佐々木俊尚氏、乙武洋匡氏ら「原発賛成・反対だけの議論はやめよう」福島第一原発事故から8年、感情論によらない対話を
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 東日本大震災から8年。福島第一原発の廃炉作業が行われる中、大飯原発をはじめとする原発の再稼働も進んでいる。ただ、原発の使用済み燃料の保管場所の問題や、将来のエネルギーミックスの問題など、課題は山積したままだ。

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 現在の構想では、使用済み核燃料から出る"核のゴミ"をガラスで固め、地下300mより深くに埋めるというものがあるが、その場所は未定のままだ。

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 11日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した東京工業大学の澤田哲生助教(原子核工学)は「小泉元総理なども保管期間は10万年と言っているが、これは原発から出てきた使用済み燃料をそのまま地中に埋める直接処分という方法で、確かに2万年~10万年くらい面倒を見なければならない。これに対し、日本の場合は再処理をし、使えるプルトニウムやウランを取り除いてリサイクル、そこで残ったゴミだけを捨てる。これでも十分長い時間ではあるが、管理は8千年と言われている。また、もんじゅのような高速増殖炉を使い、そこに閉じ込められないカスだけにすると300年~100年に短縮できる可能性もある。青森県六ヶ所の再処理施設がまだできあがっていないが、あと数年以内には動くことを目指してやっている」と話す。

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 その上で澤田氏「出てきたゴミについて、"なんとかしなければならない"という話は出てくるが、どこに捨てるかというと、場所の選定が難しい。埋める技術はちゃんとしたものがあるが、社会的な要因が非常に大きいと思う。日本全国だいたい地下300mくらいまで掘ると強固な岩盤が出てくる。活断層や火山、鉱山資源が出てくる可能性があるところも避けて作ればいいのではないかというのが専門家の意見。原発再稼働では活断層が12万年以内に動いた可能性があるかどうかの判定を非常に厳しくやっているが、それと同じような手法が適用できる。ただ、地震の影響が及ぶ可能性や、新しく活断層が見つかる可能性もゼロではないし、専門家がちゃんと解析・シミュレーションもして、安全だということを言っているが、特に日本はどこを掘っても水が出てくるので、この影響についての議論がずっとある」と指摘した。

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 現在、再稼働している原発は9基ある。許可済みは6基、審査中は12基となっている。電力量の比率の推移を見てみると、2010年には全体の25%を占めていた原子力は事故以降少なくなっており、2014年には0%となったが、需要を賄うことができたとされている。

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 澤田氏はエネルギーミックスの問題について「"その他"には再生可能エネルギーも含まれているが、なかなか伸びておらず、原発が止まった、あるいは廃止された分はほとんど火力に行っている。ただ、火力にはコストの問題や、地球温暖化に直結する二酸化炭素の問題もある。そこで原発をもう少し動かしていこうとしている。風力と太陽光は天候に左右されてしまい、不安定で変動する電力源だ。そこをどう補うかと考えると、現実的には火力しかないし、待機状態にある火力発電所を十分に持っていかないといけないというジレンマがある。それは他国の場合も同じだし、コストと技術の面で、まだ大量の蓄電池にもすぐに実現は難しい。政府のエネルギー基本計画では2030年に再生可能エネルギーを20%以上に引き上げるという目標を出しているし、どんどん伸ばしていけばいいと思うが、そこまでには原発で補える部分が出てくるのではないかと思うし、そういうエネルギーミックスの考え方も出てくる。いろいろなデータを並べ、科学的視点でロジカルに考え対話をし、冷静な判断力を持っていくことが必要だと思う。感情論に陥らないことが重要ではないか」と説明する。

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 作家の乙武洋匡氏は「日本は地形や面積の問題から、風力・水力、太陽光について他国ほどの成功は望めないのではないかという話もあるし、地熱についても日本の売りの一つである温泉に影響が出るという話もある。そうすると、どこまで再生可能エネルギーが伸ばせるのか、そして無駄に終わってしまうかもしれない開発のための予算をどれくらいの規模で投じることができるのか。この辺の合意をどうするかだ」と指摘する。

 「どうしてもあれだけの事故を経験した国民だから、原発はなしだ、というふうに傾いていきがちだと思う。ただ、3.11から8年も経つのだから、そろそろ原発が是か否かという問いの立て方は止めようと思う。我々はこれぐらいエネルギーを使う、それをどうやって賄っていくのか、安定供給、経済性、CO2排出にともなる環境問題、そして安全面と、それぞれのメリット・デメリットを勘案しながら、どの組み合わせがベストなのかということを考えるようにすべきだ。"原発がなくなったらこういうデメリットも生じるよ。でも、使った場合にはこういうメリットもあるよ"、逆に"再生可能エネルギーには、こういうメリットとデメリットがあるよ"と、それぞれを見てトータルで考える議論に行かなければいけない」。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「テクノロジーは進化するもの」として、「再処理も含め、なぜか核問題ではこの現時点のものがベストでこれ以上は進化しないというイメージで議論されているが、現状では10万年かかったとしても、100年後には10年でできるようになっているかもしれない。そういう中でリスクをどう考え、どうバランスを取るか議論することが重要だと思う」と指摘。「太陽光に期待している人は多いが、風で吹き飛ぶなどの環境公害を引き起こしているケースもあることをご存知だろうか。再生可能エネルギーが最高だと思っているかもしれないが、必ずしもそういうわけではないし、再生可能エネルギーで原発が代替できると思っていたり、ベースロードの発想がなかったりする人も現実に多いのではないか。それぞれにどれくらいのリスクがあってどれくらいのベネフィットがあるかという、リスクとベネフィットのバランスで物事を考えるべきであって、0か100かという議論はすべきではない。原発に賛成なのか反対なのか、と最初からスタンスを決めて議論を始めようとするのは間違っている。それでは単なる口喧嘩になってしまう」と訴えた。

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 司会進行の小川彩佳アナウンサーは「専門家でも、澤田さんと小出裕章さんでは180度違うことをおっしゃっていると思うし、メリット・デメリット、そして将来的にどう変わっていくのかを踏まえた"噛み合う議論"をして、政治が最後に決断していくという段階を経ていかなければならないと感じた」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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