自民党と公明党は13日、来年度の税制改正で、未婚のひとり親への支援策について住民税の負担を軽減することで合意に至った。
配偶者の死亡や離婚でひとり親となった場合に、所得税や住民税を軽減する「寡婦控除」。公明党はこれまで除外されていた婚姻歴のないひとり親にも適用するよう求めていたのに対し、自民党は「未婚での出産を奨励することにつながる」「伝統的な家族観が崩れる」と慎重な姿勢を見せ、調整が難航していた。
未婚のひとり親への支援のあり方について、13日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』で「婚姻関係が基本で『家にお父さんとお母さんがいるのが社会的な理想です』と国が設定すると、そうでない家庭は理想的ではないということになりかねない。理想はひとつではなくて、いろいろな家族の形が模索されはじめている」と話した慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏。放送後、さらに家族のあり方について話を聞いた。
■「家庭という枠ではなく“家族”としての関係性を考えるべき」
寡婦控除をめぐって自民党が主張した「伝統的な家族観」について、若新氏は“イエ(家)”という概念に縛られているのだろうと話す。
「選択的夫婦別姓が進まないのもそうで、夫婦の関係性ではなくて“イエ”が大事だという根強い考え方がある。結婚のことも、みんなわざわざ『入籍』という。ひとり親という言い方も、“イエ”の中に親がひとりしかいないという数え方で、その概念がなければ、死別などの場合を除いて、子どもには親が2人いる。“イエ”に入っているかどうかで考えてしまうから『ひとり親』になるけど、それをもっと柔軟に、家族関係としての両親がいるかどうかと考えると、またちがって見えてくるのではないか。“お父さんがいない家の子”もそうで、“お父さんがいない子”とはあまり言わない。支援のあり方も、“イエ”単位で考えるのか、養育費を払ってくれている家族としての両親がいるのかで変わってくるし、家族の捉え方も柔軟にできるはず」
“イエ(家)=家庭”であり“家族”とは異なるとする若新氏。離婚後、どちらかが再婚した場合に「もう向こうの家の人だから」「お父さん・お母さんは他に家庭があるから」という言い方になりがちで、ここにはイエ(=家庭)という境界線があると指摘。「この家庭というものを一度柔軟に解体して、家族の結びつきに注目すべき。この観点で一番大事なのは子どもの成長や幸せ。一度“イエ”が破綻してしまったことでお父さんが家庭にはいなくなっても、家族としてのお父さんはいる。家庭という枠や線引きに縛られず、関係性を充実させる政策を国が取れば、多様な家族のあり方が議論される方向に向かっていくはず」と述べた。
さらに、「ドメスティック・バイオレンス(DV)」にも家庭の概念が含まれているだろうとし、「DVのことを“家族内暴力”とは言わない。家庭内になると『うちのイエではこう』と封建的になって、第三者が介入しづらくなる。クラスのイジメと一緒で、家庭という限定された空間があることによって、息苦しくなって暴力が生まれてしまうような場合は、家庭は解体するけど家族としては結びつきは残るような、家族の関係性を救っていく政策に持っていくべき」との見方を示した。
とはいえ、夫婦が家族として結びつきが残らない、残したくないようなパターンも存在する。その点について、若新氏は再度子どもの視点に立つことが重要だとし、「子どもにとって、両親が不仲になることと両親が誰かということは別の問題。子ども視点での家族は成り立つわけで、自民党の伝統的な家族観はやはり枠組みとしての『“イエ”を守りましょう』ということなんだと思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)