「全体が異常な取引。マネロンの還流スキームそのものではないか」元経済ヤクザ猫組長がゴーン被告のカネの流れを独自分析
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 きのう開かれた日産・ルノー・三菱自動車のトップが共同会見で、ルノーのスナールCEOは「私の人生で持っている信念というか原則がある。まずは人への尊敬の念、2つ目が事実を尊重するということ、3つ目は人を尊重し、実際に証拠が出ない限り無実だと考えているということだ」と、推定無罪の原則に基づいたコメントをした。

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 一方、元山口組系組長で経済ヤクザとして裏社会で暗躍し、マネーロンダリングなどの国際金融犯罪にも詳しい猫組長は、一連の事件について報道されているものとは少し異なる独自の見解を持っている。12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、猫組長にその"見立て"を解説してもらった。

 まず、報道をベースにお金の流れを時系列で振り返ってみる。

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 (1)2008年、ゴーン被告がリーマンショックで約18億5千万円の損失を抱える。

 (2)この損失を受け、ゴーン被告の資産管理会社に対し、契約していた新生銀行が追加担保を要求。

 (3)損失が一時的に日産に付け替えられる。ただ、新生銀行が取締役会での承認が必要だと指摘したため、日産が議事録を作成、取締役会で承認する。

 (4)ところが、この付け替えについて証券取引等監視委員会が違法性を指摘。

 (5)これを受け、新生銀行が損失を再びゴーン被告に戻すとともに、新たな追加の担保を要求

 (6)ここでゴーン被告がサウジアラビア人の知人、ハリド・ジュファリ氏を頼り、同氏が保証人として約30億円の信用状を担保として新生銀行に差し入れる。

 (7)ゴーン被告がお礼として、自ら使うことのできる「CEO予備費」から「販売促進費」の名目で中東日産を通じジュファリ氏に12億5千万円を支払った。

 現在ゴーン被告が特別背任の罪に問われているのは、この流れの中で発生した、私的損失である18億5千万円の日産への付け替え、そしてジュファリ氏への12億5千万円の不正支出だ。

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 猫組長は、まず(1)について、「ゴーン被告の弁護士は、ドル建てで給与をもらうことのリスクヘッジとしてこの契約をしたと言うが、ゴーン被告の年収はせいぜい10億とか20億。そこから考えると、損失は1億、2億程度のはずだ。ポジション的に何百億という単位の取引でなければ、18億5千万円も損失は出ないはず。これは投機だ。スワップだと言われているが、僕はオプションだったんじゃないかなと思っている。これが弁護士の主張で矛盾している点だ。デリバティブで18億5千万も損失を出すなんて経営者として失敗。普通だったら途中で損失を確定させてロスカットするはずだ」と話す。

 次に(2)については「全額を一部銀行が保証金で立て替える証拠金取引なので、保証金の額が足りなくなりマージンコール(追い証)が発生している状態だ。普通はロスカットといって、ここで強制決済するのがルールだ。それについて相談をしたということは、新生銀行とゴーン被告との間で、何か個別な話があったということ。これを許せばデリバティブの取引のルール、市場を歪めたことになる。この時点で両者はおかしな関係だったと考えられる」。

 そして(3)。「ゴーン被告と新生銀行が話し合いをして、追加担保を日産に付け替え、背負わせようということになった。当然、違法なことだと分かっている新生銀行としては、"ありえないけど、一応話し合いをして、とりあえず取締役会で承認をとってくれ"と言った。そして実際、日産では取締役会を開いた。しかし、この時点で日産の取締役会が18億5千万円の損失があるポジションを認めるということは、その損失を引き受けることになるので、賛成してはいけない。つまり、これにサインして承認した日産の人は全員が共犯、特別背任にあたる。弁護士は"この時点で損失は確定していないから犯罪じゃない"と言うが、損失が確定していないということは、それが拡大する可能性もあったということ。それを予測し、承認すべきではなかったのに、無理やり決議で承認された。そして新生銀行がポジションの付け替えをしたわけだが、これもありえない。マージンコールのかかったものを個人から会社へ移すなどということが許されたら、市場は混乱する。この時点で新生銀行、日産、ゴーン被告、全員が共犯だ」。

 ここまでが平成20年の10月までに起こったことだ。そして翌年1月、(4)証券取引委員会から違法性を指摘された新生銀行が、(5)損失を再びゴーン被告個人に戻すとともに、追加担保を要求する。ここで登場するのが、(6)ジュファリ氏だ。

