世界の時価総額企業ランキングトップのApple、そして10位以内に名を連ねるGoogle・Amazon・Facebookの4社=「GAFA」を始めとした、巨大IT企業のあり方をめぐって議論になっている。ネット通販や検索サイトを運営していることから「プラットフォーマー」と呼ばれる彼らは利用者を増やし、業績を上げ続け、世界経済を牽引してきた。その一方、市場独占や不透明さ、さらには税金逃れなど、様々な批判も受けてきた。
日本でも5日、政府が巨大IT企業の規制に関する中間報告を発表。経済産業省が公表したアンケート調査では、中小企業など2000社のうち90%以上が「改善してほしい企業もある」と回答しており、「利用規約や運用を一方的に変更され不利益を被った」「利用料金や手数料が割高」「検索結果の順位決定が不透明」などといった声が上がったという。
政府は「社会経済に不可欠な基盤を提供している」という点は認めつつも、「中小企業などへの支配が行われ、しかも特段の規制を受けていない」との見解を示し、公正な取引環境を目指すべく監視チームの新設や企業取引などに関する情報開示を義務つけることなど、検討を本格化させる見通しだ。
5日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した政策研究大学院大学の田中和哉氏は「ネットワーク効果といって、サービスやプラットフォームの利用者が増え、大きくなればなるほどデータも蓄積され、それによって独占・寡占が進んでいく一方、競争のためのルールがほとんどないのが問題視されている。例えばアプリの売上に対し高率の手数料を取る一方、審査の基準は不透明だ」と話す。
ネット上には「情報は国民のモノ。ビックデータに課税して欲しい」「金納めてないってのなら措置は仕方ない」と肯定的な意見もある一方、「巨大IT企業に対するヒガミみたいなもんじゃないか」「"差がつきすぎたから"で後から規制?ふざけんなよ。」「デジタル税って狙い撃ち課税やん」と、"GAFA囲い込み"には否定的な意見も見られた。
スマートニュース・メディア研究所の瀬尾傑氏は「例えばAmazonの場合、トラックが配送すればするほど、使用する道路は傷んでいくし、それは税金で補修される。そういうことに対して社会的責任を果たしているかという疑問が世界中で出ている。また、シリコンバレー周辺の土地の価格が上がって一般の人が暮らせなくなるなど、格差社会が目に見えるようになっている問題もある。そうした巨大IT企業への不信感が根底にある」と指摘する。
プライバシー(データの管理)、競争ルール、そして税金の徴収など、巨大IT企業の問題については世界中で議論が進んでおり、すでにヨーロッパではEUではGDPR(EU一般データ保護規則)がすでに施行され、イギリスは国内で得た利益を課税対象にすることを表明している。
田中氏は「日本は非常に遅れていて、戦略を決める前の段階で、ルールもない。なんとか頑張ってEUに追いつこうとしているところだ。GDPRとどう足並みを揃えるかという話をしているが、GAFAのメインのアメリカや、アジア諸国とも協議しなければいけない。例えばAmazonは無料配送を禁止されると、次の日には配送料1円にした。法律をどんどん更新しないと対策が難しい。政府・企業のほか、色々なステークホルダーがみんなで話し合いながらやらないと、どこかに抜け道があるとうまくいかない」と指摘。
その上で、「アプリをプラットフォームにアップして、FacebookなどのSNSで宣伝する。つまり、どうやって売るかはあまり考えずに、プロダクト開発だけに集中できるという意味ではいい面もあるし、だからこそ数人でもスタートアップ企業が成り立つ。その意味で、今回の対策はスタートアップ施策でもある。だから今回は経産省、総務省、公取委ということで、税金の問題はスコープにはない。しかし、税金の問題も急いで対策しなければならない。課税逃れの話は非常に難しく、多国間で話し合って決めていかなければならない。みなさんお気づきでないかもしれないが、中国人が使う決済方法は、店舗やタクシーなど、かなり広い範囲で使えるようになってきている。中国企業は金の力でやってくるので、規制の範囲で闘う準備はできている。いずれにしろ、政治家や有識者にはシニアの方も多ので、意見のギャップも大きいのではないか」と懸念点を示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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