11月21日に行なわれたKrush・後楽園ホール大会のメインベントは、衝撃的なKO決着となった。
対戦したのは山本真弘と里見柚己。山本は連敗中だが、今大会がKrush10周年の記念大会ということもあってメイン登場となった。かつて60kg最強とも言われたレジェンドだ。
一方の里見は20歳の新鋭。レジェンドを食ってのし上がるというテーマがあった。大会中、K-1とKrush両方でベルトを巻いた選手たちがリングに登場するなど記念大会らしい演出もあったが、闘い自体はあくまで現在進行形のサバイバルだ。もちろん山本も、勝たなければ生き残れない。
試合前半は、山本の動きのよさが目立った。若い頃ほどにはステップを多用するわけではないのだが、距離のコントロールなどはやはり巧みだ。
「最初は蹴りを当てて、そこからパンチにつなげるっていう作戦だったんですけど……蹴りが当たらなすぎて焦りました」と里見は試合を振り返っている。
このまま山本が試合を支配して判定勝ちかとも思われたが、Krush10周年のメインというシチュエーションがそれを許さなかったのか。2ラウンド、接近戦で里見が得意とする左ストレートがヒット。この一撃で山本はノックアウトとなった。それまでの流れを考えれば、逆転勝利と言っていいだろう。
まさに世代交代のKO。里見は「まだ20歳ですけど、これからどんどんのし上がっていきます。若い世代が出て行かないと盛り上がらないので」と観客にアピールしてみせた。
山本はKrush10周年の歴史を背負っての闘いだったが、里見にとってはこれからのKrush、すなわち未来をかけての闘いだった。やはり未来は若い選手が作るものということか。里見の勝利は時代の必然とも言えるものだろう。ただ、だからこそ“山本目線”で見れば残酷な結末でもあった。そしてその残酷さも、格闘技の重要な一面なのである。
文・橋本宗洋