1月に東京・両国国技館で行われた大相撲初場所を13勝2敗の成績で制し、(当時)34歳2カ月で史上2番目となる高齢での初賜杯を手にした関脇の玉鷲(片男波)。10日からエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育館)で行われる大相撲三月場所を前に取材に応じ、初場所で優勝をグッと手繰り寄せた十二日目の対横綱・白鵬(宮城野)との一番の裏話。さらに2004年の初土俵以来、15年間休まず土俵に上がり続ける“角界の鉄人”ならではの相撲愛を語った。
「アイツやっちゃったの!?」
それは本人曰く、一番の難敵を破った瞬間の心の声。「自分というより、第三者的に『ついに勝ったんだ』という信じられない感じだった」と振り返るほど、賜杯を手にするためにはどうしてしても倒さなければならない相手であり、大きな壁だった。十一日目を終えて全勝と万全だった白鵬との対戦を前に、玉鷲は過去の教訓から学んだ秘策と師匠の助言を胸に土俵に上がっていた。
「横綱は立ち合いや取組の途中で張り手がある。そこでカッとなって張り返すと、脇が甘くなって差されて負ける。これはおそらく横綱のパターン。自分もそうやってたくさん負けてきたので、前回はとにかく冷静に。加えてアツくなると身体の動きが硬くなるので、仕切りの最中から『お前、やる気あるのか?』と思わせるくらいの表情でね(笑)」
その表情を真似ながら、お茶目な様子で説明を続ける玉鷲。しかし、実際には“平成の大横綱”を前に思うように作戦を遂行することはできず、VTRで取組を振り返ると「あっ、今、一回張り返しましたね」と身振り手振りを交えながら苦笑い。「やっちゃダメ、やられるよ絶対って師匠にも念を押されていたのに……」と裏話を明かす一方、それでも「頭を低く下げ、相手の懐に入ることができた」と押し出しで白鵬を下した勝因を解説した。
また立ち合いのテンポや間合いについても「大関・豪栄道関(境川)や白鵬関はとにかくゆっくりなので、それに合わせると『まだかな、まだかな』と焦りにつながる。相撲の勝負は取組の前から始まっているので」と立ち合いの重要性についても長年の経験を踏まえて言及した。
「優勝の実感はまだ……」と話した玉鷲だが、「本場所を迎え、館内に飾られた自分の写真を見た時に確かな実感に変わるはず」と本人も三月場所の初日が待ちきれない様子。現在34歳の玉鷲。初場所の成績次第では、2019年内の史上最年長での大関昇進(現在の記録は琴光喜の31歳3カ月)も現実味を帯びてくるが、「大関になるより、長く相撲を取っていたい。三月場所に関しては、ずっと応援してくれている方々を喜ばせる相撲、裏切らない相撲を取りたい」と自然体を強調しつつ、感謝の言葉も忘れなかった。
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