終わりの見えない韓国海軍の艦艇による自衛隊機へのレーダー照射問題。日本では連日報道されているニュースだが、韓国国内の様子はそれとは少し異なっているのだという。
テレビ朝日の高橋政光ソウル支局長は「韓国にも右派メディアと左派メディアがあり、それぞれの論調がかなり異なっていて、どちらかというと左派・進歩系と言われている文在寅政権に対して普段は批判的なメディアも、今回の韓国政府の対応に肯定的だ。一方、日本側の対応については"安倍総理が問題を大きくしているといった"論調で一様に批判的。文在寅政権も発足から1年ほどが経ち、支持率も50%を切っているし、慰安婦財団の解散や徴用工訴訟の判決で日韓関係は悪化の一途をたどっているので、国民の声をさらに聞かざるを得ない状況にはなっている、ただ、日本での報道量に比べると、韓国の報道量は極めて少ない。韓国では日本が激しく報道している時ほど、報道の量が減ってしまうということはよくある。加えて今回の問題については専門的で技術的な内容も含まれているので、話を聞いても、"大したことがないのに勝手に騒いでいる""当時者同士が対応すればいい"と関心のない人が多い」と話す。
ソウル生まれで韓国の法律に詳しい日本大学准教授の金惠京氏は、年末年始を韓国で過ごし、8日に日本に戻った。金氏も「年末年始の韓国の報道は、北朝鮮や就職率の問題などに関するものが多かった。レーダー照射問題についても報道はされていたが、国民の反応は薄い」と話す。
「軍事や安全保障の問題はナショナリズムにつながりやすい問題でもあるし、自衛隊と韓国海軍との間の専門的な問題なので、一般人には判断が難しい。再発防止のためにどういうふうに両国で考えていくかが大事だ。どちらかが謝罪をしないといけないという話にまでなっているが、重要なのは再発防止だ。それなのに日本も韓国も、外交は世論と切り離して行うべきなのに、国民の流れを気にしながら動いているように感じる。そもそも文在寅政権について、日本では反日だと見られることが多いが、実はそうではない。朴槿恵元大統領とは対照的なリベラル派として、海外からの目線も重視しているのに、残念に感じている」。
作家の乙武洋匡氏は「再発防止の前に、まずは謝って欲しいというのが感情としては当たり前のこと。それがないままで再発防止の話はできない」とした上で、「Twitter上には"国交断絶でいい"といった意見もみられるが、それは本当に浅はかで危険な考えだ。政治家が国民の人気取りのためにそういう発言に耳を傾けてしまい、現実的ではない方向に進んでしまうことが怖い。他国への不満を燃え上がらせて、国内問題から国民の目をそらさせるというのは政治の常套手段だと思う。ただ、今回の問題について韓国国内ではあまり関心がないということは、国民も含め、分が悪いということを自覚しているからではないか。だから日本は国際的にはアピールしつつも、そこまで韓国を責め立て、やりこめる必要はないのではないか」と主張した。
スマートニュースメディア研究所の瀬尾傑所長も「レーダー照射問題が韓国国内であまり大きく報道されていないのは、他に大きな心配事があるからだ。文在寅政権は日本やアメリカとかなり距離を置いているし、在韓米軍の分担金をどうするのか、マティス国防長官が更迭されたので米軍が引き上げるかもしれないといった問題の関心は高い。また、"反日でいいのか。国民が損をするのではないか"といった冷静な議論も出てきている。政権がどうあれ、海上自衛隊はすごく冷静に対処している。国民も冷静にあるべきだ。たとえこの問題で双方の主張がすれ違ったままだとしても、結果としてはそれほど大きな問題ではないと思う。国際世論に向けて日本の主張をすることについては妥協すべきでないが、現実的な落とし所があると思うし、感情的になってストレスの発散を外交に求めることは控えるべき」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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