ワイプ被りに誤訳…「新元号」会見で注目を浴びた“手話通訳”の奥深さ 「方言、若者言葉、敬語、下ネタ」まで幅広く
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 1日に菅官房長官が行った新元号発表会見。その中継では菅官房長官が掲げた新元号「令和」の額に手話通訳のワイプ画面が被さったり、令和を「めいわ」と誤訳したりしたことが話題となり、手話通訳士の仕事が改めて注目を集めた。

 政府の会見に手話通訳士を伴うようになったきっかけは、2011年3月に発生した東日本大震災。発生の2日後から政府の会見に同伴するようになった手話通訳士は、聴覚障がい者に対して緊急情報を余すことなく伝えるなど活躍した。連日のように会見が行われた当時は、いつ何時、会見が行われてもいいように、手話通訳士はスーツ姿で宿泊、スタンバイしていたという。

 新元号発表会見を見ていた聴覚に障がいを持つある男性は「感動しています。30年前の聴覚障がい者は何の情報もなく、ただただ『平成』の字を見るしかなかった。この30年で国民の一大事にインパクトを残せる位置に手話通訳がいる。これはすごい進歩です」と感慨深そうに自身のツイッターで呟いている。

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 7日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』では、行政や企業の手話通訳として活動する傍ら、手話と舞台を合わせた手話パフォーマーとしても活躍する手話通訳士の南瑠霞(るるか)さんに手話通訳士、さらに手話通訳業界について話を聞いた。

 手話通訳士になるためには、読み取りや聞き取りの手話通訳実技に加え、国語や聴覚に障がいを持つ方々に関する法律などのペーパーテストがある。それらの試験に合格した人が手話通訳士となる。資格試験の合格率は多い時で25%ほどだったが、近年では10%前後。資格を持った人は、全国におよそ3600人いるというが、東京や大阪などの都市部には多く、地方には少ないという課題もある。青森県出身のろう者である“ことぷきさん”はによると、青森では前もって確認していかないと、通訳をしてもらえない場合もあるらしい。

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手話にも様々な表現は存在する「マジメだけが手話じゃない」

 会話を聞いて理解し、即座に置き換えて手を常に動かす。そんな手話通訳士の仕事は意外にも重労働であることを、南さんは自身の経験を踏まえて「昔は一人で地域のろう者の方に毎日手話通訳をして回っていたので、病気で倒れることもあった。その病気は頸肩腕障害といって首、肩、手が痛くなる病気と言われていたが、今では防がなければいけないというのが共通の理解になっている」と明かした。

 さらにテレビ中継の中で、新元号「令和」の額に手話通訳のワイプ画面が被さったことについて南さんは「あれが起きたのは、きちんと手話通訳を入れるというテレビの姿勢があってのこと。30年前の平成の発表の時はもちろんなかったし、ろう者はどんな読み方をするのか分からないまま漢字を見つめていた。その時代を考えれば、手話通訳がつくこと自体時代が進んだ証拠」と話しちょっとしたハプニングすら前向きにとらえた。

 手話通訳士が新元号を「れいわ」ではなく「めいわ」と表現した間違いについて「音が同じだったり近かったりすると間違いは起こる。公園と講演、さらに公演なども間違いは起こりやすい」と話すと、ろう者のことぷきさんは「文の流れを汲んでイメージしながら理解していく必要がある」とろう者の立場を説明した。

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 普段、我々が使用している言葉の中には、若者言葉や方言、敬語など様々な種類が存在している。そのことについて聞くと、ことぷきさんは「青森と東京の手話は異なる」と前置きすると、「高校」という言葉について、青森では顎の位置で手をぐるぐる回すのに対して、東京では二本指を目の前で横にすると具体的な例を用いて説明すると、南さんは「通訳者同士でも『今の何?』となることはよくある」と笑顔で話した。すると同じくろう者の中嶋元美さんは、若者手話で「ヤバイ」や「インスタ映え」などを実演してみせた。若者に限ったことではないが、俗にいう「下ネタ」表現の有無についてはどうか。いくつかの下ネタを実演したことぷきさんの横で、中嶋さんは笑みを浮かべていた。

 そんな楽しそうな二人の姿を見て横でほほ笑んでいた南さんは「マジメな手話だけが手話じゃない。遊びの現場での手話をたくさん育てたい。それが本当の手話であり、聞こえない人の姿なんじゃないかな」と思いを語っていた。

 一連の問題について漫画家の江川達也氏(58)は「言葉は生き物だからどんどん発達していく。一方、既定の言葉は公式だから固定されて死んでいく。20、30年前も実際に使われている手話と公式な手話は既にズレていた。今後も生きた言葉が発達して言葉を変えていくというのは、手話に限らず僕らの言語も同じだ」と話した。

(C)AbemaTV


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