気仙沼港に再び漁師のための銭湯を 被災地“移住女子”と被災者が挑む新たな復興
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 2019年3月、宮城県・気仙沼市唐桑町に移住するために大阪からやってきた岡田紗英さん。そんな彼女を迎え入れるのが根岸えまさん、27歳。

 えまさんは4年前に東京から移住。半島(ペニンシュラ)へ移住(ターン)してきた女の子たちという意味の“ペンターン女子”として活動してきた。最初は5人だったペンターン女子もこの春から11人に増え、今年の6月には移住者同士で結婚するカップルもいる。

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 後継者不足が問題の漁師のため、地元の学生に漁体験をしてもらいその魅力を伝えているえまさん。取材とあらば何でも受け、唐桑の魅力をアピール。また、移住したいという人がいれば町の人に紹介し、早く馴染めるように仲間にも紹介している。少し緊張気味の岡田さんに声をかけ、緊張を解きほぐすペンターン女子たち。

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 岡田さんが住むシェアハウスを一緒に探すえまさんたちは、下見にも抜かりがない。2階に3部屋の個室がありシェアハウスにはもってこいの海が見える一軒家。岡田さんが気に入ったのはリフォームされた綺麗なお風呂だ。「震災後ヒビが入っちゃって…」と大家の鈴木力子さん。

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 8年前、津波に襲われ102人もの命が犠牲となった唐桑町。移住者は町の人にとってはありがたい存在だ。鈴木さんは「やっぱり新しい、若い子たちが来るといろいろと教えてもらえるし、情報が入るしいいなと思う」と話した。

■“人生の大先輩”とともに銭湯復活へ

 この春、えまさんは新たなことに挑戦する。場所は、気仙沼魚市場のすぐそばにある更地。

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 「銭湯と食堂を建てる場所。気仙沼は県外から船が来て水揚げするんですけど、港の近くにお風呂とか朝ごはんを食べられる場所がないので、ここに作ろうと思って」

 今年5月下旬、銭湯と食堂をオープンさせるほか、商業施設も併設予定だという。

 気仙沼には港近くにかつて131年も続いた銭湯があった。しかし、2年前にやむなく廃業。えまさんは、漁師のために銭湯を復活させたいと考えている。

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 地元の漁師・佐々木夫一さんは銭湯について「港には銭湯はあって当たり前。ないのがおかしい。漁師の仕事は不眠不休の時がある。そういう時は風呂さ入って身体を休める。なくてはならないもの」と話す。

 命をかけて漁に出る漁師の船出。町の人たちはみんなで無事を祈り送り出す。この船「第八 豊清丸」は出航すると1年間は戻ってこない。漁師は出航前に大きなお風呂に入り、そして陸に戻ってきた時はお風呂で疲れを癒すのだ。気仙沼では出航の時、テープを船にくくり家族との別れを惜しむ。

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 「移住してきて、漁師さんが命をかけて魚を獲ってきてくれるのを身をもって感じた。漁師さんが入りたいなと思う港を作りたいし、町として漁師さんに『ありがとう』と伝えたい」

 帰ってきた漁師に新しい銭湯で疲れを癒やしてほしい――そうした思いでえまさんも船を見送った。

 3月上旬、えまさんは銭湯の下見のため気仙沼を離れ福島県へ。銭湯はトレーラーハウスという移動も可能な施設にすることに決定。8人分の洗い場に、足を伸ばしてくつろげる湯船がついている。

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 しかし、銭湯開業には乗り越えなければならない大きな壁があった。一緒に開業するのは、水産加工業を代々営む斉吉商店の斉藤和枝さんと、地元で有名なカフェを2店舗経営するオノデラコーポレーションの小野寺紀子さん。2人とも被災者だが、津波を乗り越えビジネスを展開してきたツワモノだ。

 銭湯の開業には資金が3000万円必要。1000万円は市から助成金を受け、1400万円は気仙沼の企業から集める予定だが、残りの600万円はネットを使ったクラウドファンディングで集める。

