きのう朝、今後の対応を話し合うため弘中惇一郎弁護士の事務所を訪れたカルロス・ゴーン被告。この日、日産本社で行われる取締役会への出席を希望していたが、"証拠隠滅につながる"として東京地裁は出席を認めなかった。共同通信によると、ゴーン被告はアメリカの代理人を通じ「失望した」とする声明を発表。「根拠のない容疑」により、過去20年間にわたって仕えてきた会社のために、自分のアイデアや見方を生かすことができないのは「不幸だ」と主張したという。
午後には日産・ルノー・三菱自動車のトップが共同会見を行った。会見の中でルノーのジャンドミニク・スナール会長は「私どもは再び力を結束することを決めた。アライアンス(企業提携)の新たなスタートだ」「各社の文化を尊重し、そしてブランドを尊重するという精神だ」と語り、提携を強化し、ゴーン被告に権限が集中していた体制を改めるため3社で新組織を立ち上げるという"脱ゴーン路線"を明確にした。また、日産の西川廣人社長は会長職について「従来あった、ルノーの会長が日産の会長を務めるということを、あえて求めないという姿勢を持っていただいた」と明かしてもいる。
他方、ルノーの筆頭株主であるフランス政府がルノーと日産の経営統合をもくろんでいる状況に変わりはない。
元参議院議員で、夫が世耕弘成経済産業大臣の林久美子氏は12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』で「自動車業界は経産省の所管している業界なので、逮捕された日などは驚き、テレビを食い入るように見ていた。フランス政府がルノー株を持っているということもあって、政府をあげての関心事。日本とフランスの国際関係に影響を与えてはいけないという思いで対応にあたっている印象を受けたと明かす。
会見を取材していた経済ジャーナリストの井上久男氏は「1999年に提携した時点でルノーが日産株を36.8%持つことにしたので、資本の論理ではルノーが支配していた。これまで両社にはお互い相容れない部分があったし、ルノーが日産の会長ポストを狙っているといったことも指摘されてきたが、これからは対等な精神で、協力し合ってやっていきましょうということが強調されていた。かなり歩み寄ったなと感じた。ルノーが日産に43%出資しているが、日産はそこを下げさせたいと思っていたし、日産はルノーに15%出資しているのをもっと上げたいと思っていた。しかし、今回そういうことについては議論せず先送りするという趣旨のことも言っていた。そうした点で本音が出ていたというか、率直な記者会見だったと思う」
「"将来に向けて"ということを盛んに強調していたが、自動車産業は今、EVや自動運転、コネクテッドカーなどの次世代技術で激しい競争をしている。ゴーンさんの問題で停滞し、将来に向けて何をやっていくのかということを話し合わないままだと、他社に負けてしまうという思いも両経営者にはあったんじゃないかと思う。日産は日本を含めた全地域で、当初計画よりも販売が落ち込み、業績がどんどん悪化している。それは大きく値引きをしないと売れないような、商品力が弱い車しか出せてないからだ。ここを立て直すにはかなり時間もかかる。ゴーンさん時代には開発コストを削りすぎた面もあるので、早く本業を立て直し、先を見て進んでいこうということだと思う」。
この日、弘中惇一郎弁護士の事務所で8時間ほどを過ごしたというゴーン被告。取材に対応した弘中弁護士によると「日産がこのままで大丈夫かと心配していた」という。この発言について井上氏は「ぶっちゃけて言うと、ゴーン被告はどちらかと言うと自分の寝首を掻かないような人や、自分よりも能力の高くない人を置いてきたし、自分に意見をしてくる人だとか、"こいつは手強いぞ"と思う人は、うまく排除してきたようなところがある。西川社長の人事もゴーン氏が決めたわけだから、いわば"天に唾する"発言だ」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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