、この環状2号線の工事というのは、土壌汚染対策工事の影響で押していた。想定以上に時間がかかっていたので、都庁の中にもオリンピックに間に合わせるためにも、早く終わらせないといけない、あるいはモニタリング調査も全部待っていられないという声があった。しかし本来は工事が終わってから2年間モニタリング調査をやって開場するというのが議会との約束だった。邪推すると、舛添都知事はオリンピックに間に合わせるために2年待たなければならないモニタリング調査を前倒しした」と指摘。「盛り土がなかったことは都庁と知事だけの責任ではなく、都議会の責任でもある。この件は百条委員会も開いたが、これからも検証しないといけないと思う」と話した。
舛添氏は「全部を100%完璧にはできないのに、マスコミも"盛り土""豊洲"ばっかり言っていた。行政は豊洲のことだけを考えて仕事をしているわけではない。築地の跡地に5000台分くらいのバスの駐車場を作らないとオリンピック開催が無理になるし、一つがダメになるとドミノ倒しでダメになっていく。オリンピックを成功させないと大変なことになるので、目をつぶるところはつぶる。もちろん危険ならやらないが、安全だと分かったので間に合うようにした。環状2号線が通らないということは、オリンピック・パラリンピックに黄色信号が灯っていると思う。豊洲のオープンの時を見れば分かるように大渋滞。やはり行政における2年の遅れというのは、ものすごいコストだ」と反論した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)
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