世界人口の1~8%程度と存在するといわれているが、セクシュアルマイノリティの中でも認知度の高くない「Asexual(アセクシュアル)」。ジェンダーやセクシュアリティについて研究している東京大学大学院の清水晶子教授によると、「性的に誰かに惹きつけられることがない」人を指し、さらに恋愛感情を持つ非性愛と、恋愛感情を持たない無性愛とに分類ができるという。
アセクシャルの当事者からの相談も受けているという結婚相談所「カラーズ」代表の中村光沙氏は、性的欲求が少なく、恋愛に関して受動的ないわゆる「草食系」や「面倒くさいから恋愛しない」というようなタイプとは違うものだと指摘。「セクシュアリティというのは潜在的に持っているもので、それが表に出るか出ないか。面倒くさいといった理由の場合はアセクシュアルには該当しない」と話す。28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんなアセクシュアルについて当事者を交えて議論した。
■友達や親に相談することもできないまま…
当事者の酒井さん(33歳男性、仮名)がアセクシュアルを自認したのはつい最近のこと。これまでに一度も性的欲求を抱いたことはなく、恋愛感情を持ったこともないという。学生時代には彼女を作ってはみたが、それも"好きだから"ではなく、「彼女とそういうことをしたとかいう話を聞いていると、自分もやらなきゃいけないのかなという感情の方が強かったからだと思う」。しかし、結局はストレスを感じ、最終的には十二指腸潰瘍で入院。「一緒にいたくないと思ってしまって、自分から別れを切り出した」。
とはいえ、性欲そのものがないわけではなく、「一人で処理することはある」と話す。周りの人にはなかなか理解してもらえず、友達や親に相談することもできないままだ。「10年、20年後のことも考えたりするが、今と同じだと思うし、隣に誰かがいるということは考えたことはない」。
■モデル・こんどうようぢ「手をつなぎたい、キスしたいとは思うが、その先は別に…」
「恋愛にセックスは必要ない」と公言、話題になったモデルのこんどうようぢは、恋愛感情を持つ非性愛タイプのようだ。「セックスは子どもを作るための行為なので、恋愛には必ずしも必要ないと考えている。「セックスをしないと女性に"なんでしてくれないの?"と言われてしまうと思うし、そうなるとしっかり愛してあげられない。だから人をすぐ好きになってしまう方ではあるが、諦める事が多く、付き合うまでいかない。人生でまだ付き合ったことはないし、ずっと片思い。手をつなぎたい、キスしたいとは思うが、その先は別に…」と話す。一方、「溜めすぎる良くないと思うので、その目的で」と、性的欲求とは無関係に自慰行為を行うこともあると話した。
アセクシュアルであることを両親は認識しているという。「"孫は諦めている"と言われた。不安になっていると思う。でも自分は子どもはほしいと思っている」。また、周囲との接し方について「周りに変なやつだと思われても悩まないし、普通に接してくれるのが一番楽。でも友達は僕と話をするときには下ネタを避けてくれたりする」と語った。
■恋愛感情はなかったものの結婚、円満な家庭生活
酒井さんとは異なるタイプのアセクシュアル、斎藤さん(仮名)。自分には他の人とは違う部分があると感じたのは10代の頃。「友人がいわゆる恋バナをしていた時に、イマイチよく分からないなと」。恋愛ドラマや漫画についても、「チンプンカンプンというかファンタジー。もう別世界のモノとして感じているので自分とは別のモノとして楽しんでいる」と話す。
ただ、異性に対し全く興味がないというわけではなく、かっこいいと思うことはあるが、それ以上の感情が生まれたことがなく、恋愛にも発展しないだけだという。「世間の常識を受け入れた方が良いのだろうか」という考えから、好意を抱いてくれた人と付き合ったことも何度かあったという。それでも新たな感情が芽生えることはなかった。相手の触れ合いも「別に苦痛って程でもないけど、あえてそうしたいかというと違うかなって感じ。自分からしたいなとは思わないし、相手がしたいからしょうがないかなと。性行為についても、別に嫌悪するって程ヤダっていうわけでもないけど、積極的にしたいわけではない」。
そんな斎藤さんだが、実は円満な結婚生活を送っている。恋愛感情はなかったものの、価値観が同じで人として尊敬できる相手だと感じ、"ずっと一緒にいられると思って"結婚した。人間として非常に好きなのは確かだが、それが恋愛感情なのかどうかは今も判別できない。夫は「恋愛感情がなくても構わない。人間として好きなので、そういう部分は伝えたからそれでいいと言ってくれた」と明かした。
■生きづらさを抱え…理解の進まない現状も
斎藤さんのようなケースについて中村氏は「恋愛感情や性的欲求がない者同士が婚姻関係を結ぶ結婚もある。ただ、斎藤さんのように自然な出会いで自身を受け入れてくれるパートナーを見つけられるのは稀なことだと思う」と話す。
「婚活をした時に初めて分かるというケースも多い。それまでは友達に相談しても"そんなことないよ、運命の人と出会ったら絶対好きになるよ』と押し付けられて生きてきている"と気づく。やはり誰かと付き合っていなかったら"誰も相手いないの?"と言われてしまい、なかなか理解をしてもらえなかったり、交際していてもすぐに別れてしまうケースも多い。私のところに相談に来るアセクシュアルの方々の中には、子どもは欲しいけれど、性行為が絶対にできないという人もいる。そういうふうに、アセクシャルの方は色々な面で生きづらさを抱えている」と話していた。
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