横綱審議委員会から史上初となる決議による「激励」を受けた横綱稀勢の里が、退路を断って初場所の土俵に臨む。今月7日に行われた横審稽古総見では大関豪栄道、横綱鶴竜を相手に6番を取り、鶴竜には上体を起こされ押し込まれる場面も目立ったが「動きは悪くない。攻めていた」と一定の手ごたえも。2日後の二所一門連合稽古では先場所敗れた貴景勝を指名し、9番を取り内容的にもかなり優勢で「いい状態だと思います」と順調な仕上がりぶりを伺わせた。対戦相手は初日が小結御嶽海、2日目が逸ノ城と発表された。力士人生の土俵際に立つ横綱だが、序盤を無難に乗り切ればいい方向へ転がることだろう。
白鵬、鶴竜の両横綱は準備万端のようだがともに休場明けだけに、立ち上がりがカギとなりそうだ。前場所優勝の新関脇貴景勝は3横綱が出揃う今場所で、真価が問われることになる。稽古総見では白鵬に全く歯が立たなかったが、本場所ではあれほど簡単に廻しを取られることはないはずだ。何か秘策があるようでならない。小結御嶽海も同様だ。稽古場の相撲ぶりを真に受けてはいけない。
昨年は栃ノ心、御嶽海、貴景勝と初優勝が3人も出たが、こうした現象はとりもなおさず世代交代が確実に進行している証し。他の若手も刺激を受けないはずはなく、今年はさらに拍車がかかるに違いない。
初場所は優勝争い以上に稀勢の里の一挙手一投足に注目が集まりそうだ。振り返ってみると、手負いの身ながら強行出場した2年前の春場所は、千秋楽で照ノ富士に本割、決定戦で連勝して感動の逆転優勝を果たした。8場所連続休場で進退を懸けることになった昨年秋場所は、予想だにしなかった2ケタ勝利。絶体絶命の窮地に立たされると信じられない力を発揮し、奇跡を呼ぶのがこの横綱なのである。やはり期待しないわけにはいかない。
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