持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の予選Aブロック、菅井竜也七段(27)と大橋貴洸四段(26)の三番勝負が5月5日に放送され、菅井七段が2勝1敗で本戦出場がかかる二位決定戦へと進出した。持ち時間が長い対局でも早見え・早指しが特徴的な菅井七段と、早指し戦で好成績を収める大橋四段の戦いはフルセットの激闘。ぎりぎりのところでタイトル経験もある菅井七段が勝った。
対局時間約20分の超早指し棋戦は、息を止めて水に潜り続けるような集中力勝負だ。第1局、102手で敗れた菅井七段は「対局開始直後から、なんか緊張感のない時間がちょっと自分としては続いてしまった」と反省した。気持ちを切り替えるために離席する時間もないルールだけに、対局への入り方が重要と改めて知り、気持ちを入れ直した。
後がなくなった状況で迎えた第2局では、形勢不明な状況から研ぎ澄ました集中力を発揮、「最後は自分の第一感というか、感覚だけで指した」ことが、勝利へとつながった。不利とされる後手番で、152手での勝利。解説を務めていた藤森哲也五段(31)も、終局直後には「最後、何を見たのか。幻を見たのか」と、瞬時に決まった勝負に目を丸くした。
フルセットにもつれ込んだ戦いは相振り飛車に。ここでも菅井七段の積極性が生きた。持ち時間が極めて短いルールの中で、しっかりと玉の守りを固めつつ、想定外に早い段階から攻撃開始。迫力のある攻めを繰り返し、粘る大橋四段を168手の大激闘の末に下した。これにはさすがに「疲れました」と苦笑い。「でも本当に熱戦で、最後はついていたかな」と微笑んだ。
1回戦で近藤誠也六段(22)に敗れ、二位決定トーナメントの1回戦で大橋四段に勝利。二位決定戦では佐々木勇気七段(24)と、Aブロックの全棋士と対戦することになった。「佐々木さんは本当によく手が見える方ですから、それについてけるように頑張りたいと思います」。究極の早指し戦をこなす度に、その魅力を楽しんでいるように見える菅井七段が、本戦出場へ予選最後の戦いに臨む。
敗れた大橋四段のコメント これで敗退になってしまったのは、すごく残念だなというところですね。将棋の内容としては力を出せたのかなという感じですかね。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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