日本政府がクジラの資源管理について話し合うIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退を決定したことに対し、海外から「失望した」などの声が上がっている。
26日、菅官房長官がIWCの離脱を正式に発表。夜には取りまとめを担っているアメリカ政府にも通告したという。IWCの離脱によって、日本は2019年7月から日本の領海や排他的経済水域(EEZ)に限り商業捕鯨を再開する。なお、調査捕鯨の対象だった南極海や南半球では行わない方針だ。
戦後日本では盛んに商業捕鯨が行われ、クジラの肉は貴重なタンパク源として重宝されてきた。しかし、1982年、IWCは商業捕鯨の一時停止を採択。以降、日本は30年以上にわたって対話を続けてきたが、主張する「継続的な商業捕鯨」は認められていなかった。
日本のIWC脱退は異例であり、捕鯨に反対する国や団体から強い批判が相次いでいる。たびたび、日本の調査捕鯨船を妨害してきた反捕鯨団体「シー・シェパード」は「日本は捕鯨するノルウェーやアイスランドという、ならずもの国家のグループに加わることになる」と指摘。オーストラリアのペイン外相、プライス環境相の共同声明でも「日本には委員会(IWC)への復帰を優先するよう強く求める」と反発を強めている。
さらに、米メディアの『ニューヨーク・タイムズ』(26日付)では「日本国内ではクジラの肉が食用として一定の人気があったが、近年は消費量が大幅に減っている。国内の需要が減る中で、IWCから脱退することは国際世論への挑発的な行動である」と報道された。『ワシントン・ポスト』でも「今回の捕鯨の拠点に安倍総理らの選挙区が含まれている。今回のIWC離脱の決定に影響している可能性がある」と指摘した。
国内でも賛成や批判に分かれる中、AbemaTV『けやきヒルズ』に出演した慶應大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏はこう述べる。
「慎重にニュースを見ていけば、日本は『すごく鯨を獲りたい』わけではないことが分かる。IWCに入っていると、海洋資源に対するポリシーを他国と一緒に作ることになる。日本独自のルールとは別に国際的に決められてしまう。日本は海に囲まれた国だから、海の幸が獲れなくなったら、いろいろなものが立ち行かなくなる。海の幸をどれくらい獲って、どれくらい残していくのか。日本政府は自分たちでそれを考えたかったのでは」
近年は日本国内でも鯨肉の消費量が減っている。水産庁の統計を見ると、1990年頃から日常生活の中で、ほとんど食べる人がいなくなっている。
捕鯨をやめる前から、鯨肉消費が減少傾向にあった日本。もともと多くを消費しているわけではないのに、なぜ日本政府はIWC離脱にこだわったのか。政府の動きを若新氏はこう分析する。
「外務省の話では、IWCを抜けたからクジラを獲るのではなく、『クジラは獲らない』ということを自分たちの意思で決めたいんだということ。日本の海の幸をどう守るか、どう食べるかは島国の日本人は自分たちで考えていく。海の幸によって豊かになった国の主導権を渡さないために、IWCを離脱したのではないか」
日本政府は実際に捕鯨量を確保したいのではなく、プライドやアイデンティティによるものだと主張した若新氏。日本のIWC離脱によって、今後国際的にどのような軋轢が生まれるのか。目が離せないことになりそうだ。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)