国民を欺く“統計のウソ” 知らないと怖い“統計トリック”を専門家が解説
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 厚生労働省による毎月勤労統計の不正問題で、国民の国へ対する不信感が高まっている。

 25日、毎月勤労統計の不正問題に加え、22の基幹統計でもミスが明るみになった問題について、自民党の厚生労働部会長を務める小泉進次郎氏が「もしも調査に時間が必要だったらそう言うべき。出します出しますと言って出さないとか、急いで出した結果さらなる疑念を招くとか、こういったことはやめてほしい」と発言。さらに同日、弁護士などでつくる特別監察委員会が厚労省幹部に行った調査の内容として「半数近くが身内による調査だったことが判明した」と発表したことで、国に対する国民の不信感が高まるばかりだ。しかし、これらの不正が国民に与える影響は、一体どのようなものなのだろうか。詳しいことはあまり知られていないのが実態ではないだろうか。

 毎月勤労統計とは企業の雇用状態や給与、労働時間を調べたデータのことで、その数値が労災や失業手当などを支払う際の金額を決める指標となっている。退職前の6カ月の給料の額によって決まる失業手当でいえば、勤労統計が低く算出されることで、失業手当に加算されるお金も低くなってしまう。今回の不正問題において、その影響を受けている国民は「6人に1人」いるとされている。再集計の結果、0.2%~1.2%の賃金上昇と修正されたことを受け、その分は政府が補填すると対応策が発表された。

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 27日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』に出演した文筆家の古谷経衡氏(36)は「国の根幹、国の形を揺るがす大問題だ」と批判すると、「国の出す統計には誤りが無かろうということで、それをもとに文章を書くことがある。それが間違っているということになれば、どうやって政策を作ったらいいのか、どうやって僕の本を書いたらいいのか」と述べると、東大卒の元日経新聞記者で現在は社会学者として活動する鈴木涼美氏(35)は「勤労統計は景気回復の指標にもなっている。安倍政権の支持者はアベノミクスが成功しているから、多少他で問題があっても“基本的にはうまくいっている”ということで支持している部分もある。それが誤りということになれば、安倍政権の支持基盤を揺るがす大きな問題になる」と続いた。

 渦中に置かれた役人の立場を勘案し、歴代政治家、さらに現・最大与党の責任について言及したのは、元長野県知事で作家の田中康夫氏(62)だ。田中氏は「(毎月勤労統計は)2004年だから、小泉純一郎氏と竹中平蔵氏の頃に始まったこと。役人の一存では、今までの調査方法を変えることはできない。もう一つ大きなことは、アベノミクスは素晴らしいと言っていた人たちは、(データが嘘だと指摘してきた)韓国や中国をバカにできなくなる。我が身を見ろとなる深刻な話。にもかかわらず、政務三役が給与を下げ、現場の役人が処分された程度にとどまっている。それに対して、連立政権を組む公明党の山口那津男代表が歴代の政治家に遡って調べなければ国民の信頼回復はできないと仰ったことは凄いこと。与党の一番大きな政党はその声に応えないといけない」と私見を述べた。

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 一連の話を受け、「現場の統計に対するリテラシーの低さが大問題」と語ったのは、統計学の専門家で江戸川大学客員教授の鳥越規央氏(49)。鳥越氏は「予算や人員が足りない、時間がないということを理由に全数調査すべきところを抜き取り調査で済ませた。それならまだしも、抜き取り調査を全数調査に見せかける補正も行っていなかった。2年前もそうだが、調査方法が変われば、数字も大きく変わる。専門家が見れば一目瞭然だが、抜き取り調査への変更を公表しなかったことが問題。自民党の国会対策委員長を務める森山裕さんが『全然、大した問題じゃない』と発言したことが、現場の空気を示している」と糾弾。その上で鳥越氏は、「統計のウソ」と題して意外と知られていない“統計トリック”を解説した。

 1つ目は「基準のトリック」。「大学の就職率9割以上」を例に挙げた鳥越氏は、分母にトリックがあると解説した。「誰のうち9割なのかが問題。その年に卒業した大学生のうちの9割ということではなく、一般企業に就職したい人がその対象になる」といい、大学院への進学や公務員、スポーツ選手、自由業、さらに就職の意思がない人は除くと続けた。

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 鳥越氏によると、食料自給率にも基準のトリックが当てはまるという。日本の食料自給率はカロリーベースになっており、平成29年度では38%となる。しかし世界各国を見た場合、カロリーベースで発表しているところは日本のみとなり、生産額ベースでの発表が一般的。その生産額ベースでは日本は65%となり、ヨーロッパ各国との差異は少ない。農林水産省による「日本の食料自給率を上げなければ」というフレーズはよく耳にするが、それはあくまでも基準のトリックに基づけばの話。農林水産省が予算を獲得するためのデータとして用いられていると主張した。

 この説明を聞いてMCを務める千原ジュニアが「あぁ~」と唸り声を上げると、田中氏は「自給率を上げるためではない農業・工業事業に予算がいっているため、真面目に働いている農家には行き届いていない」と実態を明かした。

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 2つ目は「グラフのトリック」。その例に「少年犯罪件数」を挙げた鳥越氏は、そもそものベースの数字設定によって見え方が大きく異なると説明。1550件をベースにしたグラフを、ゼロ件をベースにしたグラフに置き換えてみせると、近年急増していたかに見えた少年犯罪件数は“ほぼ横ばい”に。あまりの印象の違いに出演者から「これはトリックだ」との声もあがったが、元新聞記者の鈴木氏の主張は「新聞社ではよくやります」だった。鈴木氏は「記事につける小さなグラフをデザイン部に発注する際、数値が大きく下がっているように見えるグラフを作ってくださいと発注したりします」と説明を加えた。近年では少年犯罪件数は減っているというが、元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三(42)氏は、「少子化によって分母が減っている。人口割合を考えると、減っているとは言い難い」と複雑な心境を明かした。

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 最後が「人の心が生み出すサバ読みのトリック」。平成24年度の学校保健統計調査における高校3年生(17歳)男子の身長データを例に挙げた鳥越氏は、一カ所だけ落ち込みのあるグラフを指すと「生物学上、グラフは曲線になっていなければならないが、169cmの部分はへこんでいる。これは先生や生徒による四捨五入で生まれるサバ読みの結果。身長が170cmなのか169cmなのかで気持ち的に違ってきますからね」と話すと、食料自給率や犯罪発生件数とは異なる微笑ましいサバ読みのトリックに、出演者一同、笑みを浮かべていた。

(C)AbemaTV


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