アジアカップを戦う日本代表は、サウジアラビアやベトナム、イランとの厳しい戦いを幾度となく潜り抜け、2月1日の今日、いよいよカタールとの決勝戦を迎える。サッカー日本代表のアジアの頂点へのチャレンジは今回で5回目だが、現在のメンバーで優勝経験者は吉田麻也と長友佑都、権田修一の3人だけ。“新生・森保ジャパン”は、この大一番にどんなメンタリティーで臨むべきなのだろうか。
競技は違っても、優勝を懸けた戦いに臨む「決勝」には、同じように重圧があるもの。フットサルでリーグ戦10回、カップ戦11回、アジアクラブ選手権で3回の優勝経験を誇る“絶対王者”名古屋オーシャンズも今シーズンのリーグ戦で1位となり、11回目のリーグ制覇を懸けたプレーオフに臨もうとしている。
タイトルを総なめにしてきたクラブは、これまでどうやって決勝を戦ってきたのか。昨シーズン、フットサルで世界最高峰のスペインリーグから名古屋にカムバックした吉川智貴に“優勝の極意”を聞いた。
世界最高峰の舞台で初の日本人になった男の言葉
「自分たちが今までやってきたことをさらに磨いていくことが一番」
“世界を知る男”吉川は、優勝を決める戦いに向かう心得を、端的にそう表現する。プレーオフ決勝は、リーグ戦のアドバンテージがほとんど加味されない2試合で決する勝負。当たり前だが、負けは許されない。
「プレーオフ決勝はリーグ戦とはまったく違う試合になります。どれだけ自分たちを信じられるか。今まで1年間やってきたことをどれだけ信じて、自信を持ってプレーできるかが鍵だと思います」
彼が話した「さらに磨く」とは「自信を持ってプレーする」と言い換えられる。
吉川はかつてスペインのマグナ・グルペアに所属して、2017年にコパ・デル・レイ(国王杯)の準決勝で強豪・FCバルセロナを下してファイナルに進んだ。決勝戦ではエルポソ・ムルシアに1-2で敗れ、あと一歩のところで優勝に手が届かなかったが、日本人選手として未踏の地に踏み込んだ。
マグナ・グルペアは、バルサやエルポソのようなビッグクラブではなく、優勝争いに加わることのない中堅以下のチームだったが、そのチームを変えたのは、紛れもなく吉川だった。2016年、岡崎慎司を擁してプレミアリーグを制したレスターの偉業は“歴史的快挙”といわれたが、その奇跡的な出来事は決してまぐれではなく、幸運を引き寄せる実力が伴った結果、着実に積み重ねてきたものが花開いてたどり着けたもの。
つまり吉川の経験から学ぶことは「幸運を手にするためにどこまで準備できるか」に尽きるだろう。
名古屋の史上2回目となる無敗優勝まであとリーグ戦2試合と、プレーオフ決勝の2試合の計4試合(2012シーズンに達成した最初の無敗優勝も名古屋だった)に迫っている。吉川は昨年12月に「正直、ほぼほぼ不可能なことだとは思っています」と苦笑いしたが、その裏ではきっと、愚直に準備を続けたに違いない。「ほぼほぼ不可能」は今、“ほぼほぼ達成されそう”なところまできているのだ。
勢いを失うことなく、自分たちがやってきたことに自信を持って、最後の最後まで準備してその時を待つ。それは、年間のリーグ戦の末にたどり着くものであっても、一発勝負のカップ戦であっても、団体競技や個人競技でさえもきっと、変わることのない「優勝への方程式」だ。
名古屋は11回目のリーグ王者へ、サッカー日本代表は5回目のアジア王者へ。決して同列の話ではないが、とはいえ掛け離れた戦いでもない。自分たちを信じて磨き上げられたチームだけが、頂点に立つ――。
文・舞野隼大(SAL編集部)
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