大相撲・大阪場所が3月10日に初日を迎える。今場所、無事に初日を終えたいと思っているだろう力士の一人が、前頭九枚目・勢(伊勢ノ海)だ。先場所は初日、輝(高田川)との取組で、右目の上をぱっくりと割り、7針を縫うけがを負った。「すぐに縫ってもらったんですが、夜中の1時、2時まで血が止まらなくて…いつまで出るんだろうという怖さはありましたね」と、その“大出血”劇を振り返った。
初場所・初日の取組後、勢の右目付近は血で真っ赤に染まった。「自分でも相撲を取っている時は鼻血かなと思っていたんですが、目の上がぱっくり開いていて…」。その後、すぐに縫合し、ガーゼやタオルで押さえたものの、なかなか止血しなかった。「タオルで頭を縛りながら寝ましたね。朝には止まっていました」。力士でなければ、これでひと安心といったところだが、勢はあと14日間、土俵に上がる必要があった。「相撲を取り終えたら、血が出続けるという状態で、ちょっとビビりましたね。(大きな絆創膏を)貼ってもすぐにはがれるし、菌が入るのを防ぐためにやっているだけなので」と、一番取ってはまた出血、という日々を繰り返していたという。「毎日治療しながらですが、千秋楽まで取り切れてよかったです」と、休場しなかっただけでなく、9勝6敗と勝ち越したのだから見事だ。
出血だけでなく、取組中にも影響はあった。「目がぼやけて、霞んでしまって、相手が見えないのが一番辛かったですね。3日ぐらいは、あんまり見えてなかったです」。ただそれでも足、膝などを痛めで動けないわけではない。「けがのうちに入らない」と優しい口調ながら、強い精神力をのぞかせた。現在32歳。力士としては若い年齢でもなくなり、疲労の抜けも悪くなった。それでも「歳とともに体は変わってくるものですから。みなさん一緒です」と言い訳もしない。むしろ地元である大阪場所で、大きな声援を受けれることが「一番力になりますね」と楽しみにしている。
老け込むつもりも、まるでない。先場所は自分より年上の34歳・玉鷲が初優勝を果たした。「やるからには上を目指さないと。玉鷲関が34歳で優勝して、すごいなと思って見ていました。僕もまだまだ頑張っていきたいと思います」と意気込んだ。右目の上には、くっきりと傷跡が残るが、地元で白星を積み重ねれば、名誉の負傷としてファンの記憶に残るはずだ。
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