28日、川崎市多摩区のJR登戸駅の近くで小学生の児童ら19人が刺された事件で、小学6年生の栗林華子さん(11)と外務省職員の小山智史さん(39)が死亡。身柄を確保された岩崎隆一容疑者(51)も自身の首を刺し、搬送先の病院で死亡が確認された。
わずか十数秒で起こった凄惨な事件。慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「こういう事件を見て感じることは、絶望感というか無力感というか、自分の存在価値を全く見出せなくなってしまった人の犯行なのかなと。僕らが生きている社会は、犯した罪によって得られること以上に科される罰が大きいことが抑止力になっていて、大きな罪を犯したら死刑になりうるということが最後にある。今回も死刑になるだろう犯行だったと思うが、容疑者は自分で死ぬことを最初から覚悟していた。僕らは人の命を大切にしなさいと教えられてきたが、自分の命の価値が全く感じられなくなった人にとってみれば、犯行を止めるストッパーがない。いくら見守りを強化したり柵を作ったり、監視カメラを置いたとしても止めようがない」と、事件に対する率直な印象を話す。
岩崎容疑者は、両親の離婚により40年近く前に親族夫婦に引き取られ、犯行当時は川崎市麻生区の一軒家に高齢の伯父と伯母と3人で暮らしていた。そうした境遇について若新氏は「こういうことをしたら『親に迷惑かな』『兄弟が悲しむな』といった感情もすごく小さくなっていたのではないか。自分がこの世に生きていることの価値を、仕事や人間関係で嫌なことがあっても僕らはどこかに少しは見出だせていると思う。それを完全に失ってしまって、自分が存在している理由・意味を感じられなくなった時に積年の憎しみや不満が噴出してしまったら、その人を止めるものが何もない」と持論を述べる。
一方で、被害に遭った生徒が通うカリタス小学校ではスクールバスを導入し、電車の改札からバス停までは職員が引率、バス停やバス内に職員を配置するなど、防犯対策に力を入れていた。
そうした対策の中でも起こってしまった事件には「40~50ある危険を5~10に減らすというのは、日本の社会は十分やってきたと思う。今回はどうしても最後に0.1残ってしまうような問題で、これを取り除こうとすると外出しない方がいい、全身金属のスーツを着るというような話になる」と指摘。物理的な対策では防げない問題だとし、「ご飯を食べるとか雨をしのいで暮らすというのは、お金を支給するなり生活保護などで対策できる。今回の容疑者も食べることや暮らすことには困っていなかったようだ。どんな境遇の人でも社会的に存在していい、自分の命の価値を感じることができる、ということをどう作って保障していくかがテーマだと思う」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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