 「日産は信用力があるし、18億5千万円を飛ばすことはないだろうという当たり前の常識が働いて、追加担保なしで了承されていた。だからこれは日産の信用を私的に使った背任行為だ。個人(ゴーン被告)に戻すにあたっては、やっぱり追加担保が必要となった。そこでゴーン被告はどうするかとなって、ここにジュファリ氏が出てくる。ジュファリ氏が追加担保の金額をゴーン被告に送って貸せばいいし、普通であればジュファリさんが新生銀行に定期預金をして、それを担保として預ければいい。それも面倒くさいんだったら、ジュファリさんがサウジアラビアに持っている預金を、SWIFTという銀行間の送金のシステムをつかって資金証明し、担保にしてもらえばいい。しかし、それを無視してジュファリさんは信用状、いわゆるスタンドバイL/Cを発行して新生銀行へ送った。信用状というのは、わかりやすく言えば家賃における保証会社みたいなもの、あるいは証券にしたようなものだ。最終的な支払いは面倒を見るが、あくまでも使った人たちが責任を取りましょうというもの。この時点でジュファリ氏は、日産がまさか債務不履行を起こすことはないとわかっているから安心だし、焦げ付いたとしても支払い義務が日産とゴーンさんになるから自分は痛まない。ただ、新生銀行は三菱東京UFJや三井住友銀行といったメガバンクと異なる小さな銀行だ。スタンドバイL/Cを使うわけがないし、まして金融取引で使うのは異常だ。僕はスタンドバイL/Cを日本の銀行に何十回も持ち込んだけれど、日本では商習慣が違うからと、扱ってくれるところはなかった。それでも新生銀行は引き受けて、それを担保にした」。

 そして最後の(7)に至る。「30億円分の信用状を出したとして、それにいくら掛かるのかというコストの話をすると、額面の7.5%にくわえ、ブローカーの仲介手数料2%を取られても10%以下。これが国際的なルール。つまり3億円あれば信用状を発行できる。これに対して16億円ものお金を日産に払わせたということになるので、これも背任だ。ルールがあって定価があるものにそれ以上に何倍も払うことは異常だ」。

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 さらに猫組長は「ここからは推測で、私見で言う」とした上で、「今、大きいお金の送金というのは厳しくなっていて、3千万を超えたら日本からサウジなんかに送れない。証拠となるあらゆるものを用意して、クリアしてやっと銀行が受け付けてくれて、そこから送金してもなかなか届かないのが現状。ところが一旦信用状で30億円分入れると、その契約書があるので、この枠の中で送ったり受け取ったりがしやすくなる。つまりそれを受け取った日産、ゴーン氏の方からはジュファリ氏へ、何らかの理由をつけて30億円分が送れる。だからこれは日産のお金を還流させるためのスキームなのではないか。僕は報道が出た時に、すぐにマネロンの還流スキームそのものだと思った。今、世界の趨勢でアンチマネーロンダリング、アンチテロ資金ということで、世界中の銀行が厳しくなっていて、資金移動も難しくなっている。マネーロンダリングの90%は資金移動なので、移動に成功すればマネーロンダリングは成功だ」との見方を示した。

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 また、新生銀行の思惑については「メリットないので、引きずられちゃった感じだと思う。最初の追加担保を請求する前に強制決済をして、"ゴーンさん、すみません。これ以上はできません"と断ればよかった。ところが受けてしまったので、後はもうズルズル引きずられていったのだろう。マネーロンダリングの仕組みになっていることも途中でわかっただろうし、"とんでもない。そんなものは受け取れない。うちの銀行では無理だ"となるはずが、一緒になって手を汚してしまった以上、言えなかったのではないか。現時点では新生銀行のコメントも出ないし、捜査状況もわからないが、そこが異常だし、大事な部分だと思う」と指摘した。

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 20年以上にわたって自動車業界を取材し、ゴーン被告へもインタビュー経験のある経済ジャーナリストの井上久男氏は猫組長の分析について「ヴァージン諸島という租税回避地の口座に送金しろというようなメールが捕捉されたりしている。そういった意味でもお金の流れがおかしいかなという部分はある。猫組長の分析は、世界のお金の動きからゴーン事件を論じていて、"鋭いな"と思っていた。私は国際金融のプロではないが、投機だったと思う。円安のときには非常に儲かる商品だったのが、円高になって追加担保を入れないといけないような状況になった。ゴーン被告はその担保として日産の株を入れていた。ところがリーマンショックで日産の株も大きく落ち込み、担保としての価値がなくなったためにこういうことをやらないといけなくなったのだろう。円高のときに損しそうになったら会社に付け替えようという行為自体が信じられない。投機的な商品の失敗を会社に付け替えようとしただけで、私は特別背任になるのではないかなと思う」

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 きのう夕方、弘中惇一郎弁護士は記者団の取材に応じ、日産がこのままで大丈夫か心配していた。日産を支えていくにはそれなりのリーダーシップが必要なので、その点が心配だと言っていた」とゴーン被告の胸中を語った。一方、「記者会見をするということについて彼はOKだが、きちんと自分の方でどんなことを言うか決めてから出たいということだから少し時間をくれ、ということだった」、無罪を勝ち取るための秘訣については「秘策は言わないところが秘策たるゆえんなので、ちょっと言えない」と話している。

 今後の会見や捜査によって、真相は明かされるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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