(佐々木の攻撃ぶりも遠慮なし。トペで頭から突っ込み、自分ごと竹下を場外のテーブルに叩き落とした)
2月17日、両国国技館で開催されたDDTのビッグマッチで、竹下幸之介がトップの座に返り咲いた。
メインイベントのKO-D無差別級選手権。竹下は王者・佐々木大輔に挑戦した。昨年春の王座陥落以来となるKO-D無差別級王座戦だ。
竹下にとって3度目の戴冠を目指しての一戦。しかし過去の王者時代とは大きな変貌を遂げていた。王者としての責任からいったん離れたことで、より幅広い対戦相手と自由な発想で闘うようになっていたのだ。6人タッグ選手権では挑戦者に里村明衣子率いるセンダイガールズプロレスリングを指名。ユニット「ALL OUT」入りしたルーキー・飯野雄貴を(リングでもインタビュースペースでも)コントロールする姿でも楽しませてくれた。
その一方で新技・ファブルを開発してリーグ戦「D王グランプリ」で優勝。決勝ではプロレスリング・ノアの潮崎豪から3カウントを奪っている。年が明けると6人タッグ王座戦でCIMAにリベンジ。2.17両国のリングに上がったのは、キャリアの中で最高の状態の竹下幸之介だったと言っていい。タイトルマッチの最中には、ベルトのない“フリーバード”期に強化された発想力に、前回王者だった時の非情さも発揮された。打たれ強さとインサイドワークにも長けた王者・佐々木に、驚くほど激しい攻撃を叩き込んでいったのだ。
(コーナーで抱え上げ、そのまま垂直落下。決着のタイムは32分8秒だった)
試合序盤、トペ・スイシーダを放ってきた佐々木を場外で受け止めると、そのままブレーンバスター。しかもエプロンの角に叩きつける強烈な一撃だ。ファブルからクロスアーム式ジャーマンでのフィニッシュの前には、コーナーからの雪崩式垂直落下ブレーンバスターという超荒技を見せている。
これはデビュー戦で闘ったエル・ジェネリコの必殺技をアレンジしたものだろう。加えて、師匠とも兄貴分とも言えるアントーニオ本多(前日のマッスル両国大会でメインに登場していた)の得意技・バイオニックエルボーも久々に披露。レスラーとしての歴史すべてをぶつけての勝利でもあった。見る人間によっては“文化系プロレス”DDTのイメージを覆されるような攻防だったかもしれない。その激しさ、非情さについて、竹下は一夜明け会見でこう語っている。
「DDTだからとナメられたくない。俺たちのプロレスをナメられたくないというのは(自分と佐々木の)共通認識として少なからずあったんじゃないか」
敗れた佐々木の株も、決して落ちてはいない。竹下とここまでの闘いができるのは、ごくわずかな選手だけではないか。4月に開催されるDDT初のニューヨーク大会では、両者のノンタイトルでのシングルマッチが決まっている。団体としても「竹下vs佐々木」に絶対な信頼を寄せているのだ。
(3度目のKO-D無差別戴冠を果たした竹下。これからDDTをどう引っ張っていくか)
「今の俺と竹下じゃなく、デビューしたばかりの高校生の頃の竹下と俺が闘ってるみたいだった」
佐々木は試合後、そう語っている。成長を遂げた竹下だが、結果として無心にプロレスにのめり込んでいたということか。試合後のインタビューでは「自信がついたとか、そういうことじゃない。負けると思った瞬間は一度もなかった」と竹下。DDTの絶対的トップであるからこそ、「このベルトをかけていろんな選手と対戦したい」と言う。3度目の戴冠で実現させたいのは地方大会、他団体の選手との防衛戦だ。その希望がかない、3.31福岡大会でWRESTLE-1の黒潮“イケメン”二郎と対戦することになった。DDTの新時代を築いていくチャンピオンにふさわしい相手との、見逃せない闘いだ。
文・橋本宗洋
写真:(C)DDTプロレスリング
(C)AbemaTV





