12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』で、ゲストのNewsPicks CCOの佐々木紀彦氏に対し、出演者から厳しい指摘が相次ぐ一幕が見られた。
この日のテーマは「AbemaTVの未来」。AbemaNewsチャンネルの課題について議論をする中、司会進行の平石直之アナウンサーが、「テレビ朝日のニュースも他のプラットフォームに載せてもらって、見てもらっているが、今、どこの記事を読んでいるんだろうと思うことがある。NewsPicksの場合、オリジナルのコンテンツは実際どのくらいなのか?」と質問。これに対し、佐々木氏が「我々に限らず、Yahoo!ニュースもLINE NEWSも、色々なところから記事を配信してもらっているという構図だ。プラットフォームとしての責任をどう果たすかというところや、生態系をどれだけうまく作るかというところが大事だと思う。コンテンツを作っているところがちゃんと経営できるだけの生態系ができていないという点については、我々の責任も含めてしっかり考えていかなきゃならない」と回答した。
すると元経産官僚の宇佐美典也氏が「僕はネット界で"NewsPicks嫌い"で有名だ。嫌いなメディアナンバーワンだ」と口火を切り、「ウツワ」代表のハヤカワ五味氏も「私もそうで、バトった」と厳しい口調で批判を始めた。(文中敬称略。)
宇佐美:僕はNewsPicksがどういうモデルか人に説明するとき、"デパ地下"で例える。試供品を食べもらって、店にあるものを買ってくださいねと。そういうことを狙って、記事の冒頭部分は見せていいですよということにしているが、NewsPicksは試供品をたくさん集めて品評会をしているようなもので、記事を提供したメディアには全然人が来ない。僕はいくつかのメディアの運営に関わっているが、NewsPicksからのアクセス数は同様のサービスからのアクセス数の5分の1~7分の1くらい。なぜかというと文章を書いた人やクリエイターに対する敬意がなく、一緒に成長していこうという気がないからだ。ただ乗りをされ、試供品の品評会を楽しんでいるから本当に嫌だ。そういう人はたくさんいると思う。
5年くらい前、NewsPicksが主催している会で「ブロガー界隈からものすごく評判が悪いので、大事にしてくれ」と言ったが、やはり全く見返りがない。NewsPicksは記事を提供している人たちとどういう風に成長していこうと考えているのか。それを知りたい。
ハヤカワ:私がNewsPicksと揉めたのは、言ってもいないことをタイトルにされたから。新聞的なスタンスなので、チェックはなしだという話だったが、新聞だったら基本的な事実確認があるはず。ジャーナリズムとしても間違っているし、エンタメとしてもマナーがなっていない。どっちのスタンスなのか。
氏家夏彦(元TBSメディア総研社長):私はNewsPicksのプロピッカーをやらせてもらっている。2人の話は、記事のクリエイター側から見たNewsPicks像の話。一方でユーザーから見たNewsPicks像というのもあって、それはまた違う姿に見える。記事の読み方みたいなのが見えてくるのがNewsPicksのいいところ。例えばストレートニュースをどう受け止めて、解釈したらいいか分からないものが結構ある。それに対して詳しい人が「それってこういう意味ですよね」「実はこう書いてあるけど裏はこうなんですよ」とコメントをつけてくれる。僕はメディア担当のプロピッカーとして、メディア系の記事には自分なりのコメントを書くようにしている。僕自身、書いていて勉強になるし、コメントを見ていてもすごく勉強になる。行き過ぎたコメントも中にはあるが、そういうのはどんどん表示させないようにしていけば、かなり質は良くなる。
宇佐美:それが試供品で品評会をしているということだ。
氏家:クリエイターに対してリターンがないのは僕も問題だと思う。
ハヤカワ:NewsPicksのコメントをどう見るかという話もあると思っている。コメントにも正誤があり、そこを含めて読んでねというスタンスだと思っている。ただ、そこに対する責任がないのではという意味で懐疑的。
乙武洋匡(作家):最近はいろんな出され方をしていますけど、元々の商売の立て付けとしては、ニュースという素材に対して、それなりの識者や、識者ではなくても独特の視点を持っていて人気を博す方が「この人たちはこんなふうにみている」というの読めるのが魅力だった。僕の周りにはNewsPicksのアンチが多いが、僕自身はそんなにアンチではないが、どちらかと言えばYahoo!ニュースの方が大嫌いだ。全く責任を持たない人間たちが、クソみたいなコメントをただ垂れ流す。最低だと思う。でも、そういう方が好きだという人もいるし、いろいろなものが用意されていることが良いとは考えている。
佐々木:記者など、物を書く人たちは今まで批判されることがなかったと思う。私も東洋経済という古い出版社の出身だが、記事を書いて何か批判をされたことはほとんどなかった。でも、NewsPicksに来てからはぼろくそに言われることが多かった。間違った批判もあったが、経済の場合は現場で実際にビジネスをやっている人の方が詳しいケースが非常に多く、そういう人たちからの意見から学ぶことはすごくあった。意見が出てくることに価値があると考えている。正しい意見もあれば、いい意見とも限らないが、記事を書いた人たちが傷ついたり、名誉棄損されたと思うのは分かる。ただ、そこをひとつひとつチェックしていくのもどうかなというところがある。明らかな間違いは正すべきだが、いろんな意見がある。そこをある程度自由にしているというのが、我々の思想だ。しかし、それは色々と考えるべきところでもあり、ご意見もあるのだろうなと思う。
土屋敏男(元日本テレビプロデューサー):ニュースとはいったい何だろうと思う。昔はテレビや新聞をパッと見て、「今こういうことが起きているのか」と分かったし、Yahoo!ニュースを見ても、「今、世の中はこうなっているのね」ということが分かる。僕はNHKのニュースを全て録画していて、早回しで見ている。でも、自分に興味のあるニュースばかり見るようになると、「別にそんなこと知らなくていいよ」という人たちが増えてくる。かといって、全部が同じようなニュースをやるのが本当にニュースなのか、ジャーナリズムとはいったい何なのかと思う。NewsPicksを庇うわけではないが、アラートもくれて、なるほどなという部分ではすごくいいキュレーションをされている気がするので好きだ。
宇佐美:NewsPicksはどういうふうに世の中を変えたいとか、どういうメディアにしたいとか、基本的なコンセプトはどういうふうに考えているのか。
佐々木:我々は経済メディアなので、日本の経済の構造を変えていきたいというのはすごくある。色々な意味で日本の経済は古い。そこを新しく変えていこうと挑戦している人を応援したり、そのために参考になるような情報を持ってくる。「ジャーナリズム」というとよく「権力の監視」と言われるし、そういうものももちろん大事な役割として残ると思うが、それ以上に、社会をエンパワーメントするとか、個人に大事な情報を流すとか、そういった面が経済メディアにとって大事だと思っている。
宇佐美:NewsPicksに関しては、ブランディングに寄りすぎて、新しいか古いかで物事を分けすぎるので、そこは正しいとかそういう方向にシフトしてほしいなと思う。
佐々木氏は「この番組はNewsPicksの未来を語るんでしたっけ?」と苦笑しながらも、質問に丁寧に回答。番組終了後は、宇佐美氏、ハヤカワ氏との記念撮影にも応じていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)