「未踏峰」――それは未だかつて誰も頂上まで登ったことがない“未知の山”。
南米大陸最高峰「アコンカグア」の登頂を目指していた冒険家の三浦雄一郎さんが、ドクターストップのため登頂を断念したというニュースが報じられた。彼らはなぜ、命の危険が伴う登山に挑むのか。AbemaTV『AbemaMorning』は、去年秋にヒマラヤの未踏峰に挑んだ青山学院大学山岳部を取材した。
ネパール東部のヒマラヤ山脈にある未踏峰、標高6960mの「ホワイトウェイブ」。挑んだのは、青山学院大学山岳部の村上正幸監督と田口純也主将(4年)、池田昴史隊員(4年)、杉本俊太主務(3年)、松原峻彦隊員(2年)の5人だ。
未踏峰への挑戦について田口さんは「未踏の地は道がなくて誰も行ったことがない。富士山も最初は誰も行ったことがなかったけど、誰かが道を作った。そういう“道を作る”ことに自分は憧れて、誰もやったことのないことをやってみたいという気持ちがある」と話す。
登山ルートの計画やトレーニング、支援者からの資金集めなどの準備期間に約3年をかけ2018年9月、5人は日本を出発しネパールへ。首都・カトマンズで登山をサポートしてくれる現地スタッフと合流したら、まずは登山のスタート地点までバスで移動。入山許可の手続きを済ませ、大量の荷物を乗せて出発する。
「活気があります。ワクワクしてきました」「エンジン音が気持ちを奮い立たせます」
2日間のバス移動を経て到着したのは、ネパール東部にある標高1820mの村・タプレジュン。ここから本格的な山登りが始まるが、最初に目指すのは登山の拠点となるベースキャンプ。標高4700m地点を歩いて目指す。
山登りを始めて7日目、標高4050mにある村・カンバチェンに到着。カラスの大群に「まさか(標高)4000mにこんなに生物の営みを感じるとは思っていませんでした」。
その2日後、登山9日目でベースキャンプに到着。「標高5000m、6000mとなってくると空気の薄さが3分の1とかなので、ずっとマラソンしているみたいに心臓がドキドキする。酸素が少ないと頭が痛くなって、調子が悪くなって、吐き気もしてくる」と村上さん。
このベースキャンプからの道のりが、過酷な挑戦の本当の始まりだ。第2、第3の拠点を設営し、少しずつ登頂を目指す。
標高5200mに設営した第2の拠点・アドバンスドベースキャンプに到着。隊員の池田さんと松原さんの登山計画はここまでで、残る3人のメンバーで未踏峰に挑む。ところが杉本さんに異変が。
「もはや山ではありません。俺が知っている山じゃないです。めちゃめちゃ辛い。砂糖(の味が)つらい」
杉本さんに高山病の症状が出てしまい、食事を摂ることも困難に。数日間この状態が続き、杉本さんは下山を決めた。「自分としてはそれなりにトレーニングも積んできているし準備もしてきたはずなのに、こんなところでダメになっちゃったりするんだなと。最後のアタックに挑戦することすらできなかったというのは悔しかった。それが一番つらかった」。
さらに、足を滑らせた際に田口さんが手を負傷。「これ以上先に進むのは危険」と自ら判断した。「頂上を目指して何日間も何年もかけてやってきたことが、その時の状況や雪の状態を見て、『帰ろう』っていう決断をした瞬間が一番つらかった」。
未踏峰への挑戦は、監督の村上さんに託される。標高6000m付近になると、気温はマイナス15度近くに。辺り一面は氷河の世界だ。ガイド2人と登山を続ける村上さん。氷河の深い割れ目「クレバス」に落ちないように1歩ずつ慎重に進む。
そして、標高6200mを超えたところで足場はかなり劣悪な環境に。「この先の登山ルートは命を落とす危険がある」と判断し、山頂アタックを断念した。
メンバーの元に戻り「ごめんなさい!今回の遠征の計画、全部僕の計算ミス」と謝った村上さん。「これ以上進まないと決める時のあの一瞬は今でも悔しいし、一番つらかった。他のつらさはなくて、その一点だけ。僕の命だけでなく、学生の命もすべてを安全に日本に帰ってくる。そこまでしないと遠征にならないので」と振り返った。
今回の遠征は失敗してしまったが、未踏峰への挑戦で得たものとは。
「失敗したんですけど、挑戦することの大切さを学んだので、山に限らずどんどん自分の限界を広げていきたいと思います」(田口さん)
「遠いところにしか感じられなかったものを実現できたっていう経験は、自信につながると思う。今の僕にとっては、夢に思えることでもできるのかもしれないって少し思える気がします」(杉本さん)
今回、村上さん、田口さん、杉本さんの3人を取材したテレビ朝日の田中萌アナウンサーは「準備を始めた3年前と挑戦を終えた後で生徒たちの顔つきが変化していたというのが一番大きなことだと監督は言っていた」と紹介。青春時代を登山に捧げた大学生の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
(AbemaTV/『AbemaMorning』より)















