去年の流行語トップテンにも選ばれた言葉「睡眠負債」。わずかな睡眠不足が借金のように積み重なってしまうことを意味する。
ネットの普及で、いつでも・誰とでもつながることができる現代社会。仕事とオフの境目もわかりづらくなり、ストレスや睡眠不足を招いているという見方もある。街で話を聞いてみると、「夜遅くまで映画を見たり、考えごとをして寝られなかったり」(20代女性、睡眠時間5~6時間)と話す。「飲み会とかが多い。2次会、3次会と続いたらてっぺん越して午前1時、2時になる」(20代男性、5~6時間)、「寝ようとは思うけど携帯いじっちゃうと時間が過ぎて、いつのまにか遅くなっちゃう」(20代女性、5時間)と、問題意識を抱いている人は少なくないようだ。
東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身医師は「成人の約5人に1人が睡眠負債の状態に陥っているといわれていて、患者も増えている。問題は眠れないことではなく、眠っても脳に疲れが残ってしまうこと。身体の疲れはとりやすいが、脳の中に溜まった疲れは上手く眠らないととれない。それが積み上がっていった状態が睡眠負債だ」と話す。
そんな睡眠負債による免疫力低下の影響で風邪をひきやすくなったり、アレルギー疾患が発症しやすくなったりするといい、肥満、糖尿病、心臓病のリスク上昇や自律神経失調、脳機能低下、集中力低下、意欲減退の原因にもなるようだ。
「大事なのは睡眠の質。長生きするのは7時間睡眠の人だと言われているが、6時間と10時間の人を比較すると6時間睡眠の人の方が長生きしている。だからといって10時間睡眠の人が6時間にしてしまうと、もっと早く死ぬ。もともと遺伝的に夜型の人もいるし、年齢の関係もある。一般的に19~20歳をピークに夜型に変わっていき、子どもに比べて大人は2~3時間くらい後ろにずれるといわれている。だから20歳の人が朝7時に起きるというのは、子どもや高齢者が4時に起きるのとほぼ同じ。だから高校生や大学生が朝早く学校行くのが辛いのには生理的な理由があるということ。アメリカでは始業時間を2時間遅らせて成績がよくなったというデータもある。つまり、人によって睡眠の質が違う。例えばいびきをかいて寝ているような方は6時間睡眠では足りない。寝る前にリラックスする時間は必要だが、運動するのは大馬鹿者。仕事の緊張で自律神経を使った上に、さらに運動で自律神経を使ってしまうと、身体はそれほど疲れていなくても、脳が防御反応で疲れたように感じてしまうからだ」。
■睡眠対策、企業も続々
さらに梶本医師が「睡眠負債の慢性化によって生産性が落ちたり、運転中の事故が増えたりする。それによる経済損失」と話すように、睡眠負債がもたらす損失額は15兆円にも及ぶという試算もあるようだ。
こうした状況を受け、企業も睡眠対策に取り組んでいる。あのGoogleもAppleもNIKEも仕事中の仮眠を推奨しており、日本企業では吉野家が睡眠のための研修を開いているという。
なかでもユニークな精度を導入しているのが、結婚式をプロデュースしている「CRAZY」だ。その名も「睡眠報酬制度」といい、毎日スマホアプリで睡眠時間を計測、1週間のうち6時間以上の睡眠が5日あれば500ポイント、6日なら600ポイント、毎日達成できれば1000ポイントがもらえ、100ポイント=100円として社員食堂などで使える特典が付いている。
同社の森山和彦社長は「個人のプライベートな部分で裁量に任されているが、日本人はもっと寝れば生産性が高まっていくと思う。それを後押しするための逆転の発想」と話す。そんな方針を受けてか、社内にはおおっぴらに昼寝する人の姿も見られた。
■お薦めの最新の睡眠アプリ・ガジェットは?
また、睡眠の質をあげるためのアプリやガジェットも次々と登場している。
リラックスした状態での入眠をサポートしてくれるスマートスリープアイマスク「illumy(イルミー)」(税込み1万8900円)は、内側の目の部分が光り、夕焼けをイメージした赤い光が緩やかに暗くなっていき眠りに誘う。起床時は日の出の青空をイメージした青い光が徐々に明るくなり、心地よく起こしてくれるという。梶本医師も「サバンナにいる動物も、夕日で眠くなって朝日で起きる。夕焼け照明といって、オレンジ色にしてあげると交感神経から副交感神経になってリラックスできるという実験データがある。朝起きる時もいきなり眩しいと起きるのによくないが、日の出の感じでゆっくり明るくなると、深い睡眠から浅い睡眠に徐々に変えていけるので、落ち着いた起き方ができる。自然な方法だ」と推奨する。
オーディオメーカー大手「BOSE」が開発した耳栓「SLEEPBUDS(スリープバズ)」(税込み3万2400円)は、たき火の音など、特別にチューニングされた10種類の環境音が流れ、周囲の騒音をカットして入眠を助けてくれる。梶本医師は「たき火の音も小川のせせらぎ、湖の波の音も全て自然界の揺らぎなので人工音ではない。こういった揺らぎのある環境が動物は安心できる。それを聞いていると自然に眠くなれる」と説明した。
さらにふとんコンディショナー「FUTOCON(フトコン)」(税込み13万8240円)だ。布団クリーナーでおなじみのレイコップが販売しているもので、ベッドの足元側にあるエアスペーサーから適温に調節された風が布団に送り込まれ、寝るのに適しているとされる33℃に保ってくれる。梶本医師は「"頭寒足熱"で、足元が温かいと眠くなる。一方、深い睡眠をとるためには体温を下げないといけないので、これもちゃんと考えてあげて、眠りに入った後からは1℃だけ下げる。そうすることによって体の代謝が下がり、深い睡眠に入れる。非常にうまく考えられている」と話した。
最後に梶本医師は理想の睡眠時間や時間帯について「経験が一番いい。朝起きた時に疲れが残っているようであれば、前日の睡眠が足りない。時間帯を少しずらして、朝ゆっくり起きる方が楽だなと思えば夜型が合っているということ。自分で探っていくしかない」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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