助っ人。それは味方を助ける存在でなければならない。チームを勝たせる存在でなければならない。大きな盛り上がりを見せる日本シリーズで際立つデスパイネのように。パ・リーグ2位のソフトバンクをファイナルステージへとけん引した3本の本塁打、1分1敗で迎えた日本シリーズ第3戦、第4戦の本塁打――。彼は味方を助け、チームを勝利に導く存在だ。ただしそういう選手は、どのスポーツ界にもいる。
日本最高峰のフットサルリーグを戦うペスカドーラ町田の超強力な“助っ人5人衆”もそうだ。
相手を威圧する最強の“助っ人5人衆”
チームスポーツでは通常「外国人枠」が適用されるため、外国籍を持つ選手が試合に登録できる数や同時にピッチに立てる数には制限がある。例えばJリーグでは、1試合で3人がベンチ登録してその3人が同時に出場可能というように(ほかにも「アジア枠」や「Jリーグ提携国枠」があるため、最大で5人となる)。
Fリーグでも同じように「外国人枠」のルールが適用され、ベンチ登録できるのは3人で、同時にピッチに立てるのは2人までだ。フットサルは1チーム5人でプレーする競技のため、さすがに“ピッチに3人同時”は多いということだろうか。しかし町田には、森岡薫、ピレス・イゴール、クレパウジ・ヴィニシウス、ダニエル・サカイ、アウグストという“5人の助っ人”がいる。それはどういうことなのか。
森岡は2012年8月にペルー国籍から、イゴールは2016年1月にブラジル国籍から、ヴィニシウスは2017年12月にブラジル国籍から、それぞれ日本国籍へと帰化した。つまり今は日本人なのだ。その3人に加えて、2017シーズン途中からダニエル・サカイが、2018シーズンからアウグスト(2人ともブラジル国籍)が仲間入りして、町田の“助っ人5人衆”が誕生した。この5人は、なんと同時にピッチに立ててしまうのだ。
今シーズンはイゴールがケガで出遅れていたため、5人が初めて同時にピッチに立ったのは第5節のこと。2点ビハインドで迎えた後半、岡山孝介監督はギアを上げるためにこの最強のセットを投入して巻き返しを図った。対峙したFリーグ選抜の三笠貴史は「すごく押し込まれたし、マイボールでも(そのプレッシャーを回避するために)前線に蹴り出すのがいいのか探り探りで。明らかにギアが変わった」と話していた。
現在、森岡は負傷離脱中だが、ヴィニシウスとアウグストは攻撃に特化した選手。今シーズンもそれぞれ13点、9点とスコアを挙げている。アウグストは相手を背負いながらキープして味方をアシストするプレーも多いためゴール数はそれほど多くないが、ヴィニシウスは、出場した17試合中10試合でゴールを奪うエースストライカー。「ヴィニシウスが決めた試合の勝率」は7割を超える頼もしい助っ人なのだ。
ただし、町田の最大の持ち味はリーグ屈指の守備力であり、仲間が絶大の信頼を寄せる守護神・イゴールとともに、フィールドプレーヤーではダニエル・サカイが大きな貢献を見せている。9月には森岡からキャプテンマークを引き継いでキャプテンシーを発揮するなどリーダーシップも持ち合わせ、強度の高い守備と高精度のパス、一撃必殺のシュートで攻守両面において相手の脅威となっている。
2016シーズンに半年間だけ在籍した名古屋オーシャンズでは思うような活躍ができないままクラブを去ったが、昨シーズン途中から加入した町田では、守備の要としてだけではなく、自らの決勝点やアシストで何度も勝利の立役者となった。大事な局面で体を張り、ゴールに直結するプレーで仲間を助け、気持ちの込もったプレーでチームを勝利に導く。その存在感はまさしく“助っ人”そのもの――。
日本シリーズも熱いが、フットサルも熱い。今週末はデスパイネだけでなく“町田の助っ人”にも注目だ。
文・本田好伸(SAL編集部)
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