アジアの頂点まであと一つ。森保ジャパンはアジアカップの7試合目、ファイナルに挑む。
アジア最強との呼び声が高かったイランとの準決勝は、大迫勇也の先制点を皮切りに、PKによる2点目、原口元気がダメ押しの3点目と3-0で完勝した。準決勝までは5試合すべてが1点差と苦しみを味わっただけに、イラン戦は結果・内容の両方で大きな自信になったのは間違いない。
決勝戦の前日会見で森保一監督は「1試合1試合チームとしてステップアップしながら決勝にたどり着いた。これまでやってきたことを決勝の舞台で思い切り出してほしい」とコメント。
決勝の相手となるカタールは、準決勝まで6試合16得点と破竹の勢いで勝ち上がってきた。準々決勝ではプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーで大活躍中のソン・フンミン擁する韓国を撃破し、準決勝では元日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督が率いるホスト国UAEを4-0で一蹴。
ホームでもある準決勝の対戦相手UAEとは国交断絶中ということもあって、試合前の国歌斉唱ではブーイングが浴びせられ、試合中もスタンドからペットボトルが投げつけられる完全アウェーとなった。そんな異様な雰囲気の中でもカタールの選手たちはふてぶてしいまでの落ち着きでゴールを揺らした。
2022年のW杯開催を控えるカタールは、国家をあげてサッカーを強化してきた。育成期間の「アスパイア・アカデミー」は最新型の設備に加えて学校も完備。優秀な才能を持った選手がサッカーに打ち込める環境が整っている。
スペイン人のフェリックス・サンチェス監督は、バルセロナのカンテラ(下部組織)の指導者を経て、2006年から「アスパイア・アカデミー」にディレクターとして招かれた。各年代の代表チームを率いてきており、多くの選手が教え子にあたる。
中東といえば引いて守ってカウンターを仕掛けてくるというイメージが強いが、カタールに関しては当てはまらない。ボールを持って押し込むこともできるし、守りでもチーム全体で連動したプレスをかけてくる。それこそが、強豪国を撃破した最大の要因といっていい。
「アジアの人たちにとって我々の決勝進出はサプライズだったかもしれないが、カタールのレベルは高くなっている」
日本との決勝戦を控えたサンチェス監督が胸を張ったように、決勝トーナメントでイラク、韓国、UAEと強豪国を撃破してきたカタールの実力は決して侮れない。
躍進を影から支えているのが、元バルセロナ&スペイン代表のシャビだ。2015年からカタールリーグのアルサッドでプレーする名MFは、「アスパイア・アカデミー」の指導にも関わっている。「バルサの頭脳」と呼ばれるほどの頭脳を持ったシャビからの直接指導は、カタールの選手に大きな影響を与えているだろう。
日本が最も警戒すべきは、19番、10番、11番の3トップだ。
19番のアルモエズ・アリは、今大会すでに8ゴールを挙げて得点王が確実視される。UAEとの準決勝で見せた、左45度からカーブをかけて打ったシュートは、GKがまったく反応できないほどの強烈な弾道だった。
今大会で8アシストを記録している11番のアクラム・アフィフは、サイドでボールを持てば積極的に勝負を仕掛け、10番のハッサン・アル・ハイドゥースは広い視野と正確なパスでチャンスを演出する。
ちなみに、シャビは大会前にカタールのテレビ局でアジアカップの予想を行なって、決勝カードは「日本vsカタール」と見事に的中させており、決勝ではカタールが勝つだろうと予想している。
「チームとして優勝をつかみとり、トロフィーを掲げたい」(森保監督)
果たして、森保ジャパンは天才MFシャビの予想を覆し、アジア王者のトロフィーを掲げることはできるか。
文・北健一郎(SAL編集部)