10日に勾留期限を迎えるゴーン容疑者。海外メディアの中には、長期勾留や弁護士不在の取り調べといった日本の司法制度に疑問を呈し、「中世のようだ」と報じているところもある。
ゴーン容疑者同様、経済人として突然の逮捕・勾留、そして連日の過熱報道を経験をしたのが、元ライブドア社長、"ホリエモン"こと堀江貴文氏だ。7日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、一連のゴーン事件、また、検察とマスコミのあるべき姿について堀江氏に直撃した。
■「"本丸"というのはないと思う」
堀江氏は2006年1月、「偽計取引」と決算を水増しするなどした「風説の流布」という証券取引法違反容疑で逮捕された。一貫して否認を続ける中、粉飾決算の疑いで再逮捕され勾留は延長。94日を経て保釈された時には体重は8kgも落ちていたという。
当時のことについて「なつかしい」と話す堀江氏だが、ゴーン容疑者の逮捕について「気持ち悪い。言ってみれば退職金の引当金を積んでいなかったみたいな話だし、そのことを有価証券報告書に記載していたか、していないのかという話だ。払う約束はしていたが、まだ払っていない、ということにはなっているが、その契約を結んでいたかどうかもまだわからない。その容疑が100%本当だったと仮定しても、捕まえる必要あるの?というのが第一の感想」とコメントした。
「業務上横領という話も取り沙汰されているが、証拠が固まらないと思うし、自白がなければ立件のハードルも高い。ただ、有価証券報告書の虚偽記載は"形式犯"といって、要件さえ満たせば有罪になりうる。有価証券報告書に本当ではないことを書いた時点で虚偽記載なので、自白が取れなくても大丈夫だ。僕もライブドア事件の時には一切自白していないし署名もしていないが、周りの人たちの"アイツは嘘を言っている"という証言で有価証券報告書の虚偽記載で有罪になった。みんな"本丸"があるとか、"別件逮捕"だと言っているが、多分"本丸"というのはないと思う。検察としては東京地裁で無罪が出る可能性はゼロではないが、東京高裁では有罪が出るだろうというところまで読んで、確実にやれるということで逮捕したんだと思う。勝負としてはおそらく検察が勝つと思うが、それほどのことなのかと思う」。
その上で堀江氏は「たとえばアメリカではテスラのイーロン・マスク社長がSEC(証券取引委員会)に狙われ、摘発されるのではないかという話があったが、会長職を一旦辞め、罰金を払うということで片がついた。だから株主も困らなかったし、市場にも大きな影響を与えなかった。ゴーン容疑者についても、結局はお金の問題でしかないんだから、お金で決着を付けるというソフトな収め方があるんじゃないのか。それを刑事事件化して拘置所に閉じ込めるというのはどうなのか。みんな行ったがことないから分からないと思うけど、拘置所はメチャクチャ苦しい。そんなところに閉じ込める合理性はゼロ。100%、検察の権力維持のためだと思う。それ以外の理由はない。それが特捜部だ」と断言した。
「特捜部長は取調べをしないので、副部長が取調べをする。それは名誉なことらしく、"特捜部に捕まるのはだいたい50代、60代の引退間際の人たちだぞ、30歳そこそこで副部長に取り調べされるって、お前すごく名誉なことだぞ"というようなことを言われた。"おお~、そうなんですね"って思った。嬉しくはないけど(笑)。ロッキード事件で一気に注目を集めたが、元々はそんなに検察には人気がない。だからその後もリクルート事件、ライブドア事件など、定期的に事件をつくり、大物を挙げることで"俺たちは頑張ってるぜ"ってところを見せないと、検察志望者が増えないんだと思う。だから検察にしてみれば、有罪にさえできればカルロス・ゴーンなんてどうでもいいんだろうし、"悠々自適の生活ができるんだから、俺たちのために泣いてもらおう"ということだと思う。こういう批判を堀江がごちゃごちゃ言ってくることも検察は考えてると思う」。
■「お前らよくできるなこんなこと、と思った」
「特捜部の歴史を語ったら何時間でも語れる」と話す堀江氏は、司法制度改革についても厳しく批判する。「これが何がきっかけで始まったかと言えば、厚生労働省の郵便不正事件で無実の村木厚子さんを100日以上も拘置所に閉じ込めちゃったことへの反省から。にも関わらず、結局は検察の力を強くする道具だけが増え、"焼け太り"した。こいつらはすげぇなと思った。お前らよくできるなこんなこと、と思った。本当に恐ろしい組織だ。政治家たちにもなぜここに突っ込めないんですか?と聞いた。すると、"僕たちもそこには行けないんだよ"と言う。つまり、検察に乗せられて政治家が法律をどんどん作っちゃって、自分たちの首を絞めているから。小沢一郎さんも政治資金報告書の記載ミスでやられて、党首を辞任しないといけないような状態になったし、元秘書の石川知裕さんも議員を辞めることになった。ほとんどの政治家は記載ミスをしているだろうし、検察に逆らえば、絶対にそこを突っ込まれる」。