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 この日、サイトの担当者からレクチャーを受けるえまさんたち。「最初の3日間で目標120万円を目指す」との説明に、えまさんは「3日で20%(120万円)…」とプレッシャーを感じている様子。

 サイト担当者からの「(サイトを)オープンさせたから『いいね』と言って支援してくれるわけではないので、最初はご自身のご友人とか知り合いの方とかに直接支援してもらう必要がある」「フェイスブックページは『いいね』のリクエストができる。見てねというのを友達に言えるので、アカウントを作ったら『いいね』を集めるのは全員で力ずくでやって下さい」「フェイスブックである程度『いいね』が増えてきたらツイッターもやっているよって流して、相互フォローを行いながら、だんだん見ている人数を増やしていく」「投稿するのは結構大変なので、どこかのタイミングでまとめてツイートを作って、予約投稿とかやってみてください」との矢継ぎ早のアドバイスに、「やったことない…」と漏らす斉藤さんと小野寺さん。

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 果たして600万円を集められるのか。そんな不安が募るえまさんを、大先輩の2人は、「いいものだったら一人でに広がるから。それが広がらなかったら、私たちの事業がまだまだ甘いってこと。もっともっと事業を磨かないとお客さんに飽きられるし、納得してもらえないし、そんな仕事に将来ない。コツコツ誠実にやっていくというのが、私たちの体質からしてもそう。でも、今までの根岸えまの信用や我々の信用というのがあって、それを曲げてまでしてはダメだと思う」と激励。えまさんはこの言葉で「私はひとりじゃないんだ」とまた一つ成長できたという。

 また、漁師の佐々木さんもえまさんにエールを送る。「すごいことだよ。えまが今やろうとしていることは、みんなが思っているけどやれない、やらないこと。それをあえてやろうとするんだから絶対成功すると思うよ」。

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 震災から8年、移住してから4年。被災地を助けるために移住したえまさんは、今、被災者の方々に愛され助けられ、成長している。

 えまさんはこれからについて次のように話す。

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 「いろいろな出会いの中で、人生の先輩に育てられて学ぶこともたくさんあるし、周りにそういう人がたくさんいて本当勉強になる。この町の人がそうであるように、町のことをすごく考えて、でもそれも自分たちのやりたいことで、楽しく自分たちらしく無理せずやって、等身大の大人になれたらいいと思う」

 2017年の取材でえまさんにも会っている『けやきヒルズ』キャスターの柴田阿弥は「えまさんをはじめ、皆さん変わらずの前向きさと行動力。私が行ってから2年経った今でも新しいこと、特に難しいことに日々挑戦しようとしている。私は小さな失敗とか、将来こうなったらという不安で足が止まることがあるけど、ペンターン女子の皆さんを見ると前進したり挑戦したりし続ける“今”に集中することが大切なんだと、いつも勉強になる」とコメント。

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 また、えまさんの活動に臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「精神的な復興という意味で、トラウマの克服とはその対象を自分で語れるようになったり消化して受け入れられたり直視できるようになること。また、復興は被災地が元に戻ることだけではなく新しい創造が伴うものだと思うが、今えまさんがやっていることは被災地に新たなものを生み出していて、被災地出身の方も外から来た方にとっても自己実現につながる。それこそが創造であって、復興と呼べる気がする」との見方を示した。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

【動画】被災地に移住し被災者と新たな復興に挑む根岸えまさん

けやきヒルズ - けやヒルリサーチ - 宮城・気仙沼 被災地“移住女子”の挑戦「漁師のために銭湯を」 (19/03/11) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
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【銭湯の復活】気仙沼の女将たちの挑戦~漁師さんのための銭湯を復活させたい!~
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気仙沼魚市場前に、漁師さんのための銭湯を復活させます。銭湯を基に魚市場で働くひとたち、市民、観光客が交流する場をつくりたい。沖から帰ってきた漁師さんが束の間の休息を過ごせるように、気仙沼の女将たちが憩いの場を復活させます。
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