UAEで行われているアジアカップを戦っている日本代表。ロシアW杯を終えておよそ半年が経過しその顔ぶれは大きく変わった。森保一監督の下、新生・日本代表は大きく若返り、ロシアW杯時には平均年齢28.3歳と高めだったが、現在は平均年齢は26.6歳にまで下がっている。
若手中心となった代表チームだが、それでも変わらずに招集されているベテランの1人に長友佑都がいる。過去3大会のW杯に出場した、経験豊富なサイドバックは今もなおそのポジションを自分のものとしている。
ベテランだからこその“生かし、生かされる”プレー
長友といえば一対一の強さ、激しいアップダウンを繰り返す運動量がフォーカスされる。しかし、左サイドハーフの選手に気持ちよくプレーさせる動きができる点も彼の武器だろう。南アフリカW杯では大久保嘉人、ブラジルW杯では香川真司、ロシアW杯では乾貴士と縦関係を築いて、彼らが中央寄りにポジションを取れば大外をオーバーラップ。逆に、サイドへと張り出せばカットインするなど攻撃に厚みをもたらすことができる。
こうした“味方を生かしながら自分も生かされる”動きは誰もができるものではなく、やはりそこには経験が大きく左右する。こうした長友のような献身性をピッチで体現できる選手がFリーグにいる。それがシュライカー大阪を支える小曽戸允哉だ。
2シーズン前の2016/2017シーズン、大阪はヴィニシウス(43ゴール/得点ランキング1位)、チアゴ(37ゴール/得点ランキング2位)、アルトゥール(33ゴール/得点ランキング3位)の魅惑のブラジル人トリオが得点を量産。Fリーグ記録となる年間186ゴールという破壊的な攻撃力を武器に、名古屋オーシャンズの10連覇を阻んで初めてリーグタイトルを手にした。
これだけ圧倒的な攻撃力を見せつけたシーズンだったが、MVPに輝いたのは小曽戸だった。
「パフォーマンスを考えても、アルトゥールが受賞するものだと思っていました」と謙遜するが、交代が自由なフットサルの中で誰とピッチに立っても一定のパフォーマンスを発揮し、味方のパフォーマンスを引き出す小曽戸がいたからこそ、ヴィニシウス、チアゴ、アルトゥールも自分の仕事に集中できたのだろう。
特に、このシーズンはどのチームも「チアゴ-アルトゥールライン」という、大阪の強力な武器をどのように封じ込めるかに躍起になっていた。その2人の関係に小曽戸が3人目の動きとして絡むことで、自身も得点ランキング6位となる26ゴールを奪うなど、もはや相手にとっては手のつけようがないほどの攻撃力となっていた。
そんな献身性を見せる小曽戸だが、当然最初から味方を生かすプレーをしていたわけではない。むしろフットサル界の流行語となった「オソドリブル」と呼ばれるドリブルを武器に1人で試合を決めてしまうような選手だった。
しかし2度のフットサルW杯出場や、強力なブラジル人トリオがいる大阪への加入などを経て小曽戸のプレーは大きく変わり、今のようなスタイルへと変貌。個性豊かな選手が多い大阪だからこそ、そのキャラクターを生かすことができる小曽戸は欠かせない選手となっている。
そんな大阪は今シーズン、チームを優勝に導いた木暮賢一郎監督が退任し比嘉リカルド新監督が就任。小曽戸は新生・大阪のキャプテンを任され、これまでのようにプレーで示すだけでなく、ピッチ外で精神的支柱としての役割も求められている。
小曽戸キャプテンに率いられて大阪は、リーグ1位こそ無敗を続ける名古屋に奪われたものの、プレーオフ圏内の2位をキープ。20日に行われる次節のFリーグ選抜戦に勝利するとプレーオフ出場が決まる。
2シーズンぶりのリーグタイトル奪還に向けて、チームを操る小曽戸の生かし生かされるプレーに注目だ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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