また、ゴーン容疑者への捜査で取り沙汰されている「司法取引」についても「アメリカの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』という映画の主人公はめちゃくちゃなことをやっていたが、懲役2年6月で奇しくも僕と同じ。それは司法取引を使って減じられているから。"仲間を売れば無罪にしてやる"とまで言われるシーンまである。ところが日本の場合はそうではない。主犯だと目されているカルロス・ゴーンはこの司法取引を使えず、なされるがまま。部下たちが司法取引で証言したものが証拠採用され、有罪判決が出てしまう。実刑判決もあり得る。だから衆議院法務委員会の参考人として証言しに行って、"これはヤバい制度だ"と訴えた」。
さらに裁判所に対しても「公判はゴーン容疑者がサインをした・しないで揉めると思うが、最終的には裁判官がどう判断するか。ただ、日本の裁判官は基本的に保守的で、9割以上の確率で有罪判決を出すので"有罪判決製造機"と言われている。刑事事件の担当になった裁判官はずっと刑事事件で、民事事件はやらない。戦前は最高裁にあたる大審院検事局だったので、裁判所と一体だった。今も"判検交流"といって、裁判官と検察官の人事交流がある。推定無罪が原則で、有罪っぽいなと思ったとしても、その確実な証拠がない限り、本当は有罪判決を出してはいけないのに、有罪を出す癖がついてしまう。だから無罪判決を出すのにはものすごく勇気が要る。僕はそういうことについてもおかしいと言い続けてきた」と指摘した。
■「"あれはつながってるんですよ"って。怖いと思った」
ライブドア社長時代はプロ野球球団買収を計画、またフジテレビを傘下に収めることを見据えたニッポン放送株取得を進め話題となった。さらに亀井静香氏の対抗馬として衆院選に出馬、そんな中で発せられた「想定内(外)」という言葉は、2005年の流行語大賞も受賞した。一方、事件後はモデルとの熱愛や、政界を騒がせたものの後に捏造と判明したいわゆる“堀江メール”問題など、虚実入り交じった報道がなされた。係争中の2009年4月には、日本外国特派員協会での会見で「非常に悪いイメージが副次的なマスコミ報道でつけられているので、そういったイメージを払拭したい」とも訴えている。
堀江氏は「拘置所に閉じ込められて"記憶で話せ"と言われていると、自分に対して疑心暗鬼にってくる。"堀江メール"本当に捏造でびっくりしたし、"俺は絶対にこんなメールは送っていない"と思っていたが、"もしかして酔っ払って送ったのかな"と思ってしまったこともあった。新聞も読めないし、情報源はNHKのお昼のニュースくらいだったので、自分が何と言われてるかもわからなかった。でも、モデルとの熱愛はあったし(笑)、1万円の献金だって、自分で研究会の会費みたいなのに出しただけで何にも悪いことはしていない」と振り返り、「明治時代の日糖事件から変わっていない」という検察とマスコミの関係性についても批判した。
堀江氏の著書も手がけた幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は番組で「真実を追求して正しい報道をするというジャーナリズムの側面と、単純に部数を売るとか視聴率を取るという営利の側面とがごちゃ混ぜになっている。ライブドア事件の頃の報道をYouTubeなどで見ると、容疑と関係ないことばかり報じられていて、ぞっとする」と指摘している。
堀江氏も「特捜部の事件は検事が"これは面白そうだからやってみよう"って捜査を始めるが、ライブドアの時だって、フジテレビの報道の人とかと一緒に"この事件どうなの?なんかネタないの"ってやっていた。こないだも僕の知り合いが『週刊文春』前編集長の新谷学さんと居酒屋で飯を食ったら、隣の席に東京地検特捜部長がいて、仲良く談笑していたらしい。"あれはつながってるんですよ"って。怖いと思った。テレビ朝日だって大丈夫なのか」と話した。
視聴者からは「ゴーンさんも5年後、10年後には堀江さんのように本を出版して大復活するのだろうか?」との質問も寄せられた。実刑判決が確定した2011年6月、「人生をリセットして帰ってきたいと思う」と話して服役した堀江氏は「彼がどうしたいかだが、むしろそっちの方が活躍するかもしれない。金は持っているし、優秀だし、グローバルに活躍できるから、本も売れる。"日本はひどい国なんじゃねえか"みたいな話の時には必ず出てきて、言いたい放題言うのではないか。検察も"どうせお前、出てきたら活躍できるんだから3か月くらい入っとけ"みたいな、そんな感じのノリだろう」と答えